テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
飛び交う火矢がレッドシャーク号の帆を燃やす。
ママ上が水魔法を使用して消火してくれるが、矢は雨のように降り注ぎ、甲板や船の側面にも突き刺さる。
「卑怯者どもめ、それでも騎士か貴様らは!」
ソニアが怒りの声を上げるが、ナハトが首を振る。
「あれ、多分騎士じゃないよ。船に乗ってる奴らから、きつい血の匂いがするし」
「多分暗殺者の仲間だな」
恐らくオクタスには汚れ仕事を担当する人間が存在したのだろう。それが奴らってことだ。
「恐らくヴェノムタランチュラです。オクタスにも毒蜘蛛のイレズミがありましたから」
「やっぱりか」
セレーネの言葉に別段驚きもない。ああいうテロ屋ってのは、権力持ってる人間の後ろに音もなくやって来るものだ。
海賊に偽装してくる辺り、奴らの卑怯さがにじみ出ている。
「おい、さっきからあたしの船から変な音してるぞ!」
ギィギィ……ゴゴゴ……。
ヨハンナの言う通り、船体から不吉な音が鳴り響く。
ジャガーはしゃがみ込むと甲板に耳をくっつけ、原因を突き止める。
「やばい、ターボ装置の回転負荷にスクリューシャフトがついてこれてない。このまま使い続けたらスクリユーがもげるぞ!」
「マジかよ!」
こんなところで船が停止したら、四方からの砲撃で蜂の巣にされるのは目に見えている。
だが、そんな中——
「ここで大丈夫です」
セレーネが静かに船首へと進み出ると、青の三叉槍ポセイドンランスを空に掲げた。
「大いなる海よ、悪しきものを大渦へと飲み込め! メイルシュトロームアビス!」
彼女が詠唱すると、聖槍が眩い輝きを放つ。
その光が海へと降り注いだ瞬間——
おだやかだった海が、突如として唸りをあげた。
轟音とともに巨大な大渦が発生する。
波が逆巻き、潮の流れが変わり、周囲の船は次々と渦の中へと引きずり込まれていく。
「操舵がきかねぇ!」
舵を握るヨハンナが必死に制御を試みるが、大渦の力に抗えず、船は回転しながら中心へと引き寄せられていく。
水しぶきが舞い上がり、船体がミシミシと悲鳴をあげる。
「まさか俺たちも渦に飲まれるのか!?」
「大丈夫です。スフィアシールド!」
セレーネが防御呪文を唱えると、青白い光が船全体を包み込み、瞬く間に半透明な球形のバリアが生成された。それまで船体を軋ませていたミシミシという嫌な音がピタリと止まり、レッドシャーク号は渦の中をまるで滑るように進み始める。
対照的に、敵の船は渦の激しい流れに抗えず、次々とミキサーのような海流に呑み込まれていった。頑強そうな軍船は船体ごと引き裂かれ、木片や金属片となって渦の中心へと消えていく。海面に投げ出された船員たちが、救いを求めて両手を伸ばしながら悲鳴を上げている。
ナハトが「うわぁ悲惨だねぇ……」と渦に吸い込まれていくタランチュラを憐れむ。
船員たちが恐怖に引き攣った表情のまま、無慈悲に大渦へと引きずり込まれていく光景は、さしもの悪魔ですら目を背けたくなる最期だった。
最後の軍船を飲み込むと、大渦はゆっくりと勢いを失い、静かな海へと戻る。荒れ狂っていた波も穏やかになり、嘘のように静寂が訪れた。
「やったな……」
239
ありんす
1,095
ねこなさま🐈⬛💘
7
す㍄
9
勝利を確信し俺が安堵の息をつくと、セレーネはふらりと膝を折り、その場にぺたりと座り込んだ。消耗しきったのか、肩で息をしながらもほっとしたように微笑んでいた。
「急に、腰が……」
「いや、よく戦った。これでオクタスも――」
しかし、その言葉を遮るように、見張り役のビアンが叫ぶ。
「カシラ! アクアレムの軍船が、今さら出てきやした!」
「ったく、全部終わった後に出てくんじゃねーよ」
