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美花の目の前に差し出されたのは、白バラの可愛いブーケ。
目力の強い漆黒の瞳に、薄茶の瞳が捉えられた。
「…………え? 私が受け取って…………いい……の……?」
「もちろん」
キリっとした目元の花嫁が目を細め、柔らかな眼差しに包まれた。
「一年前、私は本橋夫妻の結婚式で、奈美からブーケを直接頂いて、怜さんと出会い、一年後の今日、出会った時と同じ場所で、怜さんと永遠の愛を誓う事ができた。このブーケ、私が奈美からもらったブーケと、ほぼ同じにしてもらったの」
奏がチラリと奈美を見やり、奈美が小さく肯首する。
「花嫁からブーケをもらった女性は次に結婚する、なんて、私は『都市伝説かっ』て思ってたけど…………本当だった。美花。次は…………あんたの番だよ?」
花嫁から優しく諭され、二組の夫婦が彼女を見守っている。
奏が手にしていたブーケには、奈美から奏へ、奏から美花へと思いが繋がっているのだと思うと、彼女の胸の奥がギュッと摘まれた。
小中学校時代からの友情と絆を思わせる白バラのブーケが、輝きをを放っているように見える。
「あっ…………あり……がとう…………かなチー……」
奏に差し出された白バラのブーケを、美花は、おずおずと受け取り、小さく頭を下げる。
視界に映るブーケが、霞が掛かったように見え、気付くと薄茶の瞳が潤んでいた。
「じゃあ俺たち、そろそろ行くよ」
「奈美、旦那さん、美花。また後でね」
式場のスタッフが、奏と怜に耳打ちをすると、花婿と花嫁は手を振りながら、三棟あるうちの一つの洋館に入っていく。
「披露宴まで、まだ少し時間があるな。ひとまず、中に入るか」
「ラウンジがあったよね? 豪さん、喉乾いちゃったよ……。美花も何か飲みたくない?」
「うん。アイスティが飲みたい気分っ」
「じゃあラウンジに行くか」
広場からラウンジに向かおうとした時、美花の視界の隅に感じる、刺すような眼差し。
彼女は今一度、広場を見渡すと、おにーさんこと葉山圭と目が合う。
ほんの数秒、ただ視線を交差させる美花と圭。
彼女は、彼に軽く会釈をすると、小走りでラウンジに足を向けた。