テラーノベル
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——ハヤマ ミュージカルインストゥルメンツ 営業課長 管楽器リペアラー 葉山 怜
名刺に書かれた肩書きを見て、またも目を見張った。
(営業課長とリペアラーの二つの肩書きを持ってるんだ!? 凄すぎ!!)
怜から頂いた名刺に釘付けになっていると、侑が怜に女性を紹介するように促した。
「怜。隣にいるピアノ講師の方を紹介してくれないか?」
「ああ、彼女はハヤマ特約店でHP認定講師、自宅でもピアノ講師を勤めている音羽 奏さん。今日はオフだけど、土曜日は時々ラウンジピアニストとして仕事している」
「初めまして。音羽奏です。よろしくお願いします」
ストレートロングの艶やかな黒髪をサラリと揺らしながら会釈する奏に、瑠衣も一礼すると、怜が侑を見て『それにしても』と会話を続けた。
「侑。この前銀座のハヤマで会った時にも思ったけどさ、すげぇ頭だな」
怜がププッとニヤけながら『ほぼロン毛じゃん』と侑を揶揄うと、彼はムスッとしながら『…………黙れ』と一喝した。
「その頭、クラッシックの演奏者っていうよりも、ロックミュージシャンじゃね?」
怜がまだ侑のヘアスタイルがツボなのか、時々クスクスと笑っている。
「…………おい怜。笑い過ぎだ。お前こそ、隣にいる音羽さんの事、知り合いのピアノ講師って言ってたが、本当は恋人なのではないか?」
侑の問い掛けに、怜はしれっとしながら言い放った。
「ああ、そうだよ。プロポーズもした。今は彼女が三月にコンペティションを控えてるから、豊田で週末同棲しているが、それが終わったら完全に同棲する予定だ。結婚式と披露宴は今年中に挙げるか来年に挙げるか考え中って所だな」
「そうだったのか! おめでとう!!」
侑がまたも満面の笑みを見せて祝福すると、怜が『サンキュー』と声優のような低めの甘い声で答えた。
(副社長の圭さんとは違って、弟の怜さんは気さくな感じだなぁ)
侑と怜を交互に見やりながら、男同士の友情って、やっぱりいいなと思う。
「九條。何か聞きたい事とかあったら、聞いてみたらどうだ?」
いきなり侑に話を振られ、瑠衣は音羽奏に疑問に思っていた事を聞いてみる事にした。