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大きなガラス窓に映る夜景と、照明を微かに落としたラウンジ内の雰囲気に、優子は言葉にせず、楽しんでいるように見えた。
(いや……楽しんでいるのは俺の方か。そこらで拾った女と、ホテルのラウンジで飲んでるんだもんなぁ……)
テーブルには、四種のチーズの盛り合わせ、ミックスナッツ、クラブハウスサンドやシーザーサラダが並び、拓人は優子と適当に会話を楽しんでいる。
「そういえば、あんたの歳って、いくつなの? 俺と同世代か少し下にも見えるけど」
「…………アンタって、どこまでも失礼なヤツねっ」
拓人に年齢を尋ねられて不快になったのか、優子は盛大にため息をつくと、鬱陶(うっとう)しそうに脚を組む。
「いや、合コンとかで普通に年齢って聞かない? 俺、職業柄、聞いちゃうんだよね」
「へぇ。アンタ、仕事って何やってるの?」
『職業柄』というワードに、優子が拓人に顔を向けて反応している。
彼の纏うノーネクタイのスーツ姿に、女は、拓人が大手企業の役職持ちとでも思ったのだろうか。
(まぁ初めて会った女に、いきなり『女風のオーナー』なんて言えないよな。警戒されるだろうし、ましてこの後、俺は、この女をゴチになる気マンマンだし……)
「さぁ……何の仕事だろうな?」
含み笑いを浮かべながら、ジントニックで喉を潤す拓人。
「大手企業の会社員とか…………御曹司?」
優子の言葉に、拓人は口に含んだアルコールを吹き出しそうになり、慌てて嚥下する。
(女って生き物は、何で御曹司やらスパダリと言われる男が好きなんだろうな……)
彼は心の中で苦笑しながら、ミックスナッツをつまんだ。
「…………あんたの想像にお任せするよ」
拓人は、惚れぼれしてしまいそうな営業スマイルを貼り付け、グイっと優子の顔に近付ける。
彼は、普段からサラリやってのける仕草だが、女はドキっとしたのか、目鼻立ちの整った表情を紅潮させていた。
夜も更けてきたところで、拓人は、またもブラックのクレジットカードで会計を済ませ、優子の肩を抱いてスカイラウンジを後にする。
「ねぇ。アンタって一体…………何者?」
「さぁ? 何者なんだろうな?」
拓人は、男の色香を纏わせた表情で優子を見やりながら、エレベーターに乗り、スカイラウンジの一階下、スイートルームのフロアへ向かう。
「ちょっ……」
女は、まさか彼が豪奢な部屋で滞在しているとは思わなかったのか、キリッとした瞳を丸くさせていた。
「ん? どうかしたか? とりあえず入れよ」
カードキーを翳してドアを開くと、拓人は優子の背中を軽く押し、入室するように促した。