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土地神であるオウガノミコトと賭けをして、当然の様に負けた俺がゲームの企画書をベースに創られた異世界へぶん投げられてから四日目の朝がきた。室内は薄暗くて窓から入る日差しもまだ弱いから、きっとまだかなり早い時間なのだろう。まだ少し冷たい色をした空の下では、鶏っぽい鳴き声が遠くで聞こえ、一階からは料理をしている匂いが少しする。その感じがいかにも朝らしく、なんだかちょっと嬉しくなった。
昨夜はちょっとハイペースで飲み過ぎたが二日酔いにはならずに済んだみたいだ。でも、いつ眠ったのかはよく覚えていない。 起きるか、まだ少し眠っておくか……中途半端な時間なせいで迷ってしまう。
ゴロンッと体を横に反転させ、初めて自分が一人で眠っていた事に気が付いた。初めてだ、異世界へ来て一人で眠ったのは。熟睡出来たおかげか体も軽いし、眠っている間に何かをされた様な形跡もパッと見た感じでは無いみたいだ。
隣にあるベッドを見てみると、リアンがこちらに背を向けた状態で眠っていた。デカイ図体の背中を軽く丸め、狐耳は伏せった状態になっている。尻尾は布団で隠れていてどんな状態なのかわからなかった。
「……昨夜は断ったから、拗ねているのか?」
魔力の補充を断ったのは悪手だったかもしれない。
(でも、いくらなんでも連日毎晩というのは流石に、な)
そもそも自分は、あんな簡単に体を許すタイプでは無いのに、何故リアンが相手だと簡単に流されてしまうのだろうか。不慣れな快楽に溺れて……だけとは思いたくない。だが、痛快無比を好む鬼故の特性のせいだと言われれば、そうなのかもなと納得も出来てしまう。
「よし、起きよう」
着替えもせぬまま眠ったせいで服がしわくちゃだ。淡い色合いなせいでシワがやたらと目立つ。この辺の仕様が現実的なのは本当に厄介だ。ゲームの企画を元に創った世界だというのなら、服のシワも出来ないようにしてくれていれば楽なのにな。
来たばかりの時は、クラフト系も出来る王道的冒険RPGとかいうジャンルの世界なのだろうなと思ったのに、蓋を開けてみれば『BL系恋愛シミュレーションゲーム世界』なのだと言われた。 って事はだ、魔王退治なんかあくまでも帰る為だけのオマケイベントってやつで、道中の過程こそがこの旅の主軸という事になるのか?もしそうなのだとすると、まだ会った事も無い『魔王』という存在を哀れに思ってしまう。……確定で殺す相手を哀れに思うとか、俺も甘くなったものだ。
ベッドから降りて立ち上がった時、ベッドが軋み、微かな音が鳴った。するとその音で目が覚めたのか、リアンが体を起こし、眠そうな顔をしたまま俺の方へ顔を向けてきた。
「……おはよう、ございます、焔様」
寝ぼけた声ではあるが、敬語なのでこの間みたいな爆走状態になる気配は無い。そのおかげで俺は、ほっとしながら「あぁ、おはよう」と返事をした。
ふぁぁと欠伸をして、立てた膝にリアンが突っ伏す。 まだかなり眠いのだろう。時間も早いのだから眠っていればいいのに。ソフィアとの待ち合わせまで、まだまだ余裕があるのだから。
(——それにしても……俺の下着はどこだ?)
昨夜リアンに脱がされた所までは覚えているのだが、その後どうなったのかわからない。自分の眠っていた掛け布団を捲って中を覗いて見たが、やっぱり無かった。
魔導士っぽい衣装の中には今何も穿いてはおらず、そのせいで股間がスースーする。寝衣の時ですら下着を着ない事などないので心許ない。動くたびに布が魔羅に当たって擦れ、ちょっと変な感じがした。
「何かお探しで?」
膝に項垂れたまま、リアンが俺に向かって訊いてくる。
「ふんど……違うな。下着がな、見当たらないんだ」
「下着ですか?あぁ、ソレならここにありますよ」
ゴソゴソと布団の中からリアンが一枚の下着を取り出す。色、サイズともに見覚えがあり、明らかに俺の物だった。
「……何故、お前の布団の中に俺の下着があるんだ?」
「簡単な事ですよ。脱がせた後、眠れぬ夜の慰めにと、握ったまま床についたからに決まっているじゃないですか」
「いや、その思考の流れは全くわからん」
何故じゃ、なんでそうなった。
「……お断りされたのですからね、このくらいいいじゃないですか」
口元を軽く尖らせ、ムスッとした顔で言われても、人様の下着を手に握ったままなせいでお笑いでしかない。
「でもきっちり眠ったのだから、いくらかは何かしらが回復したんじゃないか?」
「んー……体力は回復しましたが、魔力は無理です」と言って、リアンが首を横に振る。
俺の方はソフィアに訊いてステータスを確認せずとも全快したような気がするのだが、人型の召喚魔はなんと不便な生き物なのだろうか。主に召喚士の唾液か精液で回復する仕様になんぞ、一体誰が決めたんだ。
「今日は特に魔力を使う予定が無いんだったら、もういっその事そのままでも——」
「いつ魔法を使うかなんてわからないんですから、毎回全回復させないとダメですよ」
言葉を遮り、俺の下着を握りしめながらキリッとした顔でリアンが言う。
朝一番から凛々しい顔を見せ付けずに、早くそれを返してくれ。それが無理ならせめて新しい下着を荷物の中から出させてくれないだろうか。
「……しないと、駄目なのか?」
「ダメですね」
断言されたせいで、むぐっと喉の奥で変な音が鳴った。
(また口淫をされるのか、それとも手でだろうか?)
