テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#普通
野々さくら
543
805
44
ありあ
159
すると、それまで黙って信愛の様子を見ていたさくらが、不意に口を開いた。
「ちょっと信愛?」
「なに?」
「もしかしてさ、千秋さんの魂に
刻まれた記憶を見ようとしてない?」
さくらは不安そうな眼差しを信愛へ向ける。
「そ、そうだけど・・・」
その返事を聞き、朝陽も心配そうに問いかけた。
「大丈夫なんですか?それ」
「お母さんからも見るの禁止されたんでしょ?」
さくらの言葉に、信愛は少し気まずそうに視線を逸らした。
「それはそうなんだけど」
「今日会ったばかりの縁もゆかりもない霊のために
信愛が危険犯してまでやってやる必要あるの?」
さくらは信愛や千秋を責めたいわけではない。
ただ、友達として危険だと分かっていることを、黙ってやらせるわけにはいかなかった。
「言いたい事は分かる。けど・・・」
信愛が言葉を濁すと、朝陽がある方法を思いついたように口を開いた。
「だったらこの前、美月先生の弟さんに
やった時みたいに、霊気の結合をしたらどうですか?」
朝陽は続ける。
「それなら霊感ないTAMAYAさんでも
千秋さんを目視できますよね?」
「そうだよ!無理して記憶見なくても──」
さくらも賛同するが、信愛は首を横に振った。
「けどそれにはTAMAYAさんの協力が必要なの!」
そして、千秋から聞いた話を思い返しながら続ける。
「あの時は想いを伝えたいって双方合意の上だった」
だが、今回は事情が違う。
「千秋さんから聞いた通りだとするなら
TAMAYAさんは絶対に協力してくれない」
「確かに前とは状況が違うかも知んないよ?
でも友達として危険な行為だとわかってて
黙ってやらせるほどウチらバカじゃないからね?」
さくらの言葉に、信愛は何も返せなかった。
「さくら・・・」
その時だった。
それまでずっと沈黙していた龍河が、静かに口を開く。
「だったら手紙はどうだ?」
「手紙?」
信愛が聞き返す。
「白縫さんは千秋さんの声が聞こえてんだろ?」
「は、はい・・・」
「だったら千秋さんの声を君が聞いて
それを文字起こしすればいいだろ
簡単に言えば、手紙の代筆だよ」
「でもそれだと──」
信愛は何かを言いかけたが、そんな彼女の思いを見透かしたように、龍河が被せる。
「言いたい事は分かる。千秋さんの声じゃない
そう言いたいんだろ?」
信愛は黙ったまま、小さくうなずいた。
「それに白縫さんは、『文字』が持ってる
『本当の力』にまだ気づいてない」
「文字の本当の力?」
信愛が戸惑いながら聞き返す。
「文字ってヤツはな、時に
言葉以上の力を発揮するもんなんだ」
「言葉以上の?」
「ああ・・・」
龍河は静かにうなずく。
「まあ、これはあくまで文字扱う
仕事してる俺個人の自論でしかないんだがな」
そして、どこか遠くを見るような目で言葉を続けた。
「文字ってのは不思議な力を秘めててな
言葉以上に、人の心に響く事があるんだ」
龍河の言葉に皆が耳を傾ける。
「文字には、感情や想いを丁寧に、繊細に紡ぐことで
人の心を動かす魔法みたいな力があるんだよ」
龍河の言葉を、信愛は黙って聞いていた。
「それに言葉だと、その瞬間だけの思い出になるが
手紙だと捨てたりしない限り半永久的に残り続ける」
龍河は穏やかな口調で続ける。
「だから手紙だとしても、千秋さんの
気持ちは十分伝わると思うぞ?」
少し間を置き、龍河は言い直した。
「いや、むしろ手紙の方が伝わると
言っても過言じゃない」
その言葉を聞き、信愛の表情から少しずつ迷いが消えていく。
「そう・・ですよね・・・」
そして、自分の行動を振り返るように呟いた。
「私、ちょっと冷静さを見失ってました・・・」
「いや、いいんだ」
龍河はすぐにそう返した。
「いつだって冷静に!なんて
そんなの理想論だからな」
誰だって焦って先走ることもあれば、判断を間違えることだってある。
そういう間違いの積み重ねの先に、成長という物があるのだ。
その言葉が、信愛の中に静かに染み込んでいく。
「ありがとうございます」
信愛はしっかりと顔を上げた。
もう、その瞳に先ほどまでの迷いはなかった。
「私がやるべき事が見えてきました!」
そして、決意を込めて言葉を続ける。
「私・・千秋さんの想いを手紙にします」
「ああ・・・それがいい」
龍河は満足そうにうなずいた。
「つーか、それが出来るのは
白縫さんしか居ねーからな」
「はい! 私──」
信愛は力強くうなずく。
「千秋さんとTAMAYAさんの架け橋になります!」
その宣言を聞いた龍河は、背中を押すように声を上げた。
「そう!その意気だ!」
コメント
1件
読み終えたわ! さくらと朝陽が本気で信愛のこと心配してるのが伝わってきて、友達っていいなって思った。でも龍河さんの「手紙の代筆」提案、めっちゃ良かったな。文字だからこそ伝わる想いがあるって、確かにそうだよな…。あの場面で信愛が迷いから決意に変わるところ、熱かった🔥 信愛が「架け橋になります」って言い切ったのは本当にカッコよかった。次、どうなるんだろ…楽しみ!