テラーノベル
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次の日。
目は覚めたのに、体が動かなかった。
事務所に行けない。
行ったら、また昨日みたいに――
気づかれず、名前も呼ばれず、
いないものみたいに扱われる。
それが、怖かった。
「……もう、嫌だな」
小さく呟く。
これ以上、辛い思いをしたくない。
それだけだった。
ふと、昔聞いた言葉を思い出す。
生きる意味を失った人間は、
自分で終わりを選ぶことがある。
頭の中に、妙に静かな考えが浮かんだ。
――じゃあ、僕も?
否定する力も、肯定する力もなかった。
ただ、外に出た。
⸻
ビルの前まで来て、足が止まる。
高い、と思った。
でも、怖さよりも空虚さの方が大きい。
「……」
建物のドアに手をかける。
その瞬間だった。
バンッ!
反対側から、勢いよくドアが開いた。
「いったぁ……!」
思わず声が出た。
顔を上げる。
そこにいたのは――
光子郎と、権兵衛だった。
「!!」
二人とも、明らかに驚いている。
こっちが驚きたいくらいだった。
「なんで……」
言いかけて、止まる。
権兵衛は息を切らしていて、
光子郎は珍しく落ち着きがなかった。
「光子郎がな」
権兵衛が言う。
「嫌な予感がするって」
視線が、まっすぐこっちに向く。
――ちゃんと、見てる。
光子郎が続けた。
「理由は分からない。
だが確実に大事な下僕を失う気がした!」
胸の奥が、ぎゅっと縮んだ。
名前を呼ばれなくなっても、
存在が薄れても、
それでも、探しに来た。
「もし1人が不安なら…」
権兵衛が、少し迷ってから言った。
「一緒に住まないか?」
「俺の家に!!」
光子郎が補足する。
「しばらくだ
この病気が治るまでな!」
言葉は多くなかった。
でも、それで十分だった
僕は、ゆっくり息を吐く。
「……うん!」
短く、答えた。
⸻
その日から、みんなで花散家に住むことになった。
世界は、相変わらず不安定で、
病気が消えたわけでもない。
でも。
完全に一人になる前に、
引き戻された。
それだけで、今日は生きていけた
続き⇨♡500
コメント
8件
やっぱり天才だった…純が危なぁい!やばぁい!口調は鋭いけどそれでも心配する光士郎には優しいなぁ…しか出てこない笑下僕って言ってるの忘れてないって分からせてくれる
ギリギリセーフだった…… 純く〜ん…!!!;;(泣) ホントに今回も良かったッ!! 更新ありがとう!! 見た人絶対! この作品の感想・いいねをしましょう!
もう、神すぎませんか。続きがちょーちょー楽しみ〜✨️((o(´∀`)o))ワクワク