空中庭園のリニューアルオープンには協賛企業、マスコミ各社、それにこれから高城不動産と太いパイプを繋ぎたいと思っている関連会社も招待されていた。
そしてそこには青山花壇の社長・宮森とその令嬢の宮森泉の姿もあった。
この空中庭園に青山花壇は一切関わっていなかったが、社長の宮森は不動産業界最大手の高城不動産ホールディングスとなんとか懇意にしたいと思っていた。最近著しく落ち込みが激しい自社の売り上げ状況も高城不動産とタッグを組めば一気に回復出来るのではないかと思っていた。
そしてここへ来た理由はそれだけではない。宮森は更なる策略を見据えている。
それは高城不動産の社長の息子である高城壮馬だ。聞いたところによると壮馬はまだ独身だという。
つまり宮森は壮馬と自分の娘をなんとか引き合わせようと考えていた。
最近、娘の泉には好きな男が出来た。相手は同じ社内の普通の社員だった。
娘の為を思い宮森はその男に娘との縁談を持ちかけた。逆玉なのでホイホイ乗ってくるだろうと思っていたら、その男はなんやかんやと理由をつけて返事を引き延ばしている。
大事に育てた娘の結婚相手になる男は、そんな煮え切らないただの平社員よりも高城壮馬のような器の大きな男がいい。
宮森はそう思い今日泉を連れて来たのだ。
娘が誰よりも美しく見えるようにお金をかけて精一杯着飾らせてきた。その努力の甲斐あり庭園に集う人達が泉に注目している。それに気を良くした宮森は笑顔を振りまき周りにいる人々と名刺交換を始めた。
その時ウッドデッキに設置されたイベント会場に司会進行役の男性が姿を現した。テレビでよく見かける有名アナウンサーだ。
司会の男性はマイクを手にして話し始めた。
「大変お待たせいたしました。そろそろお時間になりましたので、高城不動産ホールディングス日比谷ビルディング空中庭園のリニューアルオープンセレモニーを始めたいと思います。それでは高城社長どうぞこちらへ」
司会の男性に呼ばれて雄馬が満面の笑みで壇上へ上がる。その時招待客からは盛大な拍手が沸き起こった。
「皆様、本日はお忙しい中我が社のリニューアルオープンセレモニーへお越し下さいまして誠にありがとうございます。完成したばかりの庭園をなぜリニューアルしたのか? おそらく皆様は不思議に思われているでしょう。そのきっかけはある女性の一言でした。女性は植物を愛するあまり以前この地に植えられていた木々達の事をとても心配しておりました。なぜならここにあった植物達はどれもこの環境にそぐわない種類のものばかりだったからです」
その瞬間会場がザワザワと騒めく。
「そこで副社長である高城壮馬がリーダーとなりこの庭園を改良するプロジェクトが発足いたしました。そして協賛企業様や多くの職人の方々のご尽力のおかげでこの環境に適した植物達が生き生きと輝ける素敵な庭園へと生まれ変わったのです」
そこで今度は拍手が沸き起こる。
「どうです? 皆さん! 素敵なお庭でしょう? ここにいると、まるで高原のリゾート地にでも行ったような気分になりませんか?」
すると招待客達は笑顔でうんうんと頷く。
木々の間を通り抜ける風は涼しく、夏の照り付けるような太陽は木の枝や葉を通して木漏れ日となり優しく降り注ぐ。
本当に高原にでもいるかのような癒される庭園にその場にいた人々も満足気な様子だった。
「これからは是非ここでリゾート気分を堪能して下さい。これからの季節この庭園では秋を感じる事が出来るでしょう。都会のコンクリートジャングル…あ、これはもう死語かな?」
そこでどっと笑いが起こる。
「コンクリートジャングルに疲れた時は是非この庭園でホッと一息ついていただければ嬉しいです。あ、もしお腹が空いたら下で美味しいパンやお弁当、それにコーヒーも売っていますので是非そちらを購入していただいてですね…」
そこでまたどっと笑いが起きる。
「で、更にこの庭園で癒された後には下のブティックでお洋服でも買って…」
そこで更に大きな笑いが起こる。
「とにかく是非皆様にこの庭園で寛いでいただけたらなぁと私共は願ってやみません」
雄馬はそう言うと一歩後ろに下がって深々とお辞儀をした。そんな雄馬に会場からは盛大な拍手が送られた。
雄馬の挨拶の様子はテレビのニュースやワイドショーで生中継されていた。
今回のリニューアルは自然保護団体からもかなり注目されているようでおそらく夕方以降のニュースでも放映されるだろう。
雄馬の挨拶が終わると司会者は副社長の壮馬を紹介する。
「では次に副社長の高城壮馬様とこの庭園プロジェクトのメンバーをご紹介させていただきます」
そこで脇で待機していた有田課長と水森、そして美咲と花純は先頭を歩く壮馬について行き壇上に上がった。
壮馬が姿を現すと会場の女性達から一斉にため息が漏れる。
今日の壮馬は仕立ての良いスーツをビシッと着こなし自信と魅力に溢れていた。その壮馬の雄姿に女性全員の目が釘づけになる。
会場にいた泉は身を乗り出して壮馬を見た。想像以上に素敵な壮馬を見て思わずうっとりしている。そしてすぐに隣にいる父親に言った。
「お父様、私あの人となら結婚してもいいわ」
娘の言葉に父の宮森は満足そうに頷く。
「そうだな。立派な方のようだからお前には相応しいだろう。あとでご挨拶に伺うとしよう」
「はい♡」
泉は笑顔で返事をすると再び目を輝かせて壮馬を見つめた。
コメント
5件
宮森親子、親子揃ってオメデタイ人達ですね~😮💨 壮馬パパのスピーチ楽しい🎶ですね~🥰
親子揃って、まだ勘違い⁉️ 社長なのに、自分の会社が無くなるのも知らないなんて....😰 ここまでくると イタ過ぎる~😱😱😱
なんで上から目線?花屋だけに脳内お花畑か?