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恵菜と食事をする日。
純は、待ち合わせ時刻の三十分前に、立川駅の壁画前に来ていた。
(到着が早過ぎたな……)
時間潰しに、彼はスマートフォンを取り出し、ニュースサイトを流し見していると、背後から肩をポンッと軽く叩かれた。
「純クン、めっちゃ久しぶりじゃん!」
「あっ……ああ、久しぶりだな」
彼に声を掛けてきたのは、二ヶ月ほど前までセフレだった女。
純よりも十歳ほど若かったと記憶しているが、身体の相性は相当良かった。
(マジか……。よりによって相沢さんと待ち合わせしてる時に……)
「何? 誰かと待ち合わせしてんの?」
「ああ、まぁな」
「もしかして、彼女とか?」
「…………」
無言で笑顔を貼り付ける純に、かつてのセフレだった女は、構わずに話し続ける。
「ねぇ純クン。今度さ、久しぶりに…………しようよ」
女が純に顔を寄せ、耳元で囁く。
吐息が頬に掛かり、彼は背中がゾクリとしながら、咄嗟に女から身体を遠ざけた。
「いや、俺もいい歳だし、いい加減、遊んでる場合じゃねぇから。ごめんな?」
彼は、おどけて女の前で手を合わせると、女は、飄々としながら『なんだぁ〜残念っ』と、全然残念じゃなさそうな声で答える。
「元気でな。早く彼氏作れよ」
「純クン、私、彼氏いるし!」
女は笑顔を浮かべてヒラヒラと手を振り、純から去っていった。
(うわぁ…………あっぶねぇ……)
安堵のため息をついた直後、澄んだ声音が背後から彼を呼ぶと、純の心臓が、良くも悪くもドクンと弾んだ。