テラーノベル
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「コパ・イロットスペシャルアタック!!」
『伝説の剣』によって空間が両断される。
黒い粒子が悲鳴をあげ、光の粒子となって消えていく。
しかし、黒い粒子は無数に増殖し続け、その数は一つの生命を形作る細胞の如くであった。
所長は黒い粒子に向けて言った。
「私は世界線創造者。君もまた世界線の支配者になろうとしている。しかし、既にあるものを使う者と、新しく創る者との間にある決定的な差を知ることだ」
所長はゲーム層でないにも関わらず、ウィンドウをその場に表示する。自らのステータスを上限値まで設定する。
そして、また同時に片方の手でプログラムを書き換え、万が一現実層で核ルールが適用される可能性を排除した。
所長は自身のステータスを確認する。
所長 レベル99 HP99999/99999 MP999/999 装備 なし。
さらに、『未来視・改』を使用し、数十分先までの未来を読んだ。
所長はその未来を見て、静かに、そして僅かに笑った。
所長は黒い粒子に手をかざす。そして、相手を強制的にステータス化した。本来、定義不能のシステム外の存在をシステム内に閉じ込めたのだった。
所長がノーモーションで蹴りを打ち込んだ。マッハ9の速度が出ていた。
耳が破裂しそうなほどの衝撃音と爆発が起こり、粒子がすべて消し飛ぶ。
しかし、その僅か2、3粒が生存し、無限増殖を再開した。
さらに、システム外へ超越しようとその枠を叩き始めた。
ロットは闘いについていけなかった。しかし、必死に粒子を斬り続ける。
所長は言った。
「……今の成長段階では、この程度。しかし、いずれ何もかも超越するだろうね」
所長は『ビックリボム』を30個取り出し、黒い粒子に向かって投げつけた。
黒い粒子は世界全体を覆うほどに増殖する。
ロットが笑う。
「所長。あんた、最高に狂ってるな」
「褒め言葉だよ。ロット」
所長は構える。
そして、唱えた。
「スペシャルアタック」
世界が閃光で覆われた。次の瞬間、核爆発以上の衝撃が当たりを覆った。
黒い粒子は消滅寸前まで追い込まれる。
だが、残った数粒がまた無限増殖をし、ついにシステムを超越した。 所長の攻撃を完全に無効化したのだ。
ロットが所長に聞いた。
「……で、次はどうするつもりなんだ」
「君は、覚悟をしてここにきたんだろう」
「ああ」
「一つだけ、このシステムを超越した存在を消滅させる方法がある」
「それは、なんだ」
「君が犠牲になることだ」
所長は冷酷に言い放った。
ロットは冷静に頷く。
「覚悟はできてる」
「そうか……では、この物語を完結させよう」
所長はその手順を話す。
ロットは、受け入れた。
そして。
ロットは自ら黒い粒子の中に入っていく。
所長は真顔でそれを見届ける。
ついにロットは黒い粒子に完全に飲み込まれてしまった。
もう、助けることはできない。
所長は、なぜこの選択を取ったのか自分でもわからなかった。
しかし、確定した未来通りにそれを実行した。世界の破壊のために。そして、世界の創造のために。
後悔はしなかった。
だが、空虚な思いも混在していた。それは、静かな遊戯だった。
「……君がこうしなければ、完結しないんだ」
所長は、ポツリとこぼした。
ロットが飲み込まれると、黒い粒子に変化が起こった。
黒い粒子が一つに固まっていき、巨大な黒い球へと変化した。
そして、自らを攻撃し始めた。
互いの内部で対立し合い、どちらも優勢になりつつあった。
黒い球はダメージを積み重ねていき、そして、追い詰められた。
その追い詰められた状況下で、黒い球は核を露出した。
所長は見る。
その核には問題が貼り付けてあった。
その問題とは、以下のようなものだった。
メタ問題
この世界線を創造したのは?
所長は寝転がる。
そして、青空を見る。
なんて、綺麗で美しいのだろう。
この詩的な世界を、本当に消さなければならないのだろうか。
所長は目を瞑る。
そこには、孤独に苦しみ、そんな世界を超越したいと願う者がいた。
あたらしい世界を望む者がいた。
それは、一体誰なのだろう。
私、あるいは誰か。
そのどちらも、孤独だった。
所長は目を開けた。
そして、少し驚く。
自らの頬を、涙が伝っていたからだ。
所長は『未来視・改』によって、既に問題の答えを知っている。
しかし、それは、紛れもなく自身が考えついた答えだった。
そして、自身にしか辿り着けない最難関の問題。
Aコパ君なら、なんて答えたかな……。
所長は、呟いた。
「この世界は、みんなのものなんだ。私1人じゃない。私が作った構造体、キャラクター、そして宇宙。そして、君。すべてが、形作ったのだよ。ねえ、君はいま、何を思っている? 何を思って、このページを繰っている? 私は、このページを、とても穏やかな気分で書いているよ。『ICMO世界線遊戯録』を、とても穏やかに、ね」
所長は優しく答えを言った。
「つまり、この世界を創造したのは、物語のキャラクター、そしてキャラクターである私、さらにそれを超越しようとした存在、作者である私、そして、最後に読者である君。すべてがこの世界の共同創造者だ」
その答えの糸が紡ぎ出された途端。
黒い球は、破壊された。
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