そこで華子は少し考えた後こう言った。
「なんかやっぱり見返したくなって来たわ。このまま泣き寝入りするなんて私らしくないもの。ねぇ、どうやったらアイツを見
返せる? 男の人側の客観的な意見を聞かせてよ」
「そうだなぁ…そいつは結構な遊び人でプライドも高そうだから、振った女が自分と別れた後に綺麗になっていたら悔しいんじ
ゃないか? それプラス自分よりもハイスペックな男と付き合っていたらもっと悔しがりそうだな」
「なるほどね。じゃあ、とりあえず痩せなくちゃ! 綺麗になる以前にまずダイエットだわ」
「そうそうその意気! 良かったら俺が通っているスポーツジムを紹介するよ」
「すぐに紹介して!」
俄然やる気になって鼻息を荒くしている華子を見て、陸は笑いをこらえる。
(意外と素直で単純なんだな……)
天邪鬼で気が強く、ただの我儘女だと思っていた華子が一転してやる気を見せている。
それを見た陸は、華子は意外と根性があるのかもしれないと思っていた。
目の前でコロコロと色々な面を見せる華子を見て、陸は興味を引かれていた。
どれが本当の華子なのか? そこを追及してみたくなる。
そこで陸はあえて華子にこんな事を聞いた。
「本当は本気だったんだろう? その重森っていう奴の事」
「ち、違うわよっ! 私は医者の妻になりたかっただけよ」
「いや違うな。本気だったからこそ傷ついて、その後の人生が無茶苦茶になったんだろう? 俺にはわかるよ」
「違うわ! あんな男にもう未練なんてないの。ただね、私の一番いい時期だった四年間をアイツのせいで無駄にしてしまった
って思うと許せないのよ。だから見返す為に頑張る事にしたのよ」
「へぇ……まあ女の四年ってのは結構長いからなぁ」
「そうよ。私の四年間を返してって感じ!」
興奮気味だった華子はそこで一口水を飲む。
「やっぱり女って言うのは、結婚して安定したいものなのか?」
突然陸がそんな質問をしたので、華子は少し驚く。
「うーん、人によるんじゃない? 結婚願望が強い人もいれば、結婚という形で束縛されたくないって人もいるだろうし。でも
私は早く結婚したかったの。結婚して妻という安定した揺るぎない地位につきたかったのよ」
華子はそう呟くと、窓の外をじっと見つめた。
その憂いに満ちた表情に気付いた陸は優しく言った。
「居場所なんてのは、それ相応の時期がくれば必ず見つかるさ。だから焦らなくても大丈夫だ…」
思いがけず優しい言葉をかけられたので、華子は陸を見る。
そしてコーヒーを飲んでいる陸をじっと見つめた。
「そう言えば、あなたっていくつなの?」
「44」
「うわっ、おっさん」
「おっさんで悪かったな。でも口の利き方に気をつけろよ。これでも一応君の雇い主なんだからな」
「あっ、やば! 働く前からクビにしないでよ」
「さぁ、どうかな……」
陸がニヤリと笑ったので、思わず華子も笑う。
そこで二人一緒に声を出して笑った。
「そう言えば、あなたの事なんて呼んだらいいの? 社長?」
「陸でいいよ。みんなは俺の事を『陸さん』って呼ぶよ」
「ふーん、じゃあ『陸』でいいわね」
「呼び捨てかよっ!」
「だって今いいって言ったじゃない」
華子は小悪魔的にフフンと笑うと、楽しそうにコーヒーを一口飲んだ。
そのチャーミングな笑顔を見て、思わず陸の頬が緩む。
(まるで悪戯をしている子猫みたいな奴だな……)
陸はそう思った。
コーヒーを飲み終えると二人は店を後にした。
店を出てすぐに華子が陸に言う。
「ご馳走様!」
「どういたしまして」
陸は華子が素直に礼を言ったので少し驚いていた。
(やはり本来は素直な奴なのか……?)
それから二人は駐車場の車へと向かった。
コメント
3件
この二人、なかなか気が合いそう....🥰💞 華子さん、身体を鍛えて ちゃんと仕事もして、綺麗になって.... 重森なんか見返してやれ~‼️頑張って👊😆🎵
重森より陸さんの方が進展ありそうですねぇ頑張れ笑っ
華子の多面に振り回されても楽しそうな陸さん😊 ジムに通ってバイトして重森を見返す女になるチャンス👩✨✌️