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抜けるような青空の下、多くの列席者からの祝福に包まれながら、教会から現れた弟と義妹となる奏の微笑みを、遠目から見ていた圭。
(俺は、女の前で、あんなに嬉しい表情を、浮かべた事があっただろうか……?)
幸せいっぱいの面差しを湛えている怜に視線を向けながら、彼は不意に思う。
(俺が笑みを浮かべていたのは…………女にチヤホヤされて……優越感に浸っている時だけ……)
常に怜と比較され続け、全てにおいて弟よりも優れていた圭だったが、本当の幸せを手にしたのは、怜が先だった。
圭は、いたたまれなくなり、新郎新婦から顔を逸らして広場から離れようとした。
彼が辺りを見回すと、金髪を思わせるストレートロングの茶色の艶髪が、瞳に飛び込んできた。
(あれは…………彼女……)
美花が、花嫁の奏からブーケを差し出され、クリッとした瞳を丸くさせている。
義妹から何か声を掛けられているのだろう、彼女は辿々しくブーケを受け取り、ペコリとお辞儀をしていた。
華々しいカラーフォーマルのワンピース、ドレスを纏う女性の列席者が多い中、美花は、上品な色合いのベージュの長袖のボレロに、ブラックのキャミソールとワイドパンツのセットアップに身を包み、圭には異彩を放っているように感じる。
綺麗に着飾った女性が多い中、彼女はカッコいい女性、という雰囲気。
彼女らしい服装だな、などと考えているうちに、美花が圭の送る眼差しに気付いたのか、こちらに身体を向かれた。
僅か数秒ほどだが、視線が交わり合う二人。
時が凪いだように、圭は、美花と周りの情景ごと切り取られた感覚に陥った。
彼女は彼に一礼すると、一緒に列席している夫婦とともに、建物の中へ入っていく。
圭も、この後は親族の写真撮影、両家の親族紹介が控えており、足早に控室へ向かった。
(親族の結婚式のスケジュールって、想像以上に慌ただしいな……)
披露宴開宴まで、あと十分ほどになり、圭は宴会場の隅で腕を組みながら、フウッとため息をつく。
新郎新婦が、ともに元吹奏楽部、かつ今も仕事で音楽関係に携わっているせいなのか、宴会場は多くの列席者で埋めつくされていた。
新婦側のテーブルには、美花の姿も確認でき、隣にいる友人と談笑しているのが伺える。
会場の照明が少しずつ暗転してきた所で、圭は、一番後方にある新郎親族のテーブル席に腰を下ろした。