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💚「ふっか、膝貸して」
大胆に、俺の膝に倒れ込む阿部ちゃんに、どう応えたらいいかわからなくて、ああ、これは仲の良い男友達のやつだよなと思い直し、受け入れた。
阿部ちゃんから、時々謎のスキンシップを求められるたび、どぎまぎするくせに、俺はこの気持ちの正体にあまり目を向けないようにしている。
何しろ相手はあの「あざと」阿部。
気のある素振りはお手のもの。ファンの心もメンバーの愛も一身に受けているのだから。
💛「阿部って距離感バグってね?」
大親友の照と、笑いながらそんな話をすることもしばしば。ほら、今は目黒の隣りに座って、花が咲いたような笑顔を見せている。俺にこんなことを冗談混じりに言ってる照だって、今まさに、阿部ちゃんに吸い込まれるような目つきで見つめられている目黒だって、ほんの少しは感じているはずなんだ。なんていうか、その、淡い…恋心?みたいなモノ。公には誰も認めてねぇけど。佐久間なんて一番距離感近いから、見ていて可哀想なくらいに釣られている。
全てファンサと同質だと思えば、気にする方がバカバカしい。俺はそう思って、己の心に固く蓋をしていた。
💚
💙「よくないよ、阿部ちゃん、ああいうの、ほんとよくない」
今俺はメンバー内で唯一彼氏持ちの、翔太に話を聞いてもらっている。翔太は呆れたように俺を見ていた。
💙「佐久間に真剣に相談されたもん。阿部ちゃんにどこまでしても許される?って。俺、一応止めといたけど」
💚「だってぇ…」
俺は、翔太に話を聞いてもらいながら、自らの行動を反芻した。どの場面にも、ふっかがいる。ふっかに毎回直接行くのは恥ずかしすぎて、回り道をしていった結果、俺はいつもメンバーを狩っているのだという。
💙「このままだとふっかさん、阿部ちゃんを恋愛対象に考えてくれなくなるぞ」
💚「え。それはヤダ」
翔太に怖い顔で脅されて、反省する。気が多い男だと思われるのだけは嫌だ。
💚「どうしたらいい?」
💙「まずその可愛い顔やめて。……はっきり言えよ、悪い気しねぇからふっかさんも」
💚「うーん」
そう。
俺はずっと、同期のふっかに恋してる。
それでも最近まで、この気持ちが友情なのか恋愛なのかわからなくて悩んでいた。で、ちょっと前に翔太と涼太がくっついた時に、おお、そういう結末って成功例として本当にあるんだと知った。2人の付き合いが深まるにつれ、最初はいやいや付き合っていたはずの翔太が、いつの間にかデレデレになっていく過程を見るのも微笑ましかった。俺は、最初からふっかにデレだから、あんまり変わらないと思うけど。
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グループ仕事の帰り。
目の前から阿部ちゃんがやって来た。深めに被っていたハットをさらに深く被る。あのつぶらな瞳と目が合ったらわかりやすく赤くなってしまいそうだ。
💚「お疲れふっか」
💜「おぅ、お疲れ」
💚「あのさあ」
💜「ん?どうした?恋の悩みか?」
軽く冗談を言ったつもりが、阿部ちゃんが変な顔をしている。小首を傾げて俺を見た。
💚「そういうの、嫌なんだけど」
💜「え」
俺間違えた?ってか、いきなり恋の話するとかセクハラ入ってたかな。好きな人との会話ってむずいわ。ナベでも通りがからねぇかな。
しかし、こんな時に限って、廊下は閑散としていて、スタッフの1人も通りゃしない。俺は諦めて阿部ちゃんを見つめた。
💚「はぁっ……。もう言うね」
💜「うん?」
💚「好きだよ。俺と付き合って」
💜「ええええええええええ!!!」
💚「………声でか。うるさいなあ」
💜「照じゃなくて?」
💚「違う」
💜「じゃあ、目黒じゃなくて?」
💚「全然違う」
💜「さ、さ、佐久間はどうなんだよっ!?」
💚「ふっかがいいの」
ざまあみろ。
並みいる強豪を抑えて、俺が大優勝だ。久々に高校以来のモテ力を感じた。やっぱ俺ってイケメンなのかもしれない。
💜「いてっ!」
急に頭部にチョップを食らって、振り向くと、不敵に笑うナベとそのパートナー。
💙「おい、道の真ん中で突っ立ってんなよ、邪魔。阿部ちゃん、おめでとう」
❤️「よかったね」
💚「俺まだ返事聞いてないけど?」
頬を膨らませて、わざとらしく拗ねてみせる阿部ちゃんが可愛すぎた。
💜「えっ、えっ。ごめん、俺、OK!もちろんOKだよ」
💚「それならよかった」
にっこり笑う阿部ちゃんをぎゅっと抱きしめると、がやがやと楽屋から出てくるみんなが見えて、中でも泣き顔の佐久間が照に連行されていた。大袈裟じゃなく、その一行は、戦に負けた者たちの葬列のように見えた。
いや、さすが俺。
あまたの戦死者たちに手を合わせ、俺は阿部ちゃんを大切にすることを誓ったのだった。
おわり。
コメント
8件
わーー、二人可愛すぎてエモすぎて最高です😭💓しょっぴーとのやりとりも〜〜 大好きがいっぱい詰まってて私得🥹💓ありがとうございます!🥹
あー素敵だわ同期 ふっかさんの誕生日インライのときの同期が好きすぎて定期的に見返してるし💜💚 そしてメンバーを狩っていく我が推し最高ありがとうまきぴよさん💚