(大和side)
雫と出会ったあの頃を思い出す。隣に住む、いつも腹を減らした若い女。あの頃の雫は俺の飯の匂いをドア越しに嗅いでは、か細い声で「美味しいんだろうな」と呟いていた。
最初は可哀想だから、という理由だった。毎日コンビニ弁当で食生活が偏り、フラフラなところを見たら、助けてやりたい、俺の作った飯で助けてやれるなら、という完全な善意だった。
だが、美味しく飯を食う顔や、素直なところ。笑顔が可愛いところ。ふわふわとした柔らかい雰囲気に癒され、一緒にいるとこちらまで心が柔らかくなり、会えば会うほどのめり込んでいった。
一度は、恋愛なんて諦めていたのに、雫に会ったことでそれは全て変えられた。
「同棲しようか」
ずっと言えずいたのに自然と滑り落ちた俺の言葉に、雫は二、三度瞬きをした後、口をパクパクと開閉した。カチコチと進み続ける壁掛け時計の秒針だけが、俺たちの沈黙する室内に響き続け******
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