ちょっと考えるだけで耳に熱が集まるのを感じる。表情が感情に追いつかぬままベッドに腰掛けると、リアンが膝にかけていた掛け布団をよけて床に降り、俺の足元にしゃがみ込んだ。
リアンは寝衣に着替えてから寝ていたのか。ラフな格好をしていて、もう既に興奮気味なのか朝立ちなのか……下腹部が盛り上がっているのが見て取れてしまう。だが俺は、そんな事とよりも自分の下着を返して欲しい気持ちの方が強くてソレどころではない。
「いい……ですよね?」
先程の態度とは打って変わって、訊く声がちょっと弱々しい。俺の機嫌を伺っているといった感じだ。
「嫌だと言う権利は、俺には無いのだろう?」
「無いです」
返答が、先程から一転して強気になっている。きっとこの辺がリアンにとっては譲れない点なのだろう。
「……だろうなぁ」
目隠しをぐるっと巻いている目元を手で覆い、自らの視界を完全に遮る。
寝起きでまだちょっと虚な瞳で見上げられては、否応なしに心がざわめく。軽く尖った耳の上から生えているはずの大きな角は隠し、今は狐耳や尻尾を生やした姿なせいか、いつも以上に胸の奥がギュッと苦しくなった。
手をそっと避けて、チラリとリアンの顔を見る。 こう改めると……リアンはどことなくオウガノミコトに似ている気がした。 肌は褐色で、尻尾は一本しか無いし毛色も黒いのに、不思議とそう思ってしまう。
(奴と同じく中性的な顔立ちのせいか?まさか俺は、この類の顔に滅法弱いのだろうか。 それとも——)
と思った瞬間、真っ赤な血に染まる狐耳の男の死顔が一瞬だけ目の前に現れ、シャボン玉のようにパンッと弾けて消えた。
(な、何なんだ一体! この世界へ飛ばされたから、何度も何度も何度も——)
頭に浮かんでは即消えていく記憶の断片を、軽く頭を振って必死に彼方へと追い払う。
明らかに気が散っている俺の態度が気に入らなかったのか、リアンの温かな手が服の中に入ってきた。大きな手で肌を包み、いやらしい意図を持って脚を撫でてくる。奴の手が動くたびに布が肌に擦れ、下着を脱がされたままなせいで魔羅に直接手が当たった。
「そ、そんなふうに触れるな」
「でも、触れないと勃たないでしょう?」
「まぁ……そうなんだが」
眠そうにしていたリアンの瞳が熱っぽいものへと変わっている。 もう一分すら我慢出来ない……いや、昨夜からずっと消化不良を起こしていた性欲を今すぐにでもぶちまけてしまいたいと言った雰囲気だ。
「……あぁでも、少し勃ち始めてくれていますね。嬉しいです」
「変態だな、男の……魔羅なんぞに興奮するとか」
「そりゃあしますよ。好きな人の一番いやらしい姿を前にして、興奮しない方が失礼ってものじゃないですか?」
「いや、わからん」と首をブンブン横に振る。すると、そんな俺を見上げながら、リアンがちょっと嬉しそうに微笑んだ。
「焔様はとっても初心ですよね。嬉しいです」
「そう、なのか?……自分じゃわからんな」
服の下半分が完全に捲れ上がり、細い脚がすっかり露わになってしまった。両脚を開脚させられているせいで興奮して勃ち上がっている魔羅がやたらと目立つ。先走りで亀頭が濡れ、滴り落ちる汁のせいで今にも服が汚れてしまいそうだ。
「服、ご自分で押さえていて下さいね。このままでは汚れてしまいますから」
無言のまま頷き、素直に従う。 より一層服がシワだらけになってしまいそうだったが、もうそんな事まで構っていられない程に体中が熱っぽい。
ヒクヒクと魔羅がリアンの目の前で物欲しそうに動いている。奴が与えてくれる快楽を骨の髄まで覚えているソレは、自分の理性からはすっかり切り離された存在になっているみたいだった。
「……あぁ、こんなに硬くして。そんなに私に愛されたいのですか?」
俺の魔羅をリアンが褐色の綺麗な手でそっと掴み、ゆるゆると上下に擦る。その間ずっと俺の目の当たりを見詰められたままだったせいで、視線が合うような錯覚のせいでゾクリと背中が震えた。