まぁ、終わった後に援軍が来るのは、ゲームや映画でもよくある話だ。
俺も甲板から船を見ると、そこには旗艦クラスの、とんでもなく巨大な軍船があった。
通常は木製の船体が、全面を鉄で覆われ、側面には六門の大砲、さらに船尾にはジェットエンジンのような推進器が二基取り付けられている。
「バトルオーシャン号……一体、誰が乗って?」
セレーネが首を傾げたその瞬間、ビアンの声が再び響く。
「カシラ! 向こう、攻撃態勢に入ってます!」
「はっ?」
援軍かと思われた軍船は、突如大砲をぶっ放しながら、こちらへと距離を詰めてきた。
「なんだ、あたしたちのことを海賊だとでも思ってるのか!?」
「そうじゃねぇ、見ろ! オクタスの野郎が乗ってやがるぞ!」
ジャガーの指差す先を見ると、軍船の上に立つオクタスが、堂々と指揮を執っている姿が見えた。
「野郎……もう、恥も外聞も捨てて襲ってきやがったか」
「どうする? レッドシャーク号も、さっきの戦闘でターボは使えねぇぞ」
「なら、奴らが近づいてきたところを乗り込んで、近接戦に持ち込む!」
全員が身構えた、その瞬間。
レッドシャーク号が、不自然に大きく揺れた。
まるで岩にでも乗り上げたかのような衝撃——。
「なんだ?」
嫌な予感がして海面を見下ろす。
すると、海中を巨大な蛇のようなものが泳いでいた。青緑に光る鱗に覆われたその姿——恐らく海龍だ。体長は優に40メートルを超え、その巨体から伸びる背びれが水を裂きながら進んでいる。魚雷の如く進む海龍、その進路の先にはバトルオーシャン号。
「まさか……!」
次の瞬間——。
海龍は、迷いなく軍船へと体当たりを仕掛けた。
船体に衝撃が走り、竜骨が損傷したのか、バトルオーシャン号は大きく傾く。
まるで運悪く船の進路に入り込んだかのように見えたが——。
「違う、あいつ狙ってやがる!」
海龍は獲物を狙うサメのように、バトルオーシャン号の周囲を旋回している。
漆黒の海が不気味に揺らめいたかと思うと、次の瞬間──。
ドゴォォォォォン!!!
海水が天地を逆転させるかのごとく空へと舞い上がった。
その巨大な水柱の中から蒼き海龍が姿を現す。
青緑に発光する鱗に海水が流れ落ちる。金色の瞳が獲物を捉え、巨大な顎が開かれると、深海の瘴気が吐き出された。
「……ありゃリヴァイアサンか?」
ヨハンナが、かすれた声で呟く。深海の王、伝承の海龍リヴァイアサン。小説や物語に多く登場する架空の生き物だが、今目の前にいる生物は紛れもなく、ただの幻想ではなかった。
圧倒的な威圧感とともに、海の覇者が現実のものとしてそこに存在していた。
海龍は悠然と身をうねらせながら、海面にそびえ立つ。長大な尾が海を叩くたびに、津波のような波が船を襲った。無数の牙が並ぶ口から唸るような咆哮が放たれると、それだけで海が震え、雲が吹き飛ぶ。
オクタスは怯えから、海龍に攻撃指示を行う。
騎士たちが大砲や火矢、火炎球などの魔法を船から放つも海龍は平然と海に聳えたままだ。
そして次の瞬間、海龍はバトルオーシャン号に絡みつき、ヘビが獲物を絞め落とすように、その巨体な竜躯で船体を締め上げていく。
「ぐあああああっ! やめろおおっ!!」
オクタスは必死に抵抗するも、船はバキバキと音を立てながら崩壊し、ついには粉々に砕け散った。
「なんだ、あの海龍は……?」
俺は、まるで味方するように現れた海龍に困惑しながら、その圧倒的な存在感にただ息を呑んだ。
コメント
1件
うわっ第52話、めっちゃバトル回じゃん!!🔥🔥 セレーネの大渦魔法スゴすぎて震えたし、海龍リヴァイアサンまさかの登場に鳥肌たったよ…!!🐉💦 オクタスが軍船で襲ってくる展開も熱かったけど、海龍が味方っぽい動きしてるの気になる〜!? 次回どうなるの?!もう待ちきれない!!😭💕