テラーノベル
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#オリジナルストーリー
ナルト大好き👑🤲
「イヴィル。来週には学園に入るための試験があるな」
晩飯時。イヴィルの父であるハインリヒ・ヴィルサレムはワインを傾けながら俺に言う。
リーンとモリア、フレアの三人に師事を仰いでから2年が経っていた。
気が付けば、イヴィルの年齢は12歳になった。
この世界での12歳は学園に入る年を意味している……つまり『月と魔法は踊る』の本編が始まるという意味だ。
「えぇ……成果をご期待ください」
この二年間、死に物狂いで努力した。
剣も、魔法も、勉学も。
万が一、原作の知識と想定外なことが起きても対応できるように。
時折、アリスが俺のところに遊びにやってくるせいで、もてなしをする羽目になっていたが……現状として俺が今できる限りの準備は整えてきた。
その目的はただ一つ。
イヴィルの処刑という未来を回避するため。
もちろん、努力が正しく実るとは限らないことは重々承知している。
だが、俺自身もう誰かに後れを取るつもりはない。
「くっくっく……成果に期待か。イヴィル、お前が学園でどのようなことを成し遂げるのか、楽しみに待っているぞ。なにせ、あの王国最強のお墨付きだからな」
ハインリヒは笑いながら言う。
訓練所を使うにあたり、ハインリヒの許可は取ってある。
元々はモリアだけのつもりだった。
モリアに関しては、金銭を払う代わりに外部の講師という形で公爵領に来てもらっていたから。
しかしリーンに関しては報酬は払っていない。
リーン自ら講師料の受け取りを拒否したから。
とはいえ、ギルドは言い方を変えれば完全に外部の組織だ。
どの領地にあたったとしても、国王から直々にある程度の権限が与えられている。
それをよく思わない貴族もいるのだが、意外にもお父様はすんなりと許可を出した。
さすがに何もないのは遺恨が残るだろうから、この2年間は貴賓という形で受け入れていたけれど。
しいて言えば、俺に付いているメイドのアンナも一緒に剣を習ったのは意外だった。
アンナが強くなる分には俺のできることも増えていくから、嬉しい誤算ではあったが別にいい。
「それで? いつ頃に公爵領《ここ》を出ていくのだ?」
「そうですね。明日には出ようかと」
ヴィルサレム公爵領から学園がある王都まで馬車で走らせて5日ほどかかる。
前日は学園までの道を把握しておきたい。
備えることに損はない。
「……他の者への挨拶は済ませたのか?」
「いえ、これからしようかと。何事も挨拶は大事ですので」
小さなことかもしれないが、挨拶をするかしないかで円滑に進むものもある。
こういうものは得てして積み重ねなのだ。
「そうか」
ハインリヒは短くそう言った。
沈黙が流れる。
俺はハインリヒが何か言いたげなそんな空気を察して俺はハインリヒの言葉を待った。
「……何かあったら、私を頼るがいい」
ハインリヒはぶっきらぼうに言った。
やっぱり、イヴィルは愛されている。そう感じた。
「ありがとうございます」
その申し出を使うかどうか分からないが、お気持ちは有難く受け取っておこう。
俺は子を持ったことはないが、きっと親とはそういうものなのだろう。
「それでは明日に備えますので、俺は一度失礼します」
俺は仰々しくお辞儀をした後に、部屋を出る。
「ふぅ……いつの間にか。立派になったものだな」
部屋を出る直前に聞こえたハインリヒに呟きは微笑ましく感じたのであった。
* * *
「イヴィル様。どうかご達者で」
翌日の朝。出発する馬車の前で俺は世話になったやつらに囲まれていた。
俺に同伴するのはメイドのアンナだけ。
昨晩は世話になった者に挨拶を済ませた。
俺がイヴィルに転生してから2年の月日しか経ってはいないが、いざ公爵家の屋敷を離れるとなると少し名残惜しさを感じる。
世話になったやつに挨拶をする度に後ろ髪がドンドン引かれていくような……そんな錯覚がする。
「うおおおおん!! イヴィル君!! 明日からいなくなるのかい!? 僕は寂しいよ!」
リーンは泣きながら俺を抱きしめる。
「リーンさん。そこまでにしましょう。ほら……イヴィル様はものすごく嫌な顔をされていますよ?」
「そ、そんなことはないよね!?」
モリアはリーンを嗜めるが、リーンは首を左右に振る。
「正直、暑苦しい」
「なんてことを言うんだい!! 僕も絶対王都に行くからね!!」
「ははは……ご心配おかけしてすまないな」
俺は苦笑いをする。
リーンは月と魔法は踊るにおいて、本来主人公サイドの人間だ。
当初は何故俺に教えようと思ったのか疑惑の念を抱いていた。
だがリーンに色々と教えてもらったこの2年はかなり充実したものとなった。
悔しいがそれは事実だ。
「まぁまぁ、今生の別れじゃないんですから……寂しくはありますけどね」
フラムの瞳は少し潤んでいた。
「フラムから学んだことはとても大きかった。またこっちに戻ってきた時には色々と教えてくれ」
「私で良ければ、是非」
フラムがそう笑っていた後、
リーンは真面目な顔をして言う。
「それにしても、君は本当にすごいよ。剣術だけなら僕を上回った。まさかこの2年の間で、僕の膝が土に付くなんて思ってもいなかったよ」
結局のところ2年の間で、リーンに一本取れるようになったのは、最期の1ヶ月になってからだった。
ただ結果として、リーンから色々な技術を盗めた。この経験は大きい。
「次に会う時は、圧倒的な実力差を見せてやろう」
俺がリーンにそう言うと、
「そうなる時は近いかもね。君は日を追うごとに成長しているから。僕も追いつかれないように頑張るよ」
そうはいうが、リーンに教えてもらっている間、お互い魔法の使用を制限していた。
いつかお互い魔法込みで万全の状態で戦ってみたい。
できれば、俺とリーンが友として。
お互い敵として認識して、殺し合うことがないことを個人的に願う。
「それにしても……イヴィル様は私の技術を完璧に会得されましたね。大したものでありませんが、皆伝祝いに受け取って下さい」
モリアは一本の刀を俺に渡す。
「東方の地で作られた『刀』という武器です。銘は影虎と言います。今のイヴィル様なら用意に扱えるでしょう」
「影虎か……ありがたく頂こう」
影も闇も近しいからな。
個人的に良い名前だと思った。
「とんでもございません。イヴィル様に師事できたこと、誇りに思います」
モリアは笑顔で言う。
「イヴィル様……もし良ければ今後もオススメの本をお送りしてもよろしいでしょうか……?」
「カメリアか。もちろん頼む」
「本当ですか!?」
カメリアは嬉しそうな声をあげる。
「カメリアが俺が読みやすいように本を用意していたことは知っている。それに……お前が用意する本はどれも興味深かったぞ。改めて感謝する」
「感謝だなんて……なんてもったいないお言葉……!」
カメリアは少し赤い両頬に手を添える。
別にもったいないなんて思ったりはしない。
ポジティブな言葉はいつか良い影響を持って自分に帰ってくるから。
「イヴィル様。そろそろです」
メイドのアンナは告げる。
「それでは皆の者……行ってくる」
俺は馬車に乗り込む。
そうして馬車は走り出し、屋敷を離れていく。
「待ってろよ。月と魔法は踊るの主人公。原作通りにはいかないぞ」
どんな状況でも俺は負ける気がしない。
あぁ、来週からの学園が楽しみだ。
そう思いながら、遠ざかる公爵家の屋敷を眺めるのであった。
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