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海洋高校−物語は波のように−

18 - 第14話「共鳴しないって、そんなに悪いこと?」

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2025年08月10日

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第14話「共鳴しないって、そんなに悪いこと?」
登場人物:ツユ=アマネ(澄属性・2年・無共感型)




 ツユ=アマネは、どこにいても静かだ。


 澄属性。2年生。制服はきっちりと着ているが、目元は伏せがちで、感情が読み取りにくい。

 髪は乾いた銀砂色で、端正だが地味な顔立ち。まるで水面の波が最初から立たない湖のようだった。




 ツユは、“共鳴できない”体質として校内で知られている。

 共鳴板に手を置いても、塩素(ソルソ)はただ静かに澄んでいるだけ。

 波域も仮所属扱い、深層試験の免除対象。




 「共鳴できないって、欠陥じゃん?」

 そう言われたのは、食堂だった。


 言ったのは波属性の1年・リョウ=ハナミチ。

 料理部に入ったばかりの彼は、共鳴が強すぎてしばしば食材を暴れさせてしまう。


 「俺なんか、気をつけてないと皿が割れるくらい“波”あるのに、

  共鳴ゼロって、まじでソルソ向いてないんじゃね?」




 ツユは、何も言わなかった。

 ただ、海藻ごはんをひと口だけ食べて立ち去った。




 帰り道。

 ひとりで向かったのは、水草水槽がある廊下の奥。

 照明の落ちた、しんとした空間。




 そこにいたのは、**シオ=コショー先生(潮属性・非常勤)**だった。


 「また来てたの、アマネさん」

 「……うるさくないから、ここ」


 「そうだね。水槽は“波”を持たない生きものたちの海。

  ここに来ると、共鳴ってなんなのかなって思うよね」




 ツユは水槽を見つめながら言った。


 「……共鳴できないって、ダメなことですか」




 シオ先生はしばらく黙ってから、ポケットの中から水槽記録カードを見せた。


 「これ、見てごらん」

 「……“水質安定・変化なし”、ですね」

 「この“なし”って、悪いことだと思う?」


 ツユはゆっくり首を振った。




 「誰かが揺れてるとき、“変わらない”って、実はすごく大事なんだ。

  澄んでるってことは、飲み込めるってこと。

  自分の波がないことで、他人の波を理解できるんだよ」




 その後、ツユは**共鳴できないなりの“支援型変質”**を研究するようになった。

 彼女が選んだのは、傾聴と水質管理。


 誰よりも静かで、誰よりも“他人の波”を受け止める澄属性として。



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