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7話 今月の紙芝居ニュース
夜
ふっくらは丸い体を地面に沈め
短い脚を前に投げ出していた
腹がふよんと揺れて
今日のお菓子をしっかり抱えている
琶が紙芝居の枠を立てた
大きな体
長い首
重なった鱗
畳まれた翼が
焚き火の光を半分奪い
影がふっくらをすっぽり包む
琶
「今月のニュースだ」
ふっくら
「こ、こわいのじゃないよね……?」
琶は一枚目をめくる
そこには――
二十三の集落が
まるで塗りつぶされたように
“形だけ”残されていた
建物の輪郭
道の線
人影は描かれていない
ふっくら
「……え?
これ……え??」
丸い体がぷるっと震える
琶
「落ちたらしい」
ふっくら
「軽い言い方しないで!?
落ちたって何!?
建物が!? 人が!?!?
全部!?!!?」
琶はふっくらの動揺をよそに
さらりと次の紙をめくる
そこには
4話で登場した
“同じ顔の勇者”が立ち尽くしていた
剣も同じ
顔も同じ
姿勢も同じ
ただ
周囲の空気だけが歪んでいるように見える
ふっくら
「ええええ……
また同じ人だよ……
なんで……?」
琶
「量産は効率がいい」
ふっくら
「言っちゃだめなやつ言った!!
読者に見せちゃだめな真相をさらっと言った!!!」
さらに琶が紙をめくる
――何も描かれていなかった
ふっくら
「……え?」
琶はページをもう一度確認する
裏も見る
表も見る
琶
「……結果はない」
ふっくら
「えぇぇぇぇ!?
戦いの部分ないの!?
ここ一番盛り上がるとこじゃないの!?!?」
琶
「読者が想像するだろう」
ふっくら
「読者に丸投げしないで!!
毎回丸投げがすぎるよ!!!」
ふっくらは動揺しながら
抱えていたお菓子を落としてしまう
ぽとっ
ふっくら
「あっ……」
琶はそのお菓子を一瞥し
なぜか読者のほうを見る
「……拾うか?」
読者へ問いかけているように
ふっくら
「読者に聞かないで!!
わたしのだよ!!!」
琶は首をわずかに傾け
最後の紙を閉じる
「結果が描かれないのは……
結果がまだ“定まっていない”からだ」
ふっくら
「どういう意味!?
どういう意味なのそれ!!
怖いよ!!!」
琶はふっくらの丸い頭を軽くつつく
「気にするな。
おまえが気にしても変わらん」
ふっくら
「読者も気にしちゃうよ!!
もう気になっちゃってるよ!!!」
焚き火の影が長く伸び
紙芝居の枠の後ろで
なにか“動くもの”が見えた気がしたが
ふっくらは気づかず
落としたお菓子を拾って
もぐもぐした
ゆるく
ふざけて
なのにどこか
嫌な静けさだけが残った夜だった
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