テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ボスに呼び出されると、
開口一番こう言われる。
外国マフィアの幹部を一般人ごと事故のフリをして
殺す。
「……は?」
ありえない。俺達みたいな荒くれ者は一般人には手を出さないというのが暗黙の了解だった。それを、いとも簡単に”巻き込む”と。そう言った。もちろん反対はしたが、権利には逆らえない。実行日は
11月3日。
運転手を乗っ取り、下っ端を乗せて下っ端も一緒に犠牲にする。
という段取りだった。その下っ端が俺。
名前は赤月仁。年齢は49歳。
強面だと思う。
趣味は無い。妻にも捨てられた。
息子以外の家族は既に他界していて、
俺が死んで悲しむ人も いない。古株だったはずだが、用済みなのだろう。
事件当日。俺はトラックを乗っ取り、
交差点へ向かう。
死ぬのか…怖いな…嫌だな…
ポイントが近ずくと
タイミングを見計らった。
3時42分56秒に衝突。俺は死んだ。
はずだった。
「ハハッ…ビビっちまったな…」
生きた。
ぶつかる直前にハンドルを切った。
その為、ターゲットの命を奪えなかった。
それでもいいんだ。…いいんだ。
どうしようもない怒りが襲う。
救急車の音が近ずく。
そのうち瞼が重くなってくると、
俺は暗闇に身を任せて
微かな意識を手放した。
結果、5人が死亡。2人は俺達が殺した。
そして、ターゲットと俺が生き残る。
全く。最悪な状況だな。
ベットの近くのテレビでニュース速報を覗いた。
死者3名、重傷者2名…か。
病棟の隣で痛そうな声をあげていたターゲットを ちらりと横目で見ると、海外特有の青い瞳に金髪。
そして整った顔つき。目が合うとすぐに逸らして、俺に背を向けてうずくまってしまった。
「なんで助けたの。
貴方が殺されてしまう。」
涙声で呟いた。どうして、なんで、なぜ。
「どっちみち殺されていたさ。
俺は用済みだ。」
なんで敵の心配をしているのだろう。
もしかして
死にたかったのだろうか。
それなら悪い事をした。
「一緒に逃げない?私と貴方はどうせ余命1年。
だから…」
唇に力が入っているのが分かる。
なぜ俺となんだ?
お前を殺そうとした男なのに。
「貴方に一目惚れしてしまったから。」
…声に出てしまっていたのだろうか、
俺の心の疑問にそう答えた。
何も言えなかった。
俺に発言する権利はないと思った。
医者が入って来ると、
世界中の阿呆を濃縮したような顔で言う。
「残り余命1年です。」
その後に、私達も全力を尽くしますが…と、長い話が始まる。退屈していると、
叫びに近いような声で
「どうせ死ぬなら自由にさせて下さい!」
日本語が流暢だな。
そんな呑気な事を考えていた。
医者はその命令に従って、
最低限の処置をすると 退院させてくれた。
そこから彼女と色々な所を巡る。
海、滝、展望台、互いの実家、温泉、カフェ、 バー、ゲーセン、神社、寺、桜の名所、海外、 イルミネーション、城、ホテル、水族館、動物園、 デパート、お土産屋さん、ドーナツ屋、美容院、 玩具店、公園、駅、ネットカフェ、噴水、森
一日一日が濃密な思い出で
埋め尽くされていく。
その横顔が眩しかった。
俺がいなければ、普通の人間として
暮らして行けた道もあったのではないか。
そう思った。
でも
彼女は死ぬ2日前に
俺が大好きな満面の笑みで言うのだ。
「結婚してください。」