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遥香が着ているウェディングドレスは、2年前に小学校の裏山でピクニックをしていた時に葵から贈られてきた物だった。
「パパ…お母さん…今日まで私を育ててくれてありがとう。2人のおかげで何不自由なく暮らして来れたし、いつも温かい愛に包まれていて本当に幸せでした。能力者という普通ではあり得ない私を育てるのは大変だったと思います。そんな私を普通の子と変わりなく育ててくれた事、本当に感謝しています。パパ、お母さん…私を愛してくれてありがとう。私も2人を心から愛しています」
遥香は涙を流しながらお礼を述べた後、深々と頭を下げていた。
頭を下げたまま、静かに涙を流し続けていた。
すると美咲さんは、そんな遥香の元に歩み寄ると背中をさすってあげていた。
しばらくすると、遥香は顔を上げて僕らに笑顔を見せてくれた。
「遥香を育ててきて、大変だと思った事は1度もない。能力は葵を見てたから慣れてた。せっかく葵から受け継いだ能力なんだから、一生大切にしなきゃな」
「はいっ。これからも私は2人の子供です。もしも私が間違った道を歩み始めたら容赦なく叱って下さい」
「当然だ」
「容赦しないわよ」
「ちょ‥ちょっとは手加減してよね。でも…お願いします」
それから結婚式が行われるチャペルに移動した。
定刻の時間となり、新郎の平井さんが先に入場した。
次に新婦の遥香を僕がエスコートしながらバージンロードを通り、祭壇で待つ新郎に向け歩を進めた。
「あっ!?」
今更だが、思い出した事があった。
葵とキスをして見せられた未来の映像の中に、手に包帯を巻かれた状態で新婦をエスコートする男の姿があった。
あの時は何処かの誰かだと思っていたし、今までスッカリ忘れていたけど…‥
まさか、あの包帯男が僕だったとは…。
「何?」
遥香は歩きながら小声で聞いてきた。
「葵が、見てるよ」
「みたいだね」
遥香には、それがわかっているようだった。
そして新婦を新郎に引き渡すと挙式が始まった。
聖書の朗読、誓いの言葉、指輪の交換、誓いのキスと無事に式は進み、新郎新婦の退場となった。
建物を出ると遥香は後ろ向きになり、招待客に向かってブーケトスを行った。
ブーケは大きく弧を描き飛んでいった。
その時だった…。
ヒュュュュ――――――
突然突風が吹いたかと思えば、ブーケが再び上空に舞い上がった。
招待客のいる場所とは全く違う方へと飛んでいった。
それは…招待客から離れた場所に立っていた僕らの方に迷いなく飛んできた。
そしてブーケは美咲さんの手の中に…。
「あっ!? もらっちゃった…」
「・・・・・」