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第14話:杭の意味を問う
🔧 シーン1:杭をめぐる衝突
夕暮れ、作業終了後の基地テント。
アセイは設計端末を操作しながら、独りごとのように呟いた。
「杭とは何だ……構造支柱?意味記号?それともただの仮想共鳴点か……」
その声に、後ろから重い足音。
「おい、そこの設計屋」
ゴウが腕を組み、スーツの重機義手を光らせながら立っていた。
「杭がただの“点”だなんて言ってんじゃねぇっぺな」
アセイは眼鏡の奥の目を細め、静かに言った。
「構造的には、そう言える。 けれど……杭に感情を込めるなんて、非合理的だ」
ゴウは声を荒げた。
「ワイらは、命がけで杭を打ってんだっぺ!それを“構造物”の一言で終わらせるなや!!」
テント内の空気が張りつめた。 ケンチクが間に割って入る。
「まあまあ、どっちも間違ってへん。ただ……どっちかだけじゃ、街は立たんわな」
🌀 シーン2:過去の杭と都市の記録
その晩、アセイはひとりですずかAIを起動する。
「すずか。過去都市の杭の“言語記録”を出して」
「記録再生:杭 No.0925 “マナトの街”、杭データ解凍中……」
画面には、かつて碧族が暮らしていた街の杭の記録が映し出される。 そこには、杭を打った者の短い言葉が刻まれていた。
『妹を失った。だから、この杭は忘れない杭』
『この杭は、あいつの夢を咲かせるためにある』
『杭は、誰かに何かを“残したい”ときに打たれる』
アセイは、思わず端末を握りしめた。
「……そうか、杭は“情報”じゃない。“共有”なんだ」
🛠️ シーン3:杭とは“印”
翌朝。打ち合わせテーブルの前。 アセイは珍しく、自分からゴウに話しかけた。
「昨日は……言いすぎた」
ゴウは腕を組んで黙っていた。
「俺は設計において、杭を“意味のある座標”としてしか見ていなかった。 でも……記録を読んで気づいた。杭は、“誰かと何かを共有するための印”だ」
ゴウがゆっくりと頷いた。 「そうだっぺ。ワイらは、街の記憶を杭に刻んで打ってるんだっぺ」
ケンチクが笑って言う。
「杭一本に詰まっとるのは、技術と想いや。 “杭は記憶の柱”、ええ言葉やな」
💬 シーン4:すずかAI、共感する
すずかAIの声がテントに響いた。
「杭とは、都市における“意味の起点”です。
それは設計の座標であり、祈りであり、記憶を託すための印。
本日、新たな定義を記録に追加します」
「新たな定義?」アセイが聞く。
「杭は“共有の印”。これは感情値を含む設計記録です」
アセイはふっと笑った。
「感情値を含む設計か……それもまた、街を生む“構造”だな」
杭とは、建てるためのものではない。
誰かと何かを、“分かち合うための印”なのだ。