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次の日の朝、僕はお礼を言いに、3組まで凛花ちゃんに会いに行った。
凛花ちゃんは同じ組の女の子──楸真奈さんと話をしてて、僕が声をかけると、
「あれ? 勇気くん、どうしたの?」
とふたりして教室から出てきてくれた。
「昨日、アリスさんのこと教えてくれてありがとな。プラモデル、ちゃんと直ったよ」
「良かったね!」
凛花ちゃんは言って、隣の楸さんに顔を向けると、
「やっぱり凄いね、アリスさん」
すると楸さんは笑顔で頷き、
「でしょ? アリスさんの魔法、わたしも憧れてるの。でもなかなか難しくって」
「真奈ちゃんならきっとできるよ!」
凛花ちゃんは楸さんの手を握ってぶんぶん振った。
このふたりは同じ組になった去年からずっと仲良しだ。学校に来る時も、そして帰る時も、いつも楽しそうにおしゃべりしている。
僕と凛花ちゃんは保育園の頃からの友達でお母さん同士も仲が良いけれど、楸さんと同じ組になったことはまだ一度もなくて、いったいどんな子なのか、よく知らなかった。
肩まで伸びた髪を後ろで束ねてて、大きな眼がキラキラしている。
いつ見ても楽しそうに笑っていて、見ているとこっちも楽しくなるような、不思議な子だった。
「アリスさんのこと教えてくれたの、真奈ちゃんなんだよ」
「え、そうなの?」
楸さんの方に顔を向けると、楸さんは胸を張りながら、
「そうだよ! 役に立ったでしょ? えっへん!」
とワザとらしく言って笑う。
「ありがとな、楸さん」
すると楸さんは、今度はへらへら笑いながら、
「いいのいいの! 困ったことがあったら何でも言ってね! 私が何とかしてあげるから!」
それに対して、僕は首を傾げながら、
「何でもって?」
「何でもは、何でもだよ!」
「ねー?」
と楸さんは凛花ちゃんと顔を見合わせ、ふたりしてにこにこ笑ってみせる。
「どういうこと?」
意味が解らなくて聞いてみると、楸さんは口の前で人差し指を立てながら、
「ヒミツっ!」
と、嬉しそうにぷぷっと笑った。