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自分のことを好きだったけれど、今はもう好きではないから消した。
あるいは、好きなのに自分のものにならないから消した。
「……っ」
どちらの可能性を考えても怖くなり、亜佑美の身体が小さく震えた。
それから一時間ほどして界人がやって来た。
朝陽たちはテーブルの上に並べられた手紙と写真を前に改めて状況を説明する。
電話ではすでに聞いていた界人だったが実際に目にすると、その表情は見る見るうちに険しくなっていった。
「これは……だいぶ悪質だな……」
写真と手紙を一枚ずつ確認しながら界人が低く呟く。
「流石にこれは見過ごせないですよね」
朝陽がそう言うと界人は小さく頷いた。
「確かに……」
「警察に相談しようかと思っているんですけど」
朝陽が続けると界人は手紙を見つめたあとで重いため息を吐いた。
「……こんなこと言いたくはないけど、この程度じゃ警察なんて動かないですよ。彼女の時も似たようなものだったから」
「けど何か起こすって予告してるようなもんじゃん。脅迫と同じだろ」
思わず苛立ちを露わにする陽向に朝陽が落ち着かせるように声を掛ける。
「陽向、北丘さんに当たっても仕方ないだろ?」
「そうだけど……」
陽向は納得しきれない様子ながらも口を閉ざした。
界人はそんな二人を見てから静かに言葉を続ける。
「まあ、何もしないよりはマシかもしれないけど……正直、期待はしない方がいいと思います」
「そうですか……」
朝陽はそう答えながらテーブルの上に置かれた手紙へと視線を落とした。
確かに相手の素性が分かっているのであれば何らかの対処ができるかもしれないけれど犯人が誰なのかすら分かっていない状態で警察に届け出たところで、すぐに動いてもらえるとは思えない。
暫く沈黙が続いたあと、朝陽がふと思い出したように界人に尋ねた。
「あの、聞いてもいいですか?」
「何ですか?」
「その……彼女さんが被害に遭った時って、相手は知り合いの人だったんでしょうか?」
その問いに界人は少し考えるように視線を落とした。
「知り合いってわけじゃないんです。ただ、相手を突き止めた時に分かったのは、彼女も存在は認識している人でした」
「存在を認識していた?」
「ええ。当時、彼女はファミレスでバイトしてたんです。犯人はそこに客として来ていた男でした」
「それって……要するに勝手に好きになったってこと?」
陽向が呆れたように口を挟む。
「そう。接客業なんだから客に笑顔を向けるなんて当たり前のことなのに……そいつは自分にだけ特別な笑顔を向けてくれたから彼女は自分のことが好きなんだって勝手に思い込んでた勘違い野郎ですよ」
「……最悪だな」
陽向は吐き捨てるように呟いた。
その話を聞いていた朝陽はふと隣にいる亜佑美へ視線を向けた。
「亜佑美さんもそういった人に心当たりはありませんか?」
突然問いかけられた亜佑美は困ったように眉を寄せる。
「……分からない」
「そうですよね……」
返答に朝陽が考え込むように黙ると陽向が写真へ目を向けながら口を開いた。
「つーか、そんなのが相手じゃ気をつけようがねぇよな。本当に……」
犯人が何を考えているのかも次に何をするつもりなのかも分からない。
ただ一つ分かっていることは、相手が好意を寄せていた亜佑美に対しても何かしらの敵意を感じているということ。
テーブルの上に置かれた手紙と写真が、その事実を嫌というほど突きつけていた。
「とにかく、こうなるといつどこで相手が接触してくるか分からない。木葉は絶対に一人で行動しない方がいい」
話し合いの中で界人は改めてそう念を押すと、
「そうですね、そこだけは徹底しないと」
朝陽も真剣な表情で頷く。
これまでも出来る限り一人にならないよう気をつけてきた。
けれど、相手がここまで執拗な行動に出ている以上これまで以上の警戒が必要だった。
「まあ今でも一人にはならないようになってるけどさ、やっぱり職場の同性にも話した方がいいんじゃね?」
そう言ったのは陽向だった。
コメント
1件
うわっ…この話、めっちゃ怖くない?!😭💦 手紙と写真の悪質さもだけど、界人の彼女さんの過去の話が重すぎて…「接客の笑顔を特別扱いするな」って、そういう歪んだ一方的な想いが現実に起こるって考えるだけでゾッとする…。亜佑美ちゃんが震えてたシーン、すごく胸が痛かったよ。一人で行動しないって徹底してるの偉いけど、犯人が何考えてるか分からんのが一番怖いよね…次の展開どうなるんだろ、心配すぎる😢✨
ひより
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夏目萌*優しい彼~コミカライズ
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#大人ロマンス
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