えー、最初の行方不明者が出てからおよそ8年が経過しました。
未だ手がかりは何一つ掴めておらず、本当に神隠しのようだと言います。
これまでの行方不明者は数百人に昇っているようです。
行方不明者の家族に話を聞きますと、どうやら家を出る前に何かトラブルがあったことが分かりました。
警察は引き続き捜査を行っている模様です。
逃げた、逃げた、ひたすら逃げた。
泣きながら走って逃げた。
『気持ち悪い……』
『気持ち悪いっ……!!』
『お父様もお母様も気持ち悪いっ……!!』
私は幼稚園の頃から、性的暴行と言える行為をされていた。
自室なんて与えて貰えず、寝室やリビングが生活スペース。
着替えだってお風呂だってお父様が付いてくる。
寝る前には頭の匂いを嗅がれ、ハグをしたあと軽くキスをされる。
昔はそれが普通なのだと思っていた。
小学生低学年までは。
「穂架ちゃん…それ、ちょっと…いや、かなり気持ち悪いよ。」
高学年になって、友達に言われた。
私は、そろそろ恥ずかしいからやめて欲しいと愚痴をこぼしただけだった。
『……え?普通じゃないんですか?』
確かに少し愛が重いとは思っていたけど、引かれるほどだとは思ってなかった。
「うん、普通じゃないどころか引いちゃうな…」
その日以来、友達は話しかけてくれなくなった。
『おはようございます』
「……」
『……え…みなさ──』
自分の机を見ると、“キモイ”、“変態”、“禁断の愛”などと冷やかしの言葉が書かれていた。
『っ……!』
頭が真っ白になった。
その日は意地になって授業に参加したが、次の日からは怖くなって行くことは出来なかった。
両親は認めてくれた。
学校に行かないことを。
でも……
性的暴行はエスカレートしていった。
最初は見られるだけだった着替えも、徐々に“マッサージだ”と言って体をくまなく触られるようになったりもした。
おやすみ前のキスも、軽いものからどんどん激しくなっていった。
そしてついには……
性行為をされそうになった。
その瞬間私は手元にあったハサミでお父様の首元を突き、逃げ出した。
するとお母様はそんな私を阻止した。
『お願いします!行かせてください!』
「ダメよ!貴女私達に逆らうの?!」
『お願いします!もう辛いんです!』
「そんなの知ったことじゃないわ!」
私は玄関に向かうのをやめて、台所へ向かった。
包丁を3本取ると、1本は威嚇用に投げ、もう一本をお母様の胸に刺した。
するとお父様が降りてきたので、威嚇用に投げた1本を拾い、再び首に刺した。
そして、そのまま逃げた、逃げた。
そして、気付くと、神社に来ていた。
『いつの間にこんな所へ…』
「どうしたの?名前は?」
すると、ボブの人がやってきた。
『私は雪名穂架……』
『人を…刺しました。』
『死んだ可能性が高いです。』
「……」
「ここは麗流楼水。」
「居場所のない者が集まるところ。」
「貴女の過去には何があった?」
「貴女はこの世界で何を望む?」
『居場所のない者が……』
『そうですね、私は両親から性的暴行をされ続けていました。』
『誰1人理解者はおらず、性行為されそうになった瞬間に両親を刺して逃げてきました。』
『私は普通に暮らしたい。』
『普通の生活がしたいです。』
「……」
「わかった。」
「雪名穂架。貴女を麗流楼水に歓迎します…!」
数日後
「あら?なんか生臭いわね」
「ちょっとぉ?」
「お宅、生ゴミが臭いですわよ?」
「ちょっとぉ……あら?」
「鍵が開いてるわね」
「なんて不用心な…」
「……え」
ウーーーー……
「死亡者は2名、雪名さん宅です。」
「犯人の手がかりは掴めていません」
「名簿だと娘がいたよな?」
「はい、ですが穂架さんは行方知れずとなっています」
「これは雪名穂架が犯人の可能性が高いか……?」
「もしかしたら、殺した後に例の神隠し事件に……」
「考え得るな」
コメント
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娘のことをそうゆう目で見るとかやべぇやん…(