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明花永(あかな)
12
#普通
野々さくら
202
ドラゴン店長
30
銚子は信愛の言葉に納得したように
「なるほどね・・・親に放置された事で
その憎悪でこんな悪霊に」
「違う!そうじゃないの」
信愛は強く首を振った。
「佳苗、自分が死んでる事にさえ
気づいてなかったの!
それどころかお母さんが交際相手に
殺された事も知らなかった!」
その言葉に、銚子は押し黙り、静かな沈黙が二人の間に流れる。
「佳苗はずっとひとりぼっちで
10年以上もお母さんの帰りを待ってたの」
信愛は胸を締めつけられるような思いで続ける。
「それなのに、私が
『佳苗はもう死んでる』
『お母さんも亡くなってる』なんて
余計な事を言っちゃったから」
銚子はゆっくりと息を吐いた。
「なるほどね・・・」
信愛は唇を噛む。
「私、絶対にお母さんに会えるって
そう言ったのに」
銚子は静かに頷いた。
「佳苗ちゃんは、信愛に裏切られたって
そう、思ったの体もしれないわね」
銚子は一拍置いて
「でも、だからってあれを
放置していたらタダじゃ済まなくなる」
そう続ける銚子に、信愛は何も言えず俯く。
「同情する気持ちは分かるし、罪悪感があるのも分かる」
さらに一拍置いて、銚子は少しだけ厳しい口調になる。
「けどね?霊に肩入れし過ぎよ」
「それは分かってる」
信愛は小さく答えた。
「分かってる・・けど」
「申し訳ないって気持ちが
あるんだったら、信愛がやる事はひとつ」
銚子は信愛を真っ直ぐ見据えた。
「佳苗ちゃんを成仏させてあげる事、それだけよ」
「だけど・・・」
信愛の迷いを銚子は強く断ち切る。
「信愛、あなたがやるの!」
その声には迷いがなかった。
「あなたが佳苗ちゃんを救ってあげるの!」
信愛はゆっくりと頷く。
「わ、分かった・・・」
(ごめんね、佳苗)
胸の奥で、誰にも届かない謝罪を呟く。
その時だった。
「お、お母さん・・・」
佳苗が震える声を漏らした。
「か、佳苗!?」
信愛が振り返る。
「何で・・・何で帰って来てくれないの?」
佳苗の悲痛な叫びが辺りに響く。
「お母さん・・・どこ?」
銚子は険しい表情で佳苗を見つめた。
「佳苗ちゃんは、まだ完全な悪霊にはなっていないのね」
信愛は不安げな眼差しのまま、その場に立ち尽くす。
「信愛!何をやってるの!」
鉞子の鋭い声が飛ぶ。
「完全な悪霊になる前に、佳苗ちゃんを祓うの!」
そして、力強く言い放つ。
「でなきゃ──」
信愛は銚子の言葉を遮るように駆け出すと、佳苗を強く抱きしめた。
「信愛!?」
突然の行動に、銚子は戸惑いの声を漏らす。
信愛は佳苗を抱きしめたまま、震える声で囁いた。
「ごめんね、佳苗・・・」
その声は涙で掠れている。
「ずっとひとりで、お母さんの帰りを
待ってた佳苗の気持ちを無視して」
佳苗の肩を抱く腕に、さらに力がこもる。
「本当に・・・本当にごめんね」
「の・・・信愛・・・」
佳苗は呆然とその光景を見つめていた。
しかし、銚子だけは顔色を変える。
「バカ! 信愛!」
鋭い叱責が路地に響いた。
「そんなに霊に近づいたら──」
銚子の表情が強張る。
「精神の共有が始まっ──」
その瞬間だった。
眩い光が信愛の身体を包み込む。
「な・・何?これ?」
思わず目を覆うほどの光。
信愛は頭を押さえ、その場に膝をついた。
「う・・うぅ・・・」
激しい頭痛が脳を突き刺す。
「何?何なの?」
頭の奥へ、誰かの感情が雪崩れ込んでくる。
「私の頭に・・何かが入ってくる」
信愛は苦しげに息を乱しながら、震える声で呟いた。
「もしかして・・コレって・・・」
脳裏に、見たこともない景色が次々と映し出される。
「佳苗の記憶?」
その瞬間、信愛は理解した。
今、自分の頭の中へ流れ込んできているのは──
佳苗の魂に深く刻まれた記憶、そのものだった。
コメント
1件
×××さん、第13話読みました。佳苗が自分の死に気づいていなかったという悲しい設定が胸に刺さりますね。10年以上も母親の帰りを待ち続けていた孤独……それに気づかず「死んでる」と伝えてしまった信愛の罪悪感も切実でした。そして「完全な悪霊になる前に祓え」と迫る銚子に対して、信愛が佳苗を抱きしめた瞬間、あの光と精神共有の展開! 設定がしっかり伏線になっていて、世界観の設計が細かいなと感じました。霊と人間の境界が曖昧になるこのシステム、今後の展開が楽しみです。