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ゆっくりと抜かれるモノに少しの快感を覚えて身体が小さく震える。彼は枕元に置かれていたティッシュで俺の腹に散った白濁を丁寧に拭き取ると、《ちょっと待ってて。》と額に軽いキスを落とす。隅まで追いやられた掛け布団を俺にかけ、めめは自分の後処理を始めるために背中を向けた、
──その時だった。
「…う゛、」
急にせり上がってくる弱い吐き気を抑えるように反射的に口を手で覆う。雰囲気に呑まれてすっかり忘れてた。俺今日めっちゃ量を呑んでたんやった。そんな中であれだけ身体を動かしたらそらそうなるわな…。
「えっ、康二!?」
「…あっかん…きもちわるなってきた、」
先ほどまでの甘い雰囲気はどこへやら。横になっていたらダメだと力の入りきらない上体を起こしてベッドヘッドに背中を預けると、《ちょ、えっ、とりあえず…》と彼はおろおろしながら傍らに置かれていた小さなゴミ箱を滑り込むようにして渡してくる。
「吐きそう?水いる?!」
「吐くかはわからん…でも水かお茶はほしい…。」
あっち、とダイニングの方を弱く指させば、下着だけはしっかり履きながら足早に向かっていくめめ。その背中を見送る視界がぐにゃりと歪んでくる。
(これほんま明日ダメなやつかも。 あれ、でも今日こんだけのんだってことは、おれオフやったっけ。)
思考も意識もふわふわする中、視界の端に先ほどの忙しない動きとは裏腹にとぼとぼと戻ってくるめめが入ってくる。心做しか、その表情は酷く落ち込んでいるようにも気まずそうにも見えた。
「めめ、…?どした?」
「えーっと、あの…、
冷蔵庫にあったお茶入れて、その後氷入れようとして間違えて水入れちゃった…。」
「なんっでやねん!?」
《水「か」お茶ってゆったやん、水「と」お茶ちゃうねん。何やねんお茶の水割りて。》条件反射でつい畳み掛けるように返したことで、最悪だった体調が奇跡的に紛れた。
「まあでも…うん、ありがとうめめ。それ飲む。」
「、うん。」
しょぼくれながらコップを渡してベッドに腰掛ける彼の背中を眺め、…俺この子についさっき初めてを奪われたんよな?とふと疑問に思う。渡されていたゴミ箱を定位置に戻してからめめお手製のお茶の水割りを少しだけ流し込む。拡がるルイボスの味が面白いくらいに絶妙な薄さで。
「…っふ、ふふ、」
「んー?」
未だにこちらをちらりとも見ず、不貞腐れ始めた姿が可愛いなぁなんて言えるはずがない。その代わりと言ってはなんだけど、言葉を置き換えて広い背中に向かって投げかけた。
「ありがとうな、めめ。俺ほんまに──めめのこと、好きやで。」
振り返っためめの綺麗な瞳を見つめながら、でもなぁ、と俺は心の隅で感じていたことを続ける。
「『愛してる』って言葉がなんか、まだしっくりこんのよ。」
「──どういう意味? 」
その瞳が、疑念と不安に染まっていく。…あれ、なんか誤解を生んだっぽい、かも?と思い、《ごめん、言い方がちょっとちゃうかった。》と直ぐに訂正する。
「俺な、何でめめの隣にいるといつも落ち着くんやろなって思ってて。」
「………、うん。」
「多分──多分やで?俺が上手く表現できんからアレやし、マジそのままなんやけど…その、今の俺には『ずっと傍にいたい』って気持ちが正解なんかな、って思った。」
《もちろん『愛』って大事な気持ちやけどね。っていう、ちょっと真面目な話。》と続けると、めめは真剣な顔で黙ったまま俺の隣に移動し、布団の上で同じ体勢を取る。俺のコップを手に取り一口だけ口にすると、遠くを見つめながら考え込むようにうーん、と暫く小さく唸り、静かに口を開いた。
「…確かに、隣にいると安心感ある。康二いつもうるさいけど。」
「おい何やそれ。」
「まあでもさ、俺はそれでも良いと思う。気持ちは後からでもついてくるものでしょ?俺はちゃんと言葉にして伝えていくから、康二が素直に受け取ってくれれば今はそれで──うん 、良いと思う。」
「うわぁ、狡いわー…。」
寄り添うような言葉にとく、と軽く跳ねる心臓。誤魔化しを兼ねていつも通りの調子で返せば、1拍遅れて彼の表情がまたいつもの優しい微笑みへと変わる。
めめがこちらを向いた。と思えば右手が左頬に添えられ、そのまま彼を直視する角度まで引き寄せられる。すりすりと撫でる親指。思わず目を閉じ、左手を上から重ねると、その温かさを堪能するように頬を擦り寄せる。
瞼を開けば、お互いの視線がかち合う。
ほぼ同じタイミングでゆっくりと顔の距離が縮まっていく。
「康二、愛してる。」
「うん。」
二人の吐息が混ざる。
「めめ、ずっと傍にいてな。」
「うん。」
唇が重なるまで、あと───…