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血だるま教室

1 - 第1話 ジョンソンさま

2025年09月10日

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「鏡子はジョンソンさまの話、知ってる?」


なるみちゃんがそう言った。


「ジェイソン?」

「ジョンソンよ。格好は似てるけどこっちは実話だよ」

「し、しらないよ、怖い話?」

「うん、けっこう怖い話」

「こ、怖い話はやだよう」


なるみちゃんは遠くを見ながら、私の抗議にかまわず話し出した。


「ほら、あそこに見える基地でね。ジョンソン曹長という人がいたんだ。ベトナムで戦争があった頃のお話」


なるみちゃんが食べかけのチョココロネで丘の向こうの米軍基地を指した。

屋上に初夏の日差しがさんさんと照りつけて、あちこちで生徒がお弁当を広げていた。

のどかな雰囲気なのに、なるみちゃんの声が怖いよ。


「怖い話は嫌いだよう」

「ジョンソン曹長は醜い男だったので、みんなに虐められてたんだ。怒ったジョンソン曹長は大きな砕石用のハンマーを持ちだして、自分を虐めた部隊の人間をみんな殺しちゃったの」


やだやだ、怖い話は苦手だ。

お姉ちゃんの作ってくれたタコさんウインナーがフォークの上でブルブル震えている。ついでに左手に持ったおべんとう箱も震えてしまう。


「ジョンソン曹長はMPに追いつめられて基地の片隅で千発の弾丸を撃たれて死んじゃったの」

「そ、そうなんだ、ジェイソンさん死んじゃったのね」

「うん、死んじゃった」

「よ、よかった」

「その後、街に変な噂が流れたの、基地の東側の壁に一枚だけ白いコンクリートの壁があって、新月の夜に憎い人間の名前をそこに書くと、満月の夜、ジョンソンさまが、名前の人間を殺しにくるんだってさ」


やめてええ。怖い、怖いよ。ジョンソンさまも怖いけど、コンクリートの壁に書かれた名前もすっごく怖いよ。書きに行く人の恨みの気持ちが怖いよっ。

ブルブルと震えるタコさんウインナーが、ふっと消失した。

ひいい、怪奇現象! と思ったら洋平くんが口をもぐもぐさせていた。


「なっ! なにするんですか、洋平くんっ!! ど、どろぼうっ!」


洋平くんは片手をちょっと上げて、マテのポーズを取った。

なによお、私のタコさんウインナーが。


「タコが落っこちそうだったんでさ。救出しただけだよ。そんな怒るなよ月寄」


洋平くんはにっこりと笑った。

もー、洋平くんは、すぐ突拍子も無いことするんだからー。


「ジョンソンの話? 俺のダチのダチがジョンソンに夜追っかけられたんだけど、鏡を落としたら逃げられたって言う話だぜ」

「あー、そうそう、鏡を落とすとジョンソンは見入っちゃうので逃げられるって良く聞くわね」

「おばけの話はやめようよお」

「葉子だって、ジョンソンが……」

「洋平っ!!」


なるみちゃんが短く鋭い声を上げた。


「……ごめ」


洋平くんは思いの外、素直にあやまった。


葉子ちゃんは先月、屋上から飛び降りて死んだ。私たちの同級生だった。

葉子ちゃんの席にはお花が飾られている。

クラスにぽっかりと空いた虫食いの穴のような葉子ちゃんの席。

葉子ちゃんはおとなしくて、ちょっとかわいかったけど、ときどきビックリするほど寂しげな表情を見せることがあって。あまり喋った事は無かったけど、いなくなってしまうと凄く寂しくて悲しい。


キーンコーンカーンコーン


予鈴が鳴った。

ってええっ! わたしお弁当半分も食べてないよ。


「さ、いくよ鏡子」

「なるみちゃんひどいよう」

「月寄は食べるの遅いよな」

「鏡子はおっとりしてるから」

「ビックマックをあっという間に食べるなるみとは大違いだ」

「うっさい。運動してるとお腹減るんだよ」


洋平くんはときどき、私となるみちゃんの所に来てからかったり、おしゃべりしたりするんだけど……。つきあってるのかなあ、なるみちゃんと。

二人がつきあっていたら、なんか取り残されたみたいでいやだなあ。さみしいなあ。


「なにぼーっとしてるの」


あ、あ、なるみちゃん、私のお弁当をチャッチャとしまうのはやめて。


「はやく行こうぜ、現国の南先生うるさいぜ」


私は二人に脇をがっしりと掴まれて、FBIに捕まった宇宙人のように連行されてしまった。


わたしのおべんとー。

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