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「美花。お兄さんの事、好きになってるでしょ」
「……っ」
奏のひと言に、美花の胸が強く突かれた。
「お兄さんが、店に入って来た時、恥ずかしそうにしてたし、カウンター席でご飯食べている時、あんた、時々振り返ってチラチラ見てたし。恋する女子って感じだよね」
どうやら、親友は美花の振る舞いを見て、彼女が圭に対して、淡い恋心を抱いている事に気付いているらしい。
怜は、何かを言いたそうに、眉根を寄せながら面差しを渋らせている。
奏に図星を言い当てられた美花は、返す言葉が見つからない。
「…………私から見たら、おにーさんはイケメンだし、きっと彼女さんもいるだろうし、雲の上の存在みたいなモンだよぉ」
困ったように顔をクシャリと崩す美花は、こう答えるのが精一杯。
店の中が静寂に包まれると、厨房にいた母の雪が、小さめホールのショートケーキをトレイに乗せて、テーブルに運んできた。
「おっ…………お母さん? いつの間にケーキなんて作ってたの!?」
「今日は店も空いてたし、奏ちゃんと彼氏さんも来てくれて、おめでたい報告を聞いたモンだからさ。まぁ…………時短で作れるショートケーキを作ってみたのよ」
雪が、テーブルの上にショートケーキを差し出した。
見た目も、いちごのデコレーションも、どこか歪ではあるけれど、手作りの温かみを感じさせる、母のショートケーキ。
中央には、チョコレートのプレートが添えられ、『結婚おめでとう!』と、チョコレートペンで書かれてある。
「うわぁ! 美花ママ、ありがとうございますっ!」
「女将さん、何から何まで、本当にありがとうございます」
奏は瞳を輝かせ、怜は、雪に向かって深々と頭を下げた。
「さ、食べて食べて!」
母がナイフを厨房から持ってくると、綺麗な三等分に切り分け、三人に振る舞っていく。
「じゃあお母さん、頂くね」
美花のひと声で、三人は手を合わせた後、ケーキを食べ始める。
この日の夜、美花は奏に痛い所を突かれつつ、久しぶりに会った友人、初めて会った友人の彼と、楽しいひと時を過ごしたのだった。