テラーノベル
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日が落ちきる前。
リビングの時計が、
いつもより大きく音を立てていた。
「……遅くない?」
黄の一言に、
全員の動きが一瞬止まる。
「翠、まだ帰ってこねぇの?」
茈がスマホを見る。
通知は、ない。
「連絡、来てない?」
瑞が顔を上げる。
誰も、うなずかない。
赫が、ぎゅっと服の裾を掴んだ。
「……俺、今日、翠にぃと話してない」
その言葉で、
桃が立ち上がる。
「探しに行ってくる」
短く、それだけ。
靴を履く音が重なる。
誰も「大げさだ」とは言わなかった。
外に出ると、
空はもう、夕方と夜の境目。
「通学路」
「駅の方」
「公園」
自然と役割が分かれる。
桃と茈は駅方向。
黄と瑞は通学路。
赫は、家で待機。
名前を呼ぶ声が、
少しずつ、街に溶けていく。
「翠!」
「翠にぃ!」
返事は、ない。
その頃。
建物の影。
ひんやりした地面。
翠は、
膝を抱えたまま、動かなかった。
足の感覚が、
少し遠い。
名前を呼ばれた気がして、
顔を上げる。
でも、
風の音だけ。
「……気のせいか」
声は、かすれていた。
目を閉じると、
意識が、すっと沈みそうになる。
そのとき。
「……翠くん!」
遠くで、
確かに、聞こえた。
幻じゃない。
「……翠にぃ!」
次は、はっきり。
胸が、
ぎゅっと締めつけられる。
返事をしようとして、
喉が鳴るだけ。
もう一度、
声。
「翠!!」
今度は、近い。
足音。
走る音。
視界の端に、
人影が入る。
「……っ、いた!」
黄の声。
翠は、
顔を上げようとして、
首が、うまく動かない。
「翠にぃ……」
瑞が駆け寄って、
しゃがみこむ。
「なんで、こんなとこで……」
触れられた瞬間、
体がびくっと震えた。
「……ごめん」
反射みたいに、
その言葉が出る。
「ちがう!」
黄の声が、少し強くなる。
「謝ることじゃない!」
少し遅れて、
桃と茈も合流する。
桃は、
翠の前にしゃがんで、
一瞬、言葉を失った。
「……帰れそう?」
問いかけは、震えていた。
翠は、
小さく首を振る。
それを見て、
桃の表情が、くしゃっと歪む。
「……そっか…」
その温度で、
張りつめていたものが、
一気に緩む。
翠は、
ようやく、息を吐いた。
コメント
2件
ああぁ神作が神作が上がっている( 翠っちゃん!!!!!! ちょあぁー頑張って(? 意外と終盤近づいてる?もうタイトル変わってるけど、短編集で30話超えてるの初めて見た…いや、10話超えてるものも見た事なかったわ(
初コメ失礼します🍀*゜ほんとに大好きで毎回上がってすぐ見させていただいてます。これからも続き楽しみにしてます(*.ˬ.)"