テラーノベル
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建物の影に隠れて身を守る。魔法使いはゆっくりとこちらに近づいてきている。幸い、自分がどこにいるのかはバレていないようだ。
(落ち着け、焦るな。あいつは炎を使う遠距離攻撃、こっちは子供二人を守りながら逃げないと……!)
いっそのこと病院まで突っ切るか?それだと炎で病院が壊れるかもしれない、中の人にも危険が襲う。ここは諦めて別の避難所へ…。
「お兄さん!」
声で我に返る。二人がこちらを真っすぐ見ていた。そして、ある考えが浮ぶ。
もし逃げ切れなかったら俺たちはどうなる?避難所の学校で首を絞められた時のことを思い出す。逃げ道なんてない、戦うしかないんだ。
「魔法使いなら、ゲームの応用で……!」
魔法使いは物語やゲームに職業やキャラクターとして出ている。どんな魔法を使うかは、ある程度は予想できる。
(炎には水だ、水で無力化すれば!)
魔法使いから逃げるようして走り出した。連続的に水を浴びせるか一度に大量の水を浴びせる方法を探しながら走る。しかし、周辺には学校だってプールさえない。望みは薄かった。
「二人はここから離れた建物の中に逃げるんだ!」
「お兄さんを残して逃げるなんてできません!俺たちも何か役に立たせて下さい!」
「俺もお兄さんについてく!」
「……わかった。だけど、危険な時は絶対に逃げろ!」
魔法使いが杖を掲げてその先に魔法陣が浮かび上がる。直樹たちと魔法使いの距離は離れている。この距離、範囲攻撃を撃つとは思えない。
「くるぞ!」
思った通り、さっきの火球が直樹達に向けて飛んできた。それを道の端に移動して避ける。しかし一つだけではなかった。その後ろに隠れた二つが残っていた。
「く……っ!」
火球に隠れて魔法使いの姿は見えない。直樹は脚を前に踏み出して止まり、火球の方へ走った。皮膚が焼けるギリギリで火球を避ける。火球の死角を利用した反撃。接近戦が不利な魔法使いの懐に潜り込んで格闘戦に持ち込む。
直樹が拳を突き出そうとした時、魔法使いの表情が見えた。
無表情で魂が抜けたような目をしていた。彼女は操られている。
そう思い、ためらって力を抜いた時には杖で左脇腹を叩きつけられ吹き飛ばされた。肺から空気が吐き出る。骨が軋み痛みが走る。
なぜこんな事をしたんだろう。反撃しなければならないと思った。うまくいくと思った。あのとき走っていれば、今こうやって杖の先を突きつけられる事なんてなかったのに。
既に魔法陣は展開されている。立ち上がる時にはもう炎で焼かれているだろう。
「お兄さん!!」
「……させるかっ!」
後悔を押しのけて杖を掴み、杖の先が体に向かないよう向きを変える。そのまま立ち上がり魔法使いの体に密着する。その時、魔法使いと目が合う。目が合ってるのにどこか違う場所を見ているようだった。
「あなたを傷つけたくない!俺たちは戦うべきじゃない!だから、目を覚ましてくれ!」
ほぼ命ごえに近かった。自分の死を感じ始めると、どんな手を使ってでも生き延びたくなる。生存本能には逆らえなかった。
すると、直樹と魔法使いから紅いの光が溢れ出した。濁った赤は少しずつ色を失い、夜が明けるかのように澄み切った蒼い輝となり、魔法使いの瞳には光が戻っていた。
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