テラーノベル
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つぎの日の朝、わたしは昨日よりも大きな紙のつばさを作った。新聞だけじゃ足りなくて、古い包装紙や、
おばあさんにもらった茶色い紙袋までひらいて使った。
背中につけると、まるで自分が本当に鳥になったみたい。
丘の上は、いつもより風が強かった。
空には白い雲がゆっくり流れていて、
森の木々がざわざわと歌っているみたいな音をたてていた。
「今日は…飛べる気がする」
そうつぶやいて、両手をいっぱいに広げた。
つばさが風をうけて、ぱたぱたと紙が鳴る。
思いきって走り出すと──
びゅおおおおおっ!
突然、つむじ風みたいな大風がふいてきた。
足が地面からふわっと離れ、
からだが宙に浮いた。
「うわああああっ!」
森が足の下に小さくなっていく。
心臓はドキドキ、耳は風の音でいっぱい。
でも、恐いよりも、目の前に広がる景色に息をのんだ。
村の屋根も、広場の金色の卵も、
そしてそのずっと先に、
星の粉のきらめきが空へと続く道のように伸びていた。
「……あれが、星の女王さまのところ?」
でも次の瞬間、風が少し弱まって、
わたしはゆっくりと地面に向かって落ちていった。
最後はふかふかの草の上に、ぼすんっ。
しばらく寝転がったまま空を見上げて、
わたしは決めた。
──いつか、ちゃんと自分の力で、
あの粉の道をたどってみせる。
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