異変発表から2年と半年後
(ロシアの過去描写、一話に警告した虐待要素一部含まれます)
一週間前から、地球全体の気温が急激に下がり続けている。
そのニュースを見ているとき、アメリカは冷めたコーヒーを飲みながら、どこか遠くを見ていた。
…そういえば明日はクリスマスか。ニュースでも見たことないほど豪華な街の市場や、大きく飾り立てられたツリーが報じられている。
折角だし、プレゼントを買いに行こうかと外に行く準備をする。
上着を着ていると、部屋にアメリカが入ってきた。
「ロシアどっか行くのか~?」
「クリスマス市見てくる。」
「俺も行く~」
「ちゃんと防寒しろよ」
「へいへ~い」
少し言葉を交わして、アメリカは上着を取りに自室へ戻る。
…この時期になると毎回思い出す事がある。
1991年、12月26日、親父の崩壊日であり、命日。
正直言って、親父のやってきたことはクソだった。思い出すだけで吐き気がする。
欲があるときは俺の尊厳を奪い、腹だっているときは、痛みと恐怖を叩きつけられた。
首筋に触れると、消えない赤い跡が指先に残った。
過去の痛みが、今の自分をまだ少しだけ縛っているようだった。
そこで現実に引き戻すように玄関の方から、アメリカの声がした
「ロシアー!準備できたぞ!」
「わかった、今行く」
二人並んで靴を履き、鍵を閉めて歩き出す。
昔のことを思い出すより、こっちの方があったけぇ。
市場に着いて、俺に内緒で買いたいものがあるからと、一旦別行動になった。その方が俺も都合がいいし。
アメリカと別れた場所から少し歩いて、雑貨屋に入る。青の毛糸の手袋を買う。
店を出たタイミングでアメリカからメールが届く。
「買いたい物買った!広場のでっけぇツリ―の所で待ってる!」
幸いにも広場は近く、短く返事をして、少し歩き広場に着いた。
「お!ロシア早いな!」
「居たところが近かったからな」
「はい、これ、寒かったろ」
そう言ってアメリカは、ホットチョコを差し出して来た。…完璧に俺の好み把握してんな
「ありがと」
お礼を言って受け取る。アメリカは二杯買っていたようではふはふしながら飲んでいる。
ツリーを見上げ、周りの陽気な声を聴きながら、ホットチョコを一口飲む。
「…冬にこういうの飲むと、特別感あるよな。」
この特別感も含めて俺はクリスマスに飲むホットチョコが好物なのだ。
「あ~、確かに。昔除雪してて、終わった時に飲むホットミルクとか好きだった」
ホットチョコを飲み終え、しばらくベンチで他愛もない話をする。
そこでアメリカが寒そうにしていたから、少し早めにプレゼントを渡すことにした。
「アメリカ、帰ってから渡そうと思ったけど、これ。」
さっき買った手袋を渡す。
「クリスマスプレゼント?!ロシアから貰えると思ってなかった…Thank you!」
「じゃあ俺も、これ!」
そう言ってアメリカはキャラメルキャンドルを差し出して来た。クマの形をしていて可愛らしい見た目をしている
「キャンドル、?」
「ん~~、なんか魔法っぽくてよくないか?」
「んな理由かよ、w」
2人で笑い合う。その日はそのまま話しながら家に帰る。
家に帰り、アメリカは上着を脱ぎ捨ててスト―ブの前にしゃがむ
「寒かった~~、ロシアもこっち来いよ」
「上着たたんでから温まれよ…」
そういって、上着をたたみ、ストーブの前に行く。
ストーブの前のソファに座っていると、アメリカが立ち上がり
「えいっ」
俺の頬にアメリカの手が触れる。温かい
「うわ、っ?!」
「へへ、ロシアほっぺ冷た~」
「急に触んな…!」
「照れてやんの」
「っるせぇ…」
アメリカが笑う。それにつられて少し頬が緩む。
いつまで続くかわからない日々に、永遠に続くと、思ってしまいたくなった。
全球凍結まで、あと■か月
コメント
2件
尊い、尊いけどこれいつか必ず終りが来るって知ってるから余計苦しくなるよぉ
尊い!