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人間は私たちのことが嫌いだ。そうじゃないなら私たちにこんなことはしない。私は逃げ出した。走って、走って見つけてしまった。私たちを嫌っている人間を。
「つまり、あんたらの仲間が人が連れた馬車の中に捕まってるってことか」
「……はい」
拓海は声を掛けてきた獣耳が生えた彼女と林道を走っていた。拓海は肩越しに女性の姿を見た。かなり訳ありな格好をしていて、足下を見ると土で素足が汚れていて、必死に助けを求めていたとなんとなく伝わった。しかし、彼女は悲しそうな目をしているが警戒してるようにも見える。
「あそこです!」
道の先に馬車の後ろ姿が見えた。追いついたのはいいが、これからどうすればいいか考えていない。今から行うことが正しいのかどうかわからないけど、目の前に困ってる人がいるのに見捨てることはできない。拓海は叫んだ。
「とまれぇぇぇぇぇ!!」
手綱をにぎった御者《ぎょしゃ》が振り返った。拓海は馬車を追い越し、馬の正面に立ちはだかった。馬車は止まった。
「いきなりなんだ!?あぶないだろ!」
「馬車の中の人達を解放しろ!」
「ちっ……あいつか……!逃げた奴の居場所を教えてくれるなら解放しよう」
「嘘つけハゲ。そんなの引っ掛かるかよ」
「まだ生えてるわぁ!お前ら!このガキを殺せ!」
馬車の中から武器を持った二人の大男(護衛)が出てくる。このまま戦えば勝ち目はない。だが、こちらもさっき拾った助っ人がいる。
「そうはさせない!とぉう!」
横の茂みから誰かが飛び出す影が現れる。
「右を見ろぉ!森が広がってる!左を見ろぉ!蝶が飛んでいる!そして前には俺がいる!正義の味方、ルバーク・トゥエンダー!」
「……は?」
御者は突然の展開に呆気にとられた顔をしている。拓海も同じような顔をしていた。
そして遅れて駆けつけて、息を切らした彼女がやってきた。
「へっ変人ーーー!?!?」
ルバークと名乗る男は鍛えられたムキムキの上半身裸の姿でポーズを決めてその場に立っていた。背中には鞄を背負って腰にはロングソードを装備している。
(日本が終末みたいになってるけど、異世界は違う意見で終末じゃねぇか!)
拓海は確かに声をかけた時点で上半身裸というのはおかしいと思ったが、中身のほうがヤバかったと思うのだった。
「この変人が!変なこと言ってんじゃねぇぞ!お前ら、やれぇ!」
護衛の一人がルバークに襲いかかる。ルバークは腰の剣を抜きそのまま片手で護衛の剣を弾いた。
「ふん、取るに足りないが修行として手加減なしで行くぞ! 」
ルバークは魔法を使い身体能力を上昇させ男を縦に斬りかかる。大男は剣で受けようとするが、そのまま剣を切断して地面にも深い斬撃の跡を残した。
二人の護衛は御者を置いて逃げ出した。
「おいっ、まて!……このバケモノが!」
「逃さない!」
ルバークは逃げた護衛を気絶させて御者を制圧した。そして、拓海の目の前を蝶がヒラヒラと飛んでいった。
・ ・ ・
馬車の中から眠らされた男女三人を起こし、ルバークが手枷を壊した。
しかし、彼女含めた四人はまだ拓海とルバークを少し警戒していた。
「あの、オレたちなんもしないんでそんなに警戒しなくても……」
「知らないのかタクミ?獣人は大の人間嫌いなんだよ」
獣人は昔から人間嫌いで有名な種族で、人間を寄せ付けないため、あえて人間が来れない険しい場所の先に国を創って暮らしている。
「人間全員って訳ではない。あなた達には感謝してます。だけど……」
獣人が人間を嫌う理由。獣人の容姿は人間に受けが良く、そのため奴隷商人は需要が高い獣人を狙って高額な獣人売買のやり取りを行い稼ぐ者もいる。
それが獣人が人間を嫌う理由だ。
「そんなことより、彼女の体調が良くない。すぐに休ませないと」
そうルバークが言った。
馬車の中に居た一人の獣人の体調が悪く、どこか近くの村が町を探さなければならない。
「ここから君たちの国が一番近い。君たちが戻って彼女を休ませてくれないか?私たちはこの奴隷商人を町に連れて行く。ここでお別れだな」
「まって……!私たちでも一人担いで国へはたどり着けないわ!」
「ならば私が担いで行こう」
「知ってるんじゃなかったの?道が険しいことが。人間がたどり着ける場所じゃないの!」
だがルバークは自慢気に答えた。
「舐めてもらっては困る!あの道は修業の一環で何度も通ったことがある。もちろん君たちの国にも」
「えぇ!?どうやって……!」
「もちろん君たちの住処を荒らすつもりはない。獣人は人間を嫌っているが、鎖国をしているわけではないだろ?行くこと自体は問題ないはずだ!」
「……たし……かに?」
「ならオレがこいつらを町に送っていく」
拓海は手枷で繋がられた奴隷商人たちを指差した。護衛はまだ気絶していて、御者(奴隷商人)は俯いて完全に気力を無くしていた。
「いいのか?助かるよ!……にしても、君は珍しい格好をしているが貴族の息子か?こんな所でなにをしていたんだ?」
拓海は一瞬話すか話さないか迷ったが、少し話すことにした。
「あー、話すと長くなるんだけど別の世界から来て、今ここがどこかも分からないんだよ」
「なんと、別の世界から来たのか!?なら町がどこにあるか分からなくないか?」
「あっ!確かに。こいつらもだけど、どうしよう」
この世界に来たばかりの拓海には町がどこにあるか分かるはずもなく、拓海は行く先を見失ってしまった。
「ならばタクミも私が担いで獣人の国に向かうとしよう!」
「いや、流石に二人を背負って険しい道を行くのは無理なんじゃないか?」
「修行する身として、これくらいのこと当然だ!」
ルバークの人思いな性格に拓海は心打たれた。
「……ルバーク、ありがとう。だけど、結局こいつらはどうするんだ?……流石に担ぐのはもう無理だよな?」
「馬車の中に閉じ込めておいて後で回収しよう。それなら問題ない」
「そうだな。よし、じゃあ獣人の国にむかうか!そういえば君の名前は?」
拓海に助けを求めた獣人は言った。
「……ガルーシア」
そうして奴隷商人たちを馬車の中に閉じ込めて、拓海たちは獣人の国へと向かったのだった。