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「昨日のスープの件、美和さんを問い詰めたんだって?仕事なんだから、きちんとやれって。彼女、泣いてたぞ」


あぁ。やっぱり。


「問い詰めてはない。あなたは私より、《《美和さんの言ったこと》》を信じるの?」


「はぁ?何言ってんだ、お前」


今にも手を出しそうな雰囲気。落ち着け、私。


孝介のバッグを拾い、《《リビングへ》》向かう。


「私は、美和さんを問い詰めたりしてない。彼女を怒ってもいない。ただ、味見はしましたか?って聞いただけよ」


孝介はハッと笑い

「そんなこと言える立場か。お前の料理なんて、クソ不味くて食べれないくせに。自分でもわかるだろ?」


「私は自分の料理が不味いだなんて思っていない。この間だって加賀宮社長に褒めていただいたわ。私の料理が不味くて食べられないなら、カフェメニューの監修なんてできるわけないじゃない?料理が不味い人間に、監修なんて依頼する?」


迅くん、ごめん。名前を使わせてもらっちゃった。

心の中で謝りながらも、孝介の発言に反論することを選択した。


「あぁ!?何度言わせるんだよ。あれは、加賀宮さんが九条グループと関りを持ちたくて、依頼してきたんだ。何をいつまでも勘違いしてるんだよ!」


孝介が数歩私に近づいたと思った瞬間

<バチンッ>

鈍い痛みが頬に走る。

一発殴られた。

痛い、けれど泣いちゃいけない。


「じゃあ、質問を変えるわ。妻である私と、家政婦の美和さん、どっちのことを信じるの?私は、美和さんを責めたりなんかしていない。逆に<孝介さんに愛されてもいない>なんてことを言われたわ。失礼な話じゃない?」


「はっ?お前、今日、本当に頭おかしいぞ。俺がお前なんか信じるわけないだろ」


孝介の本音、もっと教えてもらわなきゃ。


「じゃあ、美和さんのことを信じるの?私のことは愛していないの?」


その瞬間、孝介はリビングのソファーを蹴った。


「ウザイな!お前。いい加減にしろよ!気持ち悪いんだよ。お前のことなんて《《愛してるわけない》》だろ」


怯むな。


「私はこんなにもあなたのこと、愛してるのに?」


「っ!?なんだよ!もう一回殴られないと、わからないのか?」


もう一度殴られると思い、歯を食いしばったが

「今日のお前、気持ち悪くて。ホント無理だわ。愛しているとか、愛してないとか。お前に愛情なんて最初からあるわけないだろ?今日はもう話しかけるな」


そう言って、孝介は自室に向かった。

彼が部屋に入ったのを確認すると、一気に力が抜けた。


はぁぁぁ。やっぱり怖いな。

でも、ここの角度なら絶対カメラに映っているはず。

孝介の発言も録音されていると思うし。


気を抜いた瞬間、先程殴られた頬に痛みを感じるようになった。


「痛い」

頬に触れると熱を感じた。


「冷やそう」

以前孝介に殴られた時は、迅くんがいろいろ手配してくれた。

まだそれほど前のことじゃないのに、懐かしい。


明日は仕事だから、顔腫れなきゃいいけど。





・・・・・・・・・・




来客用に借りているマンションに九条孝介の浮気相手である、飯田美和《いいだみわ》という家政婦を俺は呼び出していた。

俺の家政婦として契約をするためだ。


「すみません。急にお願いすることになって。助かります」

シリウスの社長として、偽りの自分を演じる。


「いえ。でも、どうして私なんですか?」


写真や映像で見たことはあるが、実物を見たのは今日が初めてだった。

孝介《あいつ》は、この女に好意を抱いている。

どこが良いのか俺にはわからないけど。

容姿か?

まぁ、綺麗だと言われればそうなんだろうけど、特別感は感じない。


「実は僕、家政婦さんを雇ったことがなくて。自分のプライベートな空間に、知らない人を入れるってなんとなく不安だったんですが、最近忙しくて。掃除とかできないのが現状で、信頼できる家政婦さんがいないかなって探していたら、九条社長に紹介してもらったんです。正直、こんなに綺麗な家政婦さんだなんて思いませんでした」


興信所の調査でどこのサービス事業者の家政婦かすでに把握はしていたが、怪しまれないように、九条社長にはチラッと家政婦の話をしておいた。


「そんなこと、ないです」

彼女は俺のお世辞にニコッと笑ってくれた。


家政婦に依頼したい内容を伝える。

本当に住んでいるわけではないため、掃除くらいしかすることはない。


「わかりました。基本的にお掃除をすれば良いんですね」


「はい。お願いします。あっ、あと。本当はいけないことかもしれませんが、僕も孝介さんと同じように、美和さんって呼んでも大丈夫……ですか?」


家政婦は一瞬目を見開いた。

いきなりすぎたか?

本当はもっとゆっくりこの女を落としていくつもりだったけど、時間がない。美月をこれ以上傷つけたくない。孝介《あいつ》も何するかわからないし。


「あっ。はい」

いいのか。


「良かった」

自然と口角が上がった。


「それで、美和さん。これももし良かったらの話なんですが、このあと、何か予定とかはありますか?急な依頼を受けてくださったお礼に、食事でもご馳走できたら……と思って。個人的な誘いを含んでいるので、美和さんの会社には内密にしてほしいんですが」


これも一種の賭けだな。

普通だったら断るところ、この女はどう出るだろう。

難しいと思ったが、家政婦の目が輝いていくのがわかった。


「あっ。はい。私で良かったら。お仕事だと思って来てしまったので、その……。洋服が……」


「嬉しいです!ありがとうございます。では、ご自宅の最寄り駅まで後ほど迎えに行きますので、気になるようでしたら着替えて来てもらえれば……」


「わかりました」

時間を指定すると、彼女は満面の笑みで部屋を後にした。

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