淫猥な顔をし、真っ赤な舌先で魔羅を愛おしげに舐めてくる。手で擦り続けられるせいで、早漏じゃない俺ですらもうかなりヤバイ状態まで追い込まれてしまう。
「んな……美味しそうに舐めるとか、淫乱だな」
ははっと軽く笑いながら嫌味っぽくこぼす。こうやって気を散らさねば、すぐにでもイッてしまいそうだ。
「実際美味しいですからね。少し苦くって……鼻腔を擽るいやらしい匂いもして、いつまででも咥えていたいです」
はぁはぁと乱れたリアンの呼吸までもが俺を追い立てる。発言も発言だしで、完全に俺を仕留める気満々だ。
「そんなに、早く欲しいのか?」
このまま即座に出してしまえばこの卑猥な行為が終わるだろうに、惜しく思ってしまうのはコイツの顔のせいだな。リアンの綺麗な顔立ちが淫靡に歪む刹那が恋しくって堪らず、少しでも引き伸ばしたいと思ってしまう。
「……精液が欲しいのは事実ですが……ソレよりも、私は——」
先走りの蜜で濡れた指先が蟻の門渡りを撫で、普段は双丘に隠れてている蕾にまで降りてきた。固く閉じたそこをゆるゆると撫でられ、腕が体を支えていられない。
「や、やめっ……そこには触るなっ」
拒否を伝える声が震えて、小さくなる。 いつもならもっとしっかり態度で示しながら拒絶するのに、今回は奴の姿のせいか自分の体がいうことをきかず、脚を閉じる事すら出来ない。まるでこうされるのが当然みたいに蕾がヒクつき、リアンの指を招き入れようとすらしているみたいだ。
「……そうなんですか?でも、欲しそうにしていますけどねぇ、ココは」
俺の体の変化はリアンにまでバレバレだったみたいで、蕾をツンッとつつかれてしまう。そんな些細な刺激ですらももう快楽にしか繋がらず、嬌声に近い甲高い声をあげ、上半身がベッドに倒れてしまった。
呼吸が整わず、はぁはぁと肩で息を繰り返す。これ以上の刺激には耐えられず、目元の上に両腕を置き、せめてもとリアンの顔を見ないように努めた。
駄目だ、やめろ、この先は——
本心から愛していない相手なんぞに、最後まで抱かれてたまるか!
元の世界へ一緒に戻って、それでもリアンの気持ちが今と変わらないなら……奴をこの身に受け入れる覚悟も出来るかもしれないが、今のままでなんか絶対に許してなるものか。ゲームのシナリオに強制された感情のまま愛し合い、元の世界へ戻った時に『なんで私はこんな奴を?人間でも無いのに……』とでも言われたら、リアンをその場で迷わず切り裂いて殺し、血肉を全て食らってしまいそうだ。—— そうは思うのに、無常にもリアンのぬるつく指先が遠慮無しに蕾を押し開き、つぷんっと中へ入ってきた。人間の様に排泄行為に使われていないソコは難なく奴の指を受け入れ、少し指が動くだけで腰が跳ねてしまう。
「んあっ!や、やめ、無理だ、から、抜け!このクソ餓鬼が!」
力の入らぬ体を無理に動かし、頑張って腕を伸ばしてリアンの頭を押す。だけど興奮に染まるリアンには全く止める気配など無く、逆に指を深く入れて前立腺のある辺りをとんっと叩かれてしまった。
「ぁあっ!あぁ……っ」
体が反れて腰が浮く。今は何も刺激されてもいないのに、魔羅はまた快楽で弾ける寸前にまで達し、ギンギンに膨れ上がっていた。
「……何だ、既に開発済みかよ」
チッと盛大に舌打ちする音が聞こえた気がする。 声は酷く不機嫌で、顔を向けずとも不穏な空気がリアンから立ち込めている事がわかった。
「アンタって……散々ここまで『最後までは嫌だ』と抵抗してきたクセに、何だかんだで本当にイヤラシイですよねぇ。こうやって無理に犯されるのが実は好きなんじゃないですか?ナカを攻められて感じちゃうとか、んなふうにグダグダに蕩けて……まるでメス穴じゃないか」
イライラしているせいか素が出ている。が、リアン本人は気が付いていないみたいだ。
「随分、と……酷い、言いよう、だな……」
