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羽海汐遠
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会場に着いて最初に目にしたのは大人も子供も顔の横につけてるお面。お面くじだ。
それをキミは興味ありげすぎる眼差しでキョロキョロしてる。
「僕らもしに行く?お面くじ」
「する!!します!!」
そう言いながら先行こうとするキミの手を握ってそのまま引っ張られる形に。
お面くじはその名の通りくじを引くだけ。
だが珍しくハズレが存在するくじ。
大体こういうのは全部当たりとかなのになぁ…
「キミはどうだった?当たった?」
切り替えるように声を少し上げてキミに問いかける。
「当たりました!!2個!」
「2個?」
もしや大将僕にだけ意地悪で入れなかったとか…
そう思いながら屋台の狐のおっちゃんを睨みつけるように見る。
が、ここらの狐らは顔が同じすぎる。
みんなつーんとそっぽ向いてて。
「それで?どんなのが当たったの?」
「狐です!青と赤の!!」
そう言って両手で掲げるように見せてくれた。
だいぶ顔の間近くで。
「…狐面……」
まさか狐のお祭り会場だから狐面しか無いのか。
そう思いながら見やすいように1歩下がる。
と、後ろにいた誰かにぶつかった。
「あ、すいません!!」
慌ててそう僕は言いながら振り返るとそこに居たのは非常に大きな狐で。
「わぁっ…?!」
最初は何かと思ってキミの後ろに背に隠れるようにサッと。
「…九尾の狐だ!!」
キミの声を聞いてやっと落ち着く。
「…化け物かと思った」
小さく、だが聞こえないようにそう言うと一瞬睨まれた気がした。
だから僕はキミの方を見て目を合わせないようにして。
「…時雨さんにはこっちあげます!」
そう言って手に何かが握らされる。
見ると、キミが引いたはずの狐面の片割れ。
青色の方。
「…いいの?」
「お揃いです!」
目がキラキラしながらそれよりも輝く花を僕に咲かせてそう言うキミ。
なんだかそれに少し涙が滲んで。
けどキミには気づかれてなくて。
既にキミの視線は次の屋台の方に。
「時雨さんは何味にしたんですか?!」
僕の嘘吐き氷を覗くように見ながら興奮半ばに聞いてくる。
「僕は夏の味…?にしたよ」
「キミは?」
「…夏の味?」
「なんですか?それ」
問いに問いを返すのは禁忌だって人間が言ってたはずなんだけどなぁ…
でもまぁ昔だったから薄れちゃったのかも。
そんなことを考えながら
「なんか夏の情景が浮かぶんだって!」
と興奮半ばのキミに合わせるように元気にそう言う。
「…そんなのあったんですか?」
けれど何故かしょんぼり声のキミ。
「あれ?気づかなかったの?」
「…うん……」
下唇を前に出して不満そうに返事するキミが幼子じみてて可愛くて。
僕は軽く息を漏らす。
「なっ!笑わないでくださいよ!!」
そんなキミを他所に僕は笑いが止まらなくて口を自身の手で塞いで無理に止めようとして。
「……僕のは狐味です」
「きつねあじ…???」
油断は禁物とはこういうことだろうか。
いや違う気がする。
「え、キミこそそんなのあった?!」
「…店主さんに面白いのあるって言われてつい…….」
なんだか詐欺にまんまとかかったか弱い兎を見てる気分。
「で、狐味ってなんなの?」
「尻尾生えるとか?」
「…よく分かりましたね」
目がまん丸で驚いてるのが丸わかりなキミの表情。
「…猫みたい」
バレないようにそう呟くも、キミには聞こえていて。
「…今可愛いとか思いました?」
「…いやっ」
目を逸らしながらそう答えるも、下からの圧がすごい。
「で、結局時雨さんの夏の味ってなんだったんですか?」
「んー…食べたけどあんまりわかんなかったんだよね…」
頬をポリポリ掻きながらそう答えると下からは『僕も食べたかったなぁ』なんて声が聞こえてきて。
僕は僕で『また一緒に来ればいいよ』と返して。
そんな僕たちが今いるのは音屋というやけに人が群がってた人気のお店。
どうやらお土産に人気みたいで。
「….れ…..ん..、!」
「…時..!!」
「───時雨さん!!」
「わっ?!」
「え、な、なに?」
「さっきから呼んでるのに僕のこと見てにこにこしてるんですもん!!」
「ぁ、ごめんごめん!!」
顔の前で手を合わせるようにして謝るポーズを見せるも、キミは頬を膨らましたままで。
「てか時雨さん瓶にまだ何も入れてないんですか?!」
「もー、遅いですよ!!」
キミは軽く地団駄を踏むようにして僕にそう言ってて。
けど見える面影はお母さんみたいで。
「キミが早いんだよ…」
「違います!!」
僕が瓶に詰めたのは、
風鈴の音。
ビー玉が転がる音。
びいどろの音。
絵馬が風で揺れる音。
「…びいどろ?」
「知らない?ペコペコなる楽器みたいなもの」
「…ふーん…」
せっかくの僕の説明は空回りしてどこかの宙に飛んで行って。
「あ、時雨さん!!さっきの!」
「さっきの?」
「僕の名前呼んでください!」
急に名前を呼べと言われて尚更困惑する。
というか困惑しない人は居ないと僕は思う。
「……なんで?」
「早く呼んでくださいよ!!瓶に詰めるんです!」
グイグイと僕の服の裾を引っ張ってくる。
…………。
……..。
……。
「……███」
コメント
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「お揃いです!」って満面の笑みで狐面を差し出すところ、もう胸がぎゅうっとなりました……。それでいて時雨さんが「夏の味」とか「狐味」ってよくわからないものにハマってるの、なんか微笑ましくて。しかも最期の「███」って――ああもう、ここで切るんですか!? 名前を呼ぶところ、どうしても気になります。次が楽しみすぎます。