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そんな亜佑美の様子を運転席に座る朝陽はちらりと横目で見る。
「昼間のこと、気にしていますか?」
「……うん。気のせいかなって思ってるんだけど、やっぱり怖くて」
「そうですよね」
そう頷いた朝陽が曲がり角を曲がると、
「……あれ? こっち家とは反対方向じゃない?」
「ええ」
「どこか寄るの?」
「気分転換に少しだけ寄り道しましょう」
「寄り道?」
「軽くドライブするだけですけど、不安を抱えたままで家に帰っても気分が晴れないと思うので」
思いがけない言葉に亜佑美は目を瞬かせた後で、ほんの少しだけ表情を緩めた。
「……ありがとう」
朝陽はそんな亜佑美を見て安心したように小さく笑うと市街地から離れていった。
特に行き先を決めることもなく、途中で飲み物をテイクアウトした朝陽は車を走らせ続けた。
そんな中、朝陽と二人きりでいられる安心感からか亜佑美は少しずつ元気を取り戻しているようで笑顔が増えていく。
「少しは気分が晴れましたか?」
運転しながら尋ねる朝陽に亜佑美は小さく頷いた。
「うん。朝陽くんが隣にいてくれるし……車の中だからかな。なんだか安心する」
「それならよかったです。今度の休日は少し遠出するのもいいかもしれないですね」
「そうだね。久しぶりにどこか遠くまで行ってみたい」
付きまといが始まってからというもの二人はデートらしいデートもほとんど出来ていなかった。
だからこそ目的地も決めずに車を走らせるだけの時間でさえ今の二人にとっては貴重なひとときだった。
暫くドライブを楽しんだあと二人は洋食屋に立ち寄り夕食を済ませると、そのままマンションへと戻った。
部屋に入るとすでに陽向が帰宅していた。
「おかえり」
「ただいま」
いつも通りのやり取りを交わしたあと陽向が亜佑美に封筒を差し出す。
「亜佑美サン宛に手紙が来てたよ」
「あ、ありがとう」
亜佑美は受け取った封筒を手に首を傾げた。
差出人の名前が無いことに少し違和感を覚えたものの荷物を置いてから封筒を開封すると次の瞬間――
「きゃっ!」
亜佑美の悲鳴が部屋に響き、
「どうした!?」
「何があったんですか!?」
朝陽と陽向が同時に駆け寄った。
亜佑美は青ざめた顔で手にしたものを見つめていた。
「これ……」
震える手で差し出された封筒の中には真っ白な紙と一枚の写真が入っていて、白い紙には赤い文字で【こんなにも好きなのに……】と書かれていて、写真を見た二人の表情は一瞬で凍りついた。
そこに写っていたのは亜佑美と朝陽と陽向と界人の四人で、全員の顔が赤いペンで乱暴に塗りつぶされている。
「……何だよ、これ」
「これ、どういう意味なんだろ……」
さっきまでの穏やかな時間が一変、亜佑美の顔からは笑顔が消え去っていた。
「……見たままで言うなら、俺らのことは『邪魔』って意味だろーけど……」
陽向が写真を見つめたまま低い声で呟いた。
「私の顔も塗りつぶされてるってことは……」
亜佑美が震える声で言うと陽向は手紙へ視線を移した。
「紙に『こんなにも好きなのに……』って書いてあることを考えると……」
陽向が言葉を続けようとしたその時、
「陽向!」
朝陽が鋭い声で遮り、反射的に陽向は口を閉ざす。
「とにかく、北丘さんにも情報共有しよう。その上でこれはもう警察に相談した方がいいかもしれない……」
朝陽は努めて冷静に告げる。
「……そう、だな。俺が北丘サンに電話掛けるよ」
「ああ」
そう言って陽向は界人へ電話をかけた。
その間も亜佑美は立ったまま動けずにいた。
「亜佑美さん、とりあえず座りましょう」
見兼ねた朝陽がそっと亜佑美の肩を抱いてソファーへ座らせる。
「大丈夫ですからね」
「うん……ありがとう……」
そんな中、界人との電話を終えた陽向。
「兄ちゃん北丘サン今から家に来るって。直接話した方がいいだろって」
「分かった」
そんな会話が交わされる中、亜佑美はただ黙って二人を見つめていた。
そして陽向が先程言いかけたことをふと考える。
『こんなにも好きなのに……』という手紙と、顔が赤く塗りつぶされた写真。
その意味を考えれば、いくつかの可能性が浮かんでしまう。
コメント
1件
朝陽くんが不安な亜佑美さんを連れ出して優しく寄り添う姿に、ほっとする気持ちと「この時間がずっと続けばいいのに…」って願う気持ちが入り混じりました。だからこそ、帰宅後の一通の手紙で一瞬にして穏やかな空気が壊れる展開が怖すぎて…。全員の顔が塗りつぶされた写真、「こんなにも好きなのに……」という文字。朝陽くんが陽向くんの言葉を遮ったのも気になる。この先どうなるのか、夜も眠れないくらい気になります。
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