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圭と、触れるだけのキスを交わした美花は、突然の出来事に、目を閉じるどころか、瞳を丸くさせてしまった。
周囲には、多くの人波が、美花たちの周りをうねるように行き交い、柔らかな頬が熱を帯びている。
「キスするの…………嫌だったか?」
色香を孕んでいる圭の瞳に射抜かれ、吐息混じりに圭から問い掛けられた美花は、顔を伏せながら小さく首を横に振る。
「嫌…………じゃない……けど……」
美花の思考が麻痺してしまって、その先の言葉が繋げられない。
「いっ……いきなりだった……から……ビックリした……だけ……」
喉の奥に留まっていた言葉を何とか吐露させ、困ったように目尻を下げた美花。
恥ずかしさから逃れるように顔を背けると、筋張った手に引き寄せられ、圭の胸の中に閉じ込められる。
引き締まった体躯の温もりに絆されそうになり、美花の足が、もつれそうになると、細い腰回りが圭の腕に支えられた。
「驚かせてしまって、すまない。でも……」
圭の長い指先が艶髪に触れ、優しく梳かされながら、まっすぐな眼差しを向けられる。
「美花が好きだから…………君の唇が……欲しくなった」
「…………」
美花は黙ったままコクリと頷かせると、クールと甘さを兼ね備えた顔立ちを、おぼつかない様子で見上げる。
「ライトアップ終了まで、あと一時間ほどだ。せっかくだから歩こう。今度は…………恋人同士として、な?」
「うっ……うん……」
二つの手が自然と触れ合い、大きな手のひらに小さな手が包み込まれると、鮮やかな黄色いアーチの下を、のんびりと歩み始めた。
「良かったら、お写真撮りましょうか?」
ツーショットで写真を撮ろうとしている圭と美花の背中に、声が掛けられる。
振り返ると、年配の夫婦と思しき二人が、にこやかに佇み、美花と圭の姿を見て眩しそうに目を細めていた。
「すみません、お願いしてもいいですか?」
「ええ、もちろん」
男性が手を差し出すと、圭は自身のスマートフォンを預け、シャッターの位置を教える。
圭が美花の隣に並ぶと、華奢な肩を抱き、彼女は両手でハートマークを作り、緩やかな弧を瞳で描いた。