テラーノベル
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翌朝、凛は自分のベッドの上で目を覚ました。
狭いシングルベッドの隣では、颯介が穏やかな寝息を立てている。
昨夜、初めて凛の部屋を訪れた颯介は、物珍しそうに室内を眺めていたが、すぐに馴染んでしまった。
まるで、以前から何度も訪れているかのように、自然にくつろいでいた。
夜は、酒を片手に深夜まで尽きないおしゃべりを楽しんだ。
颯介は凛の学生時代のアルバムをめくりながら、次々と質問を投げかけてくる。それはまるで、凛のすべてを知ろうとしているかのようだった。
自分の過去に興味を持ってくれることが嬉しくて、凛は聞かれたことにはなんでも答えた。
その中で、小さい頃に空手を習っていたと話すと、
「お、奇遇だな。俺もやってたよ。高校までだけどね」
颯介がそう言ったので、凛は思わず目を丸くした。
世代は違っても、共通点がいくつも見つかると嬉しくなる。
話せば話すほど、互いの心の距離が縮まり、同じ未来を思い描く気持ちが強まっていくのを、二人はともに感じていた。
その後、二人はどちらからともなく抱き合い、また燃え上がるような時間を過ごした。
狭いベッドの上で、この前のように熱く絡み合う。
あまりの狭さに、颯介が壁にごつんと体をぶつけることもあり、そのたびに凛は声を出して笑った。
そんな楽しい出来事も、すべて良い思い出になるだろう。
深く愛し合ったあと、二人は体を寄せ合い同時に眠りについた。
凛が眠りに落ちるまでの間、颯介は耳元でそっと囁いた。
「凛……愛してる。君に出会って、世界が変わったような気がするよ」
「私もよ」
凛が答えると、颯介は彼女をぎゅっと抱きしめ、静かに続けた。
「これから先、いろいろな困難が待ち受けているかもしれない。でも、俺はいつだって君の味方だし、全力で守るよ。だから、俺とずっと一緒にいてくれる?」
まっすぐに向けられたその眼差しに、凛の胸がじんと熱くなる。
どんなプロポーズよりも心に響く言葉だと思い、凛は小さくうなずいた。
颯介は安心したようにもう一度ぎゅっと凛を抱きしめると、静かに眠りに落ちていった。
昨夜の出来事を思い返していた凛は、つい頬がゆるんでしまう。
颯介を起こさないようにそっとベッドを抜け出し、身支度を整えると、朝食の準備を始める。
(カフェ風にしようかな……)
そう考えながら、凛はフレンチトーストとベーコンエッグを作り始めた。
バターとシュガーの甘い香りが部屋に漂い始めた頃、ようやく颯介が目を覚ました。
まぶたを開けると、キッチンでエプロン姿の凛が朝食を作っているのが目に入った。
その穏やかな光景に、颯介の頬は自然とゆるんだ。
ここ最近、どんな瞬間にも凛の姿が思い浮かぶ。
気づけば、彼女の存在が愛おしくて仕方がない。
かつては、一人の女性と深く向き合うことなど自分にはできないと思っていた。
けれど凛と出会ってから、その思い込みは静かにほどけていった。
自分も普通の男と同じように、誰かを大切にし、誰かと未来を望むことができる……そう気づかせてくれたのが凛だった。
そして今では、一日も早く彼女と家庭を築きたいと願っている自分に、颯介は驚きを隠せなかった。
颯介がベッドの上で身を起こすと、キッチンにいた凛が気づいて声をかけた。
「おはよう。ベッド狭くて寝にくかったでしょう?」
「おはよう。そんなことないよ。凛とくっついて眠れて幸せだった」
「ふふっ、それならよかった」
凛の笑顔に微笑み返しながら、颯介は身支度を始める。
その姿を見た凛は、たくましい上半身に思わず胸が高鳴った。
何度見ても慣れない光景で、慌てて視線をそらし、料理に集中する。
フレンチトーストの甘い匂いに誘われて、身支度を終えた颯介がキッチンに入ってきた。
そして、そっと凛を後ろから抱きしめる。
「ん-っ、いい匂いだ。美味しそう」
「もうすぐできるから、顔を洗ってきて」
「了解」
凛の頬に軽くキスを落とすと、颯介は洗面所へ向かった。
朝食が出来上がると、二人は小さなテーブルをはさんで向かい合って座った。
「うん、美味い。カフェにいるみたいだ」
凛が作ったワンプレートモーニングには、生野菜やトマトも添えられ、彩り豊かで食欲をそそる仕上がりになっていた。
器や盛り付けにもこだわる凛の料理は、本当にカフェのモーニングのようだった。
「盛り付けは、昔行ったカフェのを真似たの。お店に行くと、つい器や盛り付けに目がいっちゃって……」
「じゃあ、しゃれた美味い店にいっぱい連れて行かないとな」
「わ、やった!」
朝日を浴びて喜ぶ凛の姿が、颯介にはやけにまぶしく見えた。
こういう穏やかな時間こそ、結婚というものなのかもしれない……そんな思いが胸に浮かんだ。
一方で凛は、自分の作った朝食を美味しそうに頬張る颯介を見て、思わず全身の力が抜けそうになった。
(ああ……大人の色気だだ漏れの寝起きのイケオジ最高!)
幸福感に満たされながら、凛は微笑んでコーヒーを口に運んだ。
朝食の間じゅう、二人の会話は途切れることなく続き、最後にもう一杯コーヒーを飲んでから二人は朝食を終えた。
「今日、午後の打ち合わせがなかったらデートできたんだけどな……」
「仕事なら仕方ないわよ」
凛はそう返事をして、颯介を玄関まで見送った。
部屋を出る前、颯介はもう一度凛に唇を重ねる。
名残惜しさが伝わる、少し長めのキスだった。
「じゃあね」
「気を付けて」
颯介の背中を、凛は笑顔で手を振りながら見送った。
扉が閉まった瞬間、急に家の中ががらんと静まり返ったように感じる。
(なんだろう……うちって、こんなに静かだったっけ?)
たった一晩好きな人と一緒に過ごしただけで、こんなにも違うのかと凛は驚いた。
それだけ颯介の存在が大きいということを、身をもって知る。
つまりそれは、颯介が凛にとってこの上なく大切な存在になっているという証だった。
その感覚に少し戸惑いながらも、幸せの余韻をかみしめつつ、凛は後片付けのためにキッチンへ向かった。
コメント
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瑠璃マリコさん流石です! お互い一目惚れだった経緯とか颯介さんのプロポー凛さんの実家への挨拶など私が望んでいた以上のストリーなのでこれからの展開を楽しみにしています!
甘々な颯介さんと凛ちゃん(*ฅ́˘ฅ̀*)♡ もうこのまま一緒に住んじゃえ😁✨ このままトントン拍子に進みますよーに(*´ ˘ `*)
もう2人の世界ができていますね✨✨ 早く一緒に生活できるといいな〜😍