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第十六章 月に還る闇
第二話 最後の夜
それからも、5人の会話は途切れることなく続いた。
これまでの旅の話。
初めて出会った頃のこと。
帝都での騒動。
白霧山で迷いかけた話。
シュンタが酒場で絡まれた話に全員で笑い。
ジュウタロウのフィルディアでの意外な話に驚き。
ハヤトが弟たちとの思い出を語れば、自然と頬が緩んだ。
ダイチは幼い頃のジントとの思い出を話し、ジントも少し照れながら、それに言葉を重ねる。
時には腹を抱えるほど笑った。
時には真剣な顔で悩みを打ち明けた。
時には思い出したように涙ぐみ、
そしてまた誰かが冗談を言って笑わせた。
まるで何年も長い時間、共に連れ添った仲間のように。
兄弟のように。
家族のように。
5人は語り続けた。
誰も口にはしなかった。
けれど全員が分かっていた。
明日が、旅の終わりになるかもしれないことを。
だからこそ、この時間を少しでも長く、この声を少しでも多く聞いていたかった。
やがて会話の間隔が少しずつ空き始める。
シュンタが欠伸をした。
「……あかん……もう限界や……」
そう言った直後には、すでにベッドの外に体を半分投げ出して寝落ちしていた。
「お前は子供か」
呆れたように言うジュウタロウも、その十分後には静かな寝息を立てている。
ハヤトは椅子にもたれたまま目を閉じた。
ダイチはベッドに横になりながら、最後までジントと他愛ない話を続けていたが
「……ジント」
「ん?」
「……好きやで」
「うん……」
「……返事それだけ?」
「ふふっ……」
顔を赤らめ、恥ずかしそうに微笑むジント。
「……俺も好きだよ」
それに満足そうに笑ったダイチは、そのまま眠りへ落ちていった。
規則正しい寝息。
静かな部屋。
ジントはしばらくそれを聞いていた。
静かな月明かりの下。ジントは眠る4人の寝顔を見つめた。
愛おしかった。
ずっと見ていたいと思うほどに。
けれど瞼は重く、抗えない眠気がゆっくりと身体を包み込んでいく。
「……おやすみ」
誰にともなく呟く。
そしてジントも目を閉じた。
全員が眠りに落ちた頃には、遠くの空が、わずかに白み始めていた。
そして五人の旅の最後の朝が、静かに始まろうとしていた。
コメント
3件
ついに二人がお互いに好きを伝えられるようになって、なんだか感慨深いです…… これからの展開が楽しみです。応援しています!
第27話「最後の夜」、読了しました。明日が旅の終わりになるかもしれない――その緊張感があるからこそ、この何気ない会話や寝落ちのシーンがすごく沁みました。特にダイチとジントの「好きやで」のやり取り、あの照れくさそうな返しの間が最高でした。全員が眠りに落ちるまでの静かな時間の描写が、読んでいるこちらにも温かいまどろみを運んでくるようで。明日がどうなるか分からないからこそ、この夜の一瞬一瞬が愛おしい。本当に素敵なエピソードでした。