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明花永(あかな)
12
#普通
野々さくら
202
ドラゴン店長
30
コメント
1件
うわあ……冒頭から空気が重くて、読んでて本当に辛かったです。佳苗が自分の朝食を差し出して「お父さん…」って呼ぶシーン、胸が締め付けられました。あの純粋さが逆に暴力を招く理不尽さ。母親の美波も決して悪い人じゃないのに、相手を選べなかった結果がこれかと思うと……。この記憶が今の物語とどう繋がるのか、すごく気になります。×××さん、重いテーマを丁寧に描いてくれていて、引き込まれました。
信愛の意識へ流れ込んできた佳苗の記憶。
そこは、まだ佳苗が生きていた頃の、小さなアパートだった。
朝の柔らかな日差しが差し込む食卓。
しかし、その空気は穏やかとは程遠い。
「おい! コラ!」
男の荒々しい怒鳴り声が部屋中に響く。
佳苗の母・美波は、食器洗いする手を止め、やれやれと言った様子で、キッチンから顔を出した。
「何よ?」
「俺の飯はまだかよ!」
男は苛立ちを隠そうともせず怒鳴る。
美波はため息をつきながら答えた。
「ちょっと待ってよ。佳苗が
ご飯食べ終わるまで待っててよ」
佳苗は小さな椅子に座り、不安そうに二人を見つめていた。
「それに佳苗を保育園に
連れて行かなきゃいけないのよ?
その後でもいいでしょ?」
男は鼻で笑う。
「ふんっ!んなガキ知るかよ!」
怒鳴り声と同時にテーブルを叩いた。
「早く持ってこいっつってんだよ! 飯!」
美波の表情が険しくなる。
「あーもう!うるさいわね!」
真っ直ぐ男を睨み返した。
「だったら自分で用意したらいいでしょ?
子供じゃ無いんだから!それくらい出来るでしょ?」
美波のその一言が男の癇に障った。
「んだとこのクソが!」
勢いよく立ち上がると、美波の腹を容赦なく蹴り飛ばした。
「ちょっと! 蹴らないでよ!」
床に倒れながら叫ぶ美波。
「やめてってば!」
しかし男は聞く耳を持たない。
「うるせーよ!」
さらに怒鳴りつける。
「てめーがナメた口きくからだろーが!」
「だから辞めてって!」
美波の悲鳴が部屋に響く。
佳苗は椅子の上で震えていた。
「あ・・あの・・・」
小さな声で恐る恐る男へ近づく。
男が振り返る。
「ああ? なんだ?」
佳苗は震える両手で、自分が食べていた朝食のお皿を差し出した。
「これ・・・食べていいよ」
その幼い声は震えていた。
「お、お父さん・・・」
美波は息を呑む。
「か、佳苗・・・」
男は一瞬だけ皿を見つめたあと、冷たく笑った。
「ああ? お父さんだ?」
一般論を言うならば、交際相手の娘からお父さんと呼ばれれば、涙を流して喜びそうなものだが、この男は違ったようで、その目には嫌悪の色しかなかった。
「てめーにお父さんなんて言われる筋合いねーぞ」
乾いた音が部屋に響く。
男の平手が、佳苗の小さな頬を容赦なく打ち抜いた。
佳苗の身体が床へ倒れる。
「いったっ!」
涙を浮かべながら頬を押さえる佳苗。
「ちょっと! 佳苗に暴力辞めてよ!」
美波は佳苗を庇うように立ちはだかる。
「うるせーよ!」
男は吐き捨てる。
「こいつは俺にガキのおこぼれ寄こしやがったんだぞ?
たかだかガキの分際で俺を舐め腐りやがって!」
その表情には怒りと侮蔑しかなかった。
「こういう大人を舐め腐ったガキには躾しねーとな!」
男は佳苗を睨みつける。
「そうだよな?クソガキ!ぁあ!?」
美波は怒りに震えながら叫んだ。
「何が躾よ!ただ自分がイラついてるだけでしょ!」
そして佳苗を抱き寄せる。
「佳苗はアンタのサンドバッグじゃないの!」
男は深いため息をつき、呆れたように頭を掻いた。
「あーあ!うるせー!」
そう吐き捨てると、玄関へ向かって歩き出す。
「ちょっと!どこ行くのよ!」
美波が追いかける。
「まだ話は終わってないわよ!」
男は振り返ることもなく答えた。
「パチンコだよ、パチンコ」
「何がパチンコよ!」
美波の怒声が飛ぶ。
「大した稼ぎもないくせに!」
男は肩越しに舌打ちする。
「黙れ!」
そして玄関のドアノブを掴んだ。
「帰ったらすぐ飯にすっからよ」
ドアが乱暴に閉まる音だけが、部屋に虚しく響いた。
「ちょっと!待ちなさいよ!」
美波の訴えも虚しく、男はドアを乱雑に締めながら外に出て行く。
「なんてヤツなの・・」
美波は物言わないドアをひたすら睨みつけるしか出来なかった。