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「んじゃ、アタシ達がバアルの所に行っても良い、そう言う事でいいのかなん? ハンニバル君にハスドルバル君」
コユキの問い掛けに緩い笑顔を浮かべながら答えるハンニバル。
「んまあ厳密にはね、誰も通すなって命令なんですがね~、聞いた所じゃ貴女方ってお兄さんと弟さん、そうなんでしょう? 良いんじゃないですかね? なあハスドルバル」
ハスドルバルが答えて言う。
「なんか追い返したり戦ったりしたら後からね、妾(わらわ)の兄弟になんて事を! なんてヒスとか起こされても堪んないからね」
「妾? それにヒスって…… バアルって男なんでしょぅ? オカマさんなのん?」
コユキの問い掛けにはアスタロトが代わって答える。
「コユキ、我等位の高位の悪魔にとっては両性具有は常識だぞ? 無性とも言えるがな…… 統計的には依り代の性別に合わせる場合が多いが、バアルは昔から、僕とか妾(わらわ)とかの一人称を好んで使っていたな」
と、統計? 一体誰が……
また一つ悪魔社会の知られざる一面に触れた気がした私、観察者であった。
コユキが感心した表情をしながらバルカ兄弟に言う。
「なるほど、にしてもアンタ等二人、結構柔軟な考え方だったのねぇ、凄く狂信的な名前なのに、何て意味だったっけ?」
「バアル神の祝福を、ハンニバル・バルカです」
「バアル神のみが救い、ハスドルバル・バルカです」
「バルカって名字が良いな、俺も使ってみようかな? 雷光だろ? いいな……」
シヴァの発言を無視して善悪が呟くのだった。
「聞けば聞くほど拗らせた感じのネーミングセンスでござるのに、二人とも普通に理屈が通じるとは不思議でござるな? 何故でござろ?」
「いや普通に考えれば判りませんかね、名前って自分で付ける物じゃないでしょ? 主に与えられるとか親から名付けられたりでしょ?」
ハンニバルの答えを聞いたコユキが言う。
「という事は二人の親が?」
ハスドルバルが頭を掻いてバツが悪そうな表情で続けた。
「はい、親父がちょっと突き抜けた感じの信徒でして、二十四時間バアル様から離れないんですよねぇ、ちょっとあれは、なあ?」
「ああ、やり過ぎなんですよ、執事服まで着ちゃったりしてねぇ~、大仰なんですよ、親父は」
兄弟の話を聞いていたオルクスが口を挟んだ。
「ア、ハミルカル……」
「お、よくご存じですねオルクスさん、そうです親父の名前はハミルカル・バルカ、本人曰くバアル様の唯一無二の腹心ですよ」
「今も奥の間でバアル様に侍って(はべって)いますよ、俺達が一緒に行ったら絶対ギャーギャー騒ぐと思うんで、俺達待ってていいですよね?」
なるほど、理に適っている、コユキと善悪も同じ判断だったのであろう、こちら側の狂信者、スキピオが付いて来たがるのを何とか宥(なだ)めてこの場所に残して、奥の間に向かう事に決めたのである。
狂信を持つ者が、異教の狂信者と出会うとか……
面倒な未来しか予測できない事はオーディエンスの皆様ならお判り頂ける事であろう。
同様の理由で赤と青のアスタロト配下の狂信者集団も置いて行く事が、あっさり決められたのであった。
こうして奥の間で待つバアルの元に向かうメンバーは、コユキと善悪、アスタロトとスプラタ・マンユの合計、十人に決定したのであった。
「じゃあ行こうか皆」
「おう! でござる!」
勇気凛凛で神殿の奥に向かって歩き出す一行。
残されたメンバーは勝負服のピンクビキニ(毛糸製)に身を包んだ、コユキのボリューム感溢れる姿に目を奪われたまま離す事が出来ずにいた。