テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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クールな御曹司はフラワーショップ店員を溺愛したい

第68話 - 第68話

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2024年08月11日

#イケメン

#恋愛

#大人の恋愛

#第3回テノコン

#ハッピーエンド

#大人ロマンス

瑠璃マリコ

その時、プロジェクトのメンバーはかなり緊張して壮馬の隣に並んでいた。

この日有田課長は一張羅のスーツ、そして水森もこの日の為に銀座のデパートで購入した新しいスーツを着ていた。

美咲も母親と一緒に選んだという上品なスーツに身を包んでいる。

いつも着ている黒やグレーのスーツとは違いピンクベージュのとても柔らかい雰囲気の素敵な服だ。

美咲もテレビ映りがいいようにと花純と同様にきちんとメイクをしていた。

その時壮馬がチームメンバーの紹介を始めた。

「こちらがリーダーの有田課長です。そして隣が水森君。そしてこの庭園改良プロジェクトには若い女性にも加わっていただきました。早川さんと藤野さんです」

紹介している間中、新聞や経済雑誌のカメラマンから激しいフラッシュがたかれる。

そこで隣にいた美咲が小声で花純に言った。

「なんか芸能人になった気分ね」

「ほんと顔が引きつっちゃう」

二人は緊張した面持ちで互いの腕をくっつけたまま寄り添って立っていた。

その時群衆の中にいた宮森泉が花純に気付く。

「あ、あの人！　お父様！　あそこに藤野花純さんがいます」

「藤野花純？　ああ、お前が前に言っていた坂上の…なぜここにいるんだ？」

宮森親子は花純がなぜここにいるのか見当もつかないようだ。

おそらく花純が会社に提出した退職届はまだ上まで上がっていないのだろう。

もしくは末端社員の退職の事など上層部はノータッチなのかもしれない。だから宮森親子はなぜ花純がここにいるのかを知る由もなかった。

イベント会場の壇上では庭園についての詳しい説明をちょうど有田課長が終えたところだった。

そして今度はプロジェクトのメンバー一人一人にマイクが向けられる。

「水森さんはどんなところがこのプロジェクトに参加して良かったと思われますか？」

「そうですねーやはり一番感激したのは高城副社長と大衆居酒屋で飲を酌み交わした事でしょうか？」

そこで会場からどっと笑い声が起こる。

「高城副社長、そうなんですか？」

「はい。先日ミーティングの後に皆で居酒屋へ行きました。普段私はそういった場にはあまり参加しないのですが行ってみてとても有意義な時間を過ごす事が出来ました。今後は積極的にそういう場にも参加していきたいですね」

壮馬はそう言って微笑む。そこで会場内の女性達からは再び熱いため息が漏れる。

「いやー、副社長直々に社員の方へ降りて来てくれるなんて高城不動産は本当に風通しのいい素敵な会社なんですねぇ」

司会の男性がしみじみ言うと会場の参加者達もうんうんと頷く。

水森の一言は偶然とはいえ高城不動産の株を上げる事になった。

「では次に早川さんお願いします。早川さんはこのプロジェクトの社員さんの中では紅一点ですが、参加して良かったなーと思われる点はどんな事でしょう？」

美咲は緊張気味に司会者に笑顔を向けると話し始めた。

「はい。やはり一番は仕事を通して尊敬出来る友人が出来た事です」

美咲はそう言ってチラッと花純の方を見た。

「友人ですか？　それはどういった？」

司会者がさらに質問をすると、美咲は続けた。

「隣にいる藤野さんはうちの会社の社員ではなく外部から参加された方なんです。彼女は私と同じ歳なのですが、私とは違い知識も経験も豊富でかなりの衝撃でした。そして彼女は植物に対する愛情がもの凄いんです。ガーデンデザインについても、見てくれやイメージだけを意識した人間側に都合の良いデザインをするのではなく、その環境に適した植栽を選んだり植物達がいかに生き生きとその場に馴染むかを考えているんです。そして四季を意識し庭全体を総合的に捉える力も持っているんです。そんな彼女と出会い刺激を受け私もこれからもっともっと頑張らなくてはと思えたんです。だからこのプロジェクトに参加して幸せでした」

美咲は話終わった後花純を見てニッコリ微笑む。そこで会場からは盛大な拍手が沸き起こった。

花純はまさか自分が美咲に褒められるとは思ってもいなかったのでかなり驚いていた。

そして美咲に小声で言う。

「そんな風に思ってくれてたの？」

「そうよ！　花純ちゃんうちの会社に来るんでしょう？　私凄く楽しみにしているのよ。これからもよろしくね」

二人が小声で話しているのを皆が笑顔で見守っていた。そして一気に和やかなムードになる。

司会者もニコニコしながら、

「早川さん、素敵なお話をありがとうございました。さぁて、では藤野さん。藤野さんはいかがですか？　今回のプロジェクトに参加してみて？」

その時壮馬の声が響いた。

「彼女については私から説明します」

壮馬はそう言って花純の傍へやって来た。