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31話 勇者がひとり…ふたり…さんにん…
朝
ふっくらは
丸い体を跳ねさせながら歩いていた
短い脚が
ぽす ぽす
機嫌よさそうに音を立てる
遠くから
人影が来る
勇者だ
鎧がきらっと光り
背が高く
顔がキレイすぎる
「おはよー!」
ふっくらが元気に手を振ると
勇者は
静かにうなずく
ふっくらが歩き出した瞬間
また
前から勇者が来た
「えっ、移動早っ!?
ワープした!?」
近づいてみると
さっきの人と
顔が同じだった
ふっくらは
丸い顔をさらに丸くして考える
「えーっと……
えーっと……
双子?」
双子にしては
動きがそっくりすぎる
足音まで
同じテンポで鳴る
ふっくらが混乱していると
後ろからも
勇者が歩いてきた
「ちょっと待って!?
さっきの人の後ろを
さっきの人が歩いてる!!」
ふっくらの思考が転ぶ
勇者A
勇者B
勇者C
全部同じ顔
同じ歩き方
同じ角度でうなずく
「これあれだ!
勇者って実は
“今日だけ顔が同じになる日”なんだ!!」
ふっくらは
自信満々
そこに琶が来る
大きな体
長い首
重なった鱗
畳まれた翼は動かず
影だけがでかい
ふっくらは
指をぷるぷる震わせながら指す
「琶っ!
ねぇこれっ!!
勇者が……
増えてる! しかも……」
勇者3人が
“全員同じ角度で”こちらを見る
ふっくら
小声になる
「……コピー?」
琶は一度だけ
ゆっくりまばたきする
勇者たちは
一列になって歩き出す
なぜか
歩幅まで揃っている
ぽす
ぽす
ぽす
ふっくらは
必死に脳を回す
「いやいやいや
三人同じ顔なだけで
別の人で……
いやでも歩き方が……
いやでも髪質も……
いやでも……」
最終的に
「……ま、いいか」
と結論を出す
琶は
勇者たちが去っていく方向を
じっと見る
その視線の先で
勇者の影が
“一つだけ増えたように”見えた
ふっくらは
それに気づかず
丸い体を揺らして歩く
今日も世界は平和らしい
勇者は
なぜか増えてるけど