テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
56,210
真冬のロケ現場。ベンチコートを着ていても震えが止まらない気温の中、待ち時間の佐久間大介は小刻みに震えていた。
「さ、さっむ……! マジ無理、凍る……!」
「うっせーな佐久間。震えすぎだろ」
隣に立っていた岩本照が、呆れたように笑う。
彼は筋肉量が多いせいか、あるいは自家発電しているのか、佐久間より薄着なのに平気な顔をしている。
「だって寒いもんは寒いんだよぉ〜! 照、あっためて!」
「はいはい」
岩本は文句ひとつ言わず、着ていた大きなダウンジャケットの前ファスナーをジジッと下げて開いた。
そして、顎で「来いよ」と合図する。
「うわーい! 照スパだ!」
佐久間は迷わず岩本の懐に飛び込んだ。
岩本は佐久間をすっぽりと自分のダウンの中に招き入れると、再び前を閉じるようにして、佐久間ごと抱きしめた。
「……うわ、冷っめ。お前氷かよ」
「照があったかいんだよぉ〜。……ん〜、落ち着く〜」
佐久間は岩本の厚い胸板に顔を埋め、腰に腕を回して密着する。
身長差のおかげで、佐久間の頭はちょうど岩本の顎の下に収まる。
このフィット感こそ、ニコイチと呼ばれる所以だ。
「……なぁ、照」
「ん?」
「俺らってさ、前世もくっついてたのかな」
「なんだ急に」
「だってさ、こんなにサイズ感ピッタリなことある? 俺、照の中にいる時が一番生きてる心地するもん」
佐久間がダウンの中でモゾモゾと動き、上目遣いで岩本を見上げる。
その瞳は寒さで少し潤んでいて、小動物的な可愛さが爆発している。
岩本はふっと表情を緩ませ、あのクシャッとした笑顔を見せた。
「……あるかもな」
「でしょ!?」
「俺も、佐久間がくっついてねぇと、なんか片腕ねぇみたいな気分になるし」
岩本は佐久間の冷え切った背中を、大きな掌でゆっくりと擦って温め始めた。
「……ニコイチだからな、俺ら」
「うん! 二つで一つ!」
岩本の体温が佐久間に移り、佐久間の冷気が岩本に吸収されていく。
二人で一つになって、ようやく完全な個体になる。
周りのスタッフが「またやってるよ……」と苦笑いするほどの密着度だが、二人にとってはこれが酸素を吸うのと同じくらい当たり前のこと。
「……あったまったか?」
「うん、ポカポカ!」
「じゃあ、そろそろ離れろ。撮影始まるぞ」
「えー、やだ! もうちょっと!」
「……仕方ねぇな」
結局、岩本は佐久間を引き剥がすことなく、ギリギリまでその体温を分け与え続けた。
寒い冬空の下でも、ニコイチの周りだけは常春のような温かさに包まれているのだった。
コメント
2件

ニコイチは尊い💛🩷磁石🧲のようなピッタリフィット✨
うちもにこにこのさっくんに見上げられたい 続き待ってます!