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95 - 第13話:揺れる基盤、迷う設計

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2025年04月17日

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第13話:揺れる基盤、迷う設計



🌫️ シーン1:杭と街が噛み合わない


翌日。ケンチクは地面に広がるホログラム図面を見つめていた。


瓦礫を撤去し、杭も打った。アセイが設計した地中ネット《脈織》も展開されている。


だが――構造が「かみ合わない」。 杭と建物の支柱が微妙にズレ、街の脈動が繋がらない。


「……図面通りや。でも、感触がない」


ケンチクが肩のゴーグルを外し、額の汗をぬぐった。 彼の短く刈った髪と日焼けした肌には、迷いが滲んでいた。


アセイが横から静かに口を開く。 「杭の位置も、フラクタルの導線も間違ってはいない。 でも、街が“乗ってこない”……」


「街て、何様やねん」 そうつぶやいたケンチクの言葉に、ふたりとも苦笑いした。


その瞬間、すずかAIの端末から通知が響く。


「新たな共鳴不一致データを検出。

本件と類似した“過去都市の崩壊記録”があります。再生しますか?」


「……見せて」 アセイが答える。




📼 シーン2:過去の都市、崩れた意志


空中に映し出されたのは、ある都市の断片的な映像だった。


杭が打たれ、街が立ち上がる。 だが数日後、杭の一部が共鳴を失い、都市全体が“軋み”始めた。


『なぜ杭が沈む!?設計通りだろう!?』 『杭と建築の“意志”がすれ違ってるんだ……これは、ただの設計ミスじゃない』


やがて崩れ落ちる塔。折れた杭。逃げ惑う碧族の姿。


すずかAIが静かに続ける。


「この都市では、設計に対し杭の“意志強度”が不足していました。

理論と構造の一致があっても、現場の“感覚”が欠けていたためです」




🛠️ シーン3:処理後たちの気づき


その頃、少し離れた東側の封鎖エリアでは、処理後チームが杭打ち作業にあたっていた。


「ここも杭、軽すぎるな……」 ゴウが重機義手を振るい、封鎖杭を打ち込んでいく。


ギョウが手元の波形を確認する。 「響きが浅い。これは“打たされた杭”だっぺ」


キョウは無言で杭を支える補助杭を刺すと、低くつぶやいた。 「あいつら、まだ迷ってる」


ゴウが笑った。 「ま、設計屋が悩んでる時は、杭がぐらぐらすんのが常やっぺ」




💬 シーン4:杭の意志をつなぐには


夕暮れ、ケンチクとアセイは再び杭の前に立っていた。 杭は、静かに地に埋まりながらも、どこか“さびしげ”に見えた。


「設計だけじゃ、杭は街を支えへんのかもな……」


「たぶん杭って、“人の迷い”を映すんだ」 アセイがそっと言った。


すずかAIの声が、そっと背中を押すように響いた。


「意志が定まったとき、杭は都市の心臓となります。

まだ、設計は終わっていません。『揺れ』は、正しい兆しでもあります」


ケンチクは深く息を吸い、そして笑った。 「せやな。“迷った杭”が咲く街、見てみたいやん」




都市を支える杭が揺れるとき、迷うのは街ではなく、つくり手自身だ。

だがその迷いが、次の設計へとつながっていく。



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