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信じられない光景に真紀は固まった、足がガクガクして冷汗が止まらない
―バレた!終わった―
途端に真紀の心の中にジェニや藤子神崎広告代理店のみんなの顔が浮かんだ
自分がヘマをしたから・・・これでみんなに迷惑がかかる、ただ良い仕事をしたかっただけなのに
真紀は覚悟をしていたのでグッと唇を噛んだ、真紀を見つけた麗華が「あー♪」と言って両手を広げて真紀の方に身を乗り出した、咄嗟に真紀は麗華を宗一郎からひったくって、まるで銃でも構えられているかのように距離を置いて離れた
赤ん坊を庇って抱いて宗一郎を怯えた目で見つめる、しかし宗一郎は身動き一つせず、無言でこちらを睨んでいた
「に・・・睨まないで下さい」
「睨んでいない、俺は生まれつきこーゆー目つきなんだ」
やがて真紀が真っ青な顔で宗一郎に言った
「おっ・・・!お願いです!これは私が勝手に単独でやった事なんです!私が勝手にこの子を連れてきて勝手に一人でここで作業していたんです。ジェニさん達には何の非もありません」
「お願いしますっっ!」
真紀は最後にもう一度勇気を振り絞った
「き・・・今日中に辞表を出します、私が辞めます、ですから神崎広告代理店のみんなを解雇なんてしないでください。私が辞めますからっっ!」
宗一郎は先日ここでジェニや藤子がいたことを思い出した、ジェニといい、この社員といい、神崎広告代理店の面々はとても結束力が強い
そして社員を守ろうとする気概はあっぱれだ、おそらく彼女達の事だ、守衛や受付嬢達もうまく抱きこんでいるのだろう、でないと、ここに彼女一人でうまく誰にも見つからずにいるなんて無理な事だ、宗一郎は答えた
「誰を解雇するかは、人員削減チームがこれから決めることだ、俺に言われても権限はない」
くっきりした黒い眉が上がる、それを聞いて真紀の瞳がうろたえている
二人は身動きひとつせずにらみ合った・・・彼に睨んでいないと言われたって、恐ろしく感じる、やがて宗一郎が口を開いた
「とにかく君の処分をどうするかを考えるよ、明日いつも通りここに8時半に出社するように、子供を連れてきても構わない、それまではここで俺に会ったことを誰にも言わないように!」
そう言い残して宗一郎は暗い資料室を去った
.。 .:・.。. .。.:・
宗一郎が社長オフィスのドアをノックしようとしたら、中から竜馬の怒鳴る声がしてきた、今まで冷静沈着な竜馬がこんなに社長室で怒鳴っているのは珍しい
そこで少しだけ愉快な気持ちになって、口元を緩める
そうだ、コイツをこれだけ怒らせるのは神崎広告代理店の連中だけだ、今までメビウスでは社長の彼に逆らうような危篤な社員は誰一人いなかった
竜馬は社員はロボットのように自分の命令に従って働くのを好む、社長オフィスに入ると、竜馬が目の前で檻に入れられた熊のようにスーツ姿でウロウロしていた、明らかに苛立っている
それを眺めながら宗一郎は向かいのソファに座った、大学時代にカレッジでコイツに声をかけられてからの付き合いだ、かつての悪友は今では総合商社のCEOとなり、周りには優雅で威厳があって卒がなく、そして無情のクビ切り社長と言われている
急速に発展する商社メビウスで、苦楽を共にしてきただけに、コイツがこれほど苛立っているのは珍しい、竜馬が総一郎を見るなり唸った
「教えてくれっ!日本語が通じないアイツら神崎広告代理店をどうやって教育したらいいんだ?今朝なんか会社にアイロンを持ってきていた社員がアイロンの電源を切り忘れて、それがリサイクルボックスの段ボールに火が着いたんだ!!ボヤ騒ぎでスプリンクラーが作動したんだぞっ!」
竜馬は手振りを交え、宗一郎に訴える
「一人ずつ持ち物検査でもしたらどうだ?風紀委員を立てるか?バカバカしい!なぁ、どうしてスタバはこんなに毎月メニューが変わるんだ?コーヒーはコーヒーだろう」
社長デスクにある1階のスターバックスのメニュー表を流し読みしながら宗一郎が言う
「お前はアイツらがどれほどいけ好かないヤツらかわかっていないんだっっ!神崎ジェニはじめ、まったく僕の言う事を聞きやしない!!」
宗一郎は理解を示す様に一度頷いた
「だったら、どうしていつも会社を買収するときは徹底的にリサーチするお前が今回はしなかったんだ?」
竜馬がさらにイラただしく歩き回る、どうやら宗一郎の質問には答えたくないらしい
「疲れている所申し訳ないんだが・・・神崎広告代理店の社員について、報告しないといけない事があるんだ」
宗一郎が言う
ハァ・・・「言えよ!アイツらのことはもう何を聞いても驚かないぞ」
ドサッと社長椅子に座り込み、竜馬はハンカチで額を拭った。そこに宗一郎が竜馬にトドメを刺す様に言った
「アイツらは資料室に赤ん坊を隠している」
「なんだってっっ?!」
竜馬は座ったばかりの社長椅子から飛び上がった
コメント
1件
いやー、第22話、めっちゃ面白かったです!真紀が麗華を抱きかかえて宗一郎から距離を取るシーン、ものすごく緊張感があって手に汗握りました。自分が全部悪いって辞表を差し出す覚悟、かっこよかった…。しかもそんな覚悟に対して宗一郎が「子供連れてきていい」って意外な優しさを見せて、その後の竜馬との温度差がまた笑える。ラストの「赤ん坊を隠している」で竜馬が飛び上がる展開、最高でした!続きが気になります!