不快感を丸出しに言われた言葉が胸を抉る。まるで売女扱いされているみたいで、こっちまで顰めっ面になってしまった。
だけど何でだ? そんな箇所を誰かに触れられるのは初めてのはずなのに、まるで何度もナカで感じ慣れているみたいに体が反応してしまうなんて、自分でも不思議でならない。この異世界がBL恋愛ゲームだからだと納得するべきなのか?それとも、ただ思い出せないだけで、何度も誰かに触れられた経験でもあるのだろうか。
——脳内で血塗れの男の顔が浮かんでは、またすぐに消える。
幾度となく繰り返される記憶のフラッシュバックを前にして、流石に俺は、何か大切な事を忘れていると確信を抱いた。だがその事に気を回す間もなく、ぐりっとナカを指で弄られ、また腰がベッドの上で激しく跳ねてしまった。どうやらリアンは、俺に他の事を考える隙など与えてくれるつもりは全く無いみたいだ。
「ココだけでイけそうなくらいの反応ですね、あはははっ!」
指先を無遠慮に動かして楽しそうに笑うくせに、リアンの表情はとても切なそうだ。
でも駄目だ、絶対に。このままこの行為を許したら、絶対に俺は享楽に流され易い自分をも殺してしまいたくなってしまうだろう。いくら俺が段々とリアンに対して好意的な感情を積み重ねていたとしても、これだけは絶対に譲れないラインだった。
「やめ……も、ホントに勘弁して、くれっ」
もがくみたいに体を無理矢理動かし、少しでも奴から離れようとベッドのシーツを掴む。懇願するみたいな俺の声に対し、リアンの表情が益々悲しそうに歪んでしまった。
「……そんなに、大事なんですね」
何の話だ?大事?……あぁ、まぁ確かに譲れない点を意地でも死守したいという気持ちは大事だが、何か違う意図をその言葉には感じる。
「……わかり、ました」と言ってリアンが俺の陰部から指を引き抜き、その動きのせいで「んあぁぁっ!」と大きな声があがる。次の瞬間にはもう怒張した陰茎がとうとう限界を迎え、大量の白濁液を自分の脚やリアンの顔へと向けて吐き出してしまった。
「んくっ、あぁっ……んんっ!」
人様にはかけてしまわない様にと咄嗟に手を伸ばしてはみたが当然間に合わず、表情が羞恥に染まる。だがリアンの方は恍惚に満ちた顔をしていて、長い舌で唇にまでついてしまった俺の精液をペロリと舐め取った。
指で頰に飛んだモノを拭い、それも綺麗に舐めて美味しそうな顔をしながら飲み込んでいく。その度に感嘆の息を吐かれてしまい、恥ずかしくてならない。
「イッていいなんて言っていないのに。悪い子ですねぇ、焔様は」
スッと細めた瞳が権力者の様な色を帯びて、自分がまるで従者にでもなったみたいな気分になってしまう。悪い事なんか何もしていない。むしろ魔力回復に貢献してやったんだからありがたく思えと叫びたいところなのに、口を開いて出た言葉は「す、すまない。何でもするから……」だったんだから、自分でも驚きだ。
「何でも?——じゃあ、ココに私のモノを挿入させて下さい」
クチュンッと音をたて、指先がまた蕾のナカに少し沈む。
「それ以外で頼むっ」
肩で呼吸をしないとならないくらいに体がクタクタだが、何とかはっきりと伝える事が出来た。
「……そんなに、禊を立てたいのかよ」
ボソッと呟き、リアンが俯く。
「何のはな——」と疑問を口にしようとしたが、急にリアンが俺の服の胸倉を引っ張り、言葉を失ってしまった。
無理矢理ベッドに座らされ、その前にリアンが立ち膝をついて座る。そしておもむろに寝衣のズボンと下着を同時に下げ、目の前に立派に反り返った陰茎部を晒してきた。
「最後までしない為ならば、何でもするんですよね?じゃあ、コレを咥えて、アンタの口をオナホ代わりにさせて下さいよ。ご・主・人・様」
見下した様な瞳をしつつ、そんな言葉を吐いたリアンの微笑があまりにも綺麗で、俺は求められた内容の非情さを認識する事が出来なかったのだった。