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陸さん、やはり華子さんをとっても心配していますね✨ そして 自衛官を退役したエピソードを 明るく笑い飛ばす カラッとしていて 遠慮がない華子さんに興味津々....🥰
華子のことを心配してずっと一緒にいて話を聞いてくれる陸さん。自衛隊のことも名前も笑い飛ばす華子に興味津々⁉️重盛のことも綺麗になって見返してやれ‼️って今の華子に会えるのが凄い👊
そこで華子は納得した。
陸の身体がガッチリしているのは、陸が自衛官だったからなのだ。
「自衛隊って私よくわからないんだけれど、なんか飛行機とか海とか色々あるわよね? その中のどれ?」
「俺は陸自だ」
「りくじ?」
「陸上自衛隊だよ」
「……….」
華子はしばらく黙った後、次の瞬間キャハハと笑い出す。
「名前が『陸』だから陸上自衛隊にいたんだ…なんか笑える!」
「天職だろう?」
陸が真面目な顔をして言ったので、さらに華子は声を出して笑った。
それに釣られるように陸も微笑む。
「本当ね、まさに天職だわ。でもその『天職』とやらをどうして辞めちゃったの?」
「怪我をしたからだ」
「えっ? そうなの? どこを怪我したの?」
「肩だ」
「肩を怪我したくらいで辞めなくちゃいけないの? 自衛官って…」
「いや、辞めなくても仕事はいくらでもあったよ。でも射撃が出来なくなったからなぁ」
「射撃? えっ? 射撃した事あるの?」
「当たり前だろう。自衛隊だぞ!」
「へぇーそうなんだぁー、でもフフッなんだか可笑しいっ! 陸だから陸上自衛隊だなんて…キャハハッ」
華子はまだ笑っている。
そんな華子を見ながら、陸は思った。
陸が自衛隊を辞めた理由を人に話すと、大抵は同情的な目で見られる。
中には腫れ物にでも触るように接してくる人もいる。
陸自身考えに考えた挙句無念な気持ちで辞めたので、そういう態度で接して来られると逆に辛い。
しかし華子のような反応は初めてだった。
彼女はなんと笑い飛ばしたのだ。
そんな反応がなぜか新鮮で、陸は思わずフッと笑ってしまった。
華子の無邪気な笑顔を見ていると、自衛官を辞めた事など大した事ではないと思えてくるから不思議だ。
話が一段落したところへ料理が運ばれて来たので二人は食事を始めた。
お腹が空いていた華子は、あっという間にシチューを平らげた。
「すごく美味しかったわ」
「お気に召して良かったよ」
陸はそう言いながら、心の中ではこう思う。
(食欲があるなら、とりあえずは大丈夫だろう……)
実は、陸が華子を買い物や食事へ連れ回したのは、華子を一人にしない為だった。
一人にして、また自殺念慮を抱かれては困る。
踏切に入った時の華子の表情には、確実に死への決意が表れていた。
あんな事があってから、まだ数時間しか経っていない。
彼女を一人きりにしない方がいいと思った陸は、何かと理由をつけて華子を連れ回したのだ。
ショッピングが良い気分転換となり今の華子は落ち着いている。
しかしまだまだ油断は出来ない…陸は思っていた。
それから陸は手を挙げて、食後のコーヒーを持って来るようスタッフに頼んだ。
そして二人はコーヒーを飲みながらまた話しを始める。
華子は陸を相手に、愛人野崎の悪口を延々と吐き出した。
陸はそれを全部聞いた後に言った。
「それにしても、そいつはただの変態オヤジじゃないか。愛人を作るならもうちょっとマシな相手を選べよ」
「だってあの時は切羽詰まってたのよ。銀座の夜の世界は恐ろし過ぎて一刻も早く逃げたかったんだもの」
野崎の事を洗いざらい陸に聞いてもらいすっきりした華子は、今度は重森の話を始める。
てっきり結婚出来ると思って付き合っていた相手に、あっさり振られた事。
おまけに自分との事は遊びだと言われた事を悔し気に話す。
おそらく重森は今は医者になって、カフェの近くの慶尚大学病院で働いているだろうとも話した。
その後ハッとしてから言った。
「どうしよう! あいつがもしカフェに来たら」
「確かにあのカフェには大学病院の職員もよく来るな」
「やだっ! そんな場所で働けるわけないじゃない」
華子はそう叫んでパニックになる。
悲壮感漂うその表情からは、本当に困っている様子が伝わってきた。
しかし陸は落ちついた声で言った。
「見返してやればいいじゃないか」
「ハァッ? 今の私に医者として成功しているあいつを見返す事なんて出来る訳ないじゃない」
「いや、努力すれば出来るさ」
「そんな事どうやって出来るのよ! 絶対に無理!」
華子はイライラしながら言う。
「思いっきり綺麗になってやりゃあいいんだよ。君を捨てて後悔したと思わせるくらいにな」
陸の言葉を聞き、華子は何かを考えている様子だった。
しかしすぐに暗い表情になると悔しそうに言った。
「無理よ…私、あの頃よりも7キロくらい太っちゃったし、仕事はただのカフェ店員だし、昔のように綺麗に着飾る事も出来な
いし……爪だってボロボロ、髪もパサパサ、お肌だって……」
「そんなもん、努力次第でどうにでもなるだろう?」
「あなたは男だから分からないのよ! お金がないからエステにだって行けないのよ! 綺麗になって見返すなんて無理に決ま
ってるじゃない」
「まあ、そこで諦めるくらいなら、君はその程度の女だったんだな。まあせいぜい自分の事を負け犬だって認めてみじめに暮ら
せばいい」
陸がフッと笑って言ったので、華子は無性に悔しくなる。
「私だって見返せるものなら見返したいわよ! 大学生活の四年間を全て彼に捧げたのよ! それなのにあんな最後は酷すぎ
る…」
「医者の妻になれば安定した生活が保障されると思っていた君の打算的な考え方もどうかとは思うよ。ただその重森って男も相
当クソだと思う。遊びの女と四年もつき合うとかアホだろう? 俺だったら絶対にそんな馬鹿な事はしない」
「えっ? そうなの?」
「ああ」
「それはどうして?」
「だってそうだろう? 遊びの相手と長く付き合ったら相手に変な期待を持たせるだけだ。そんな残酷な事は俺には出来ない。
最初から遊びと割り切っているなら、短くあっさり終わらせないと」
「ふーん、そっかぁ……」
華子は納得したように頷く。
(もしやこの男、重森なんかよりも相当遊び慣れてる?)
華子はふとそんな風に思った。