6話 魔法道具 ダンジョンツクる
午前
ふっくらは丸い体を揺らしながら
巨大な木箱の前に立っていた
短い脚がそわそわ動き
腹が好奇心で前につき出る
ふっくら
「これが……ダンジョンツクる……?」
横では琶が
その箱を軽くつついていた
大きな体
長い首
重なった鱗
爪が箱のふたを軽く押し上げると
中から光がふわりと漏れた
琶
「使い方は簡単だ。
“道を作るだけ”だ」
ふっくら
「ふむふむ……」
琶が装置に触れると
地面に光の線が走り
数秒後には本物の通路が出現する
ふっくら
「おおおお!!
すごい!!!」
丸い体がテンションでぶれた
琶は無言で
その通路をいきなり急カーブに変える
ふっくら
「えっ、なんで曲げたの!?
曲げる必要あった!?」
琶
「読者が飽きる」
ふっくら
「読者のため!?
わたしの安全より読者先!?!?」
琶はさらに操作し
落とし穴を作った
ふっくら
「ちょ!?
それ絶対わたし用の罠でしょ!!?」
琶
「……踏んでみろ」
ふっくら
「やだよ!!
言い方が怖い!!」
琶は余裕の表情で
ふっくらの背中を軽く押す
ふっくら
「ぎゃあああ!!?」
丸い体が転がり
落とし穴の手前でぴたりと止まる
琶
「……踏まなかったな」
ふっくら
「踏ませようとしたよね!?
いま絶対押したよね!?!!?」
今度はふっくらが操作する番になった
装置にぽすっと丸い手を乗せると
通路が適当に曲がり
宝箱が次々に生成される
宝箱
宝箱
宝箱
ふっくら
「どう!?
なんかダンジョンっぽい!?
ほらいっぱい置いたよ!!」
琶
「……誰が開けるんだ、この数」
ふっくら
「読者とか?」
琶
「読者は宝箱を開けに来ない」
ふっくら
「なんでそんな冷静なの!?」
ふっくらは楽しくなったのか
さらに宝箱を増やし
道をねじ曲げまくった
通路はもう迷路ではなく
“悪い夢の地図”のようになっていた
琶は冷静に罠を追加する
壁から突然の風
床のきしみ
意味不明な鳴き声が出る石像
ふっくら
「ねぇ琶、なんでこんなホラー要素入れたの!?
これもう遊びじゃないよ!?」
琶
「温度調整だ」
ふっくら
「なにその理由!?
読者のため!?
世界観のため!?
どっちなの!!?」
しばらく二匹が遊び続け
気がつけば通路は複雑すぎて
どこが入口か出口かわからなくなっていた
ふっくら
「ねぇ琶……
帰り道……どこ……?」
琶は静かに周りを見渡す
巨大な体の影が
奇妙な通路に揺れながら落ちる
琶
「……知らんな」
ふっくら
「知らんな!?
あんた作ったでしょ!!?
わたしもめちゃくちゃにしたけど!!!」
琶は軽く首を傾け
読者の方をちらりと見る
「……読者、案内はできるか?」
ふっくら
「読者に丸投げしないで!!
わたしたちの問題!!!」
二匹は
作ったはずの通路で迷い始めた
意味はない
学びもない
楽しそうで困った一日
遠くの暗がりで
風のないのに
何かが動いた気がしたが
ふっくらは気づかず
丸い体を転がして進んでいった







