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海洋高校−物語は波のように−

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海洋高校−物語は波のように−

19 - 第15話「揺れすぎたから、息ができなかった」

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2025年08月11日

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第15話「揺れすぎたから、息ができなかった」
登場人物:ハヤリ=アナグリフ(深層障害型/海底棲・1年・圧属性)




 ハヤリ=アナグリフは、海底から来た生徒。

 1年生、圧属性。

 体の表面に透明な鱗が薄く残り、髪は深灰色。地肌の近くに浮かぶ細い血管の色が、水面からは見えないほど繊細だった。


 彼の呼吸は、常に「深層用リズム」でなければならない。

 急な温度差、急な共鳴、急な“感情の波”は、彼の身体と心を痛めつける。




 最近、朝礼がつらい。


 全校生徒の感情が重なると、塩素(ソルソ)空間が揺れる。

 ハヤリの中に、うねる音がひとつ、またひとつ侵入する。

 「共鳴」していないはずなのに、“息が詰まる”。




 その日、朝のスピーチで、誰かが声を上げた瞬間──

 ハヤリの胸の奥で“音の泡”がはじけた。


 【バシュッ】


 周囲に見えない水音が、彼の内側で割れた。


 息が、できない。

 立っていられない。




 気づいたときには、保健室だった。




 「ねえ、目は見えてる?」

 保健室の隅、冷たいソルソ水が流れるパイプの前に立っていたのは、

 澄属性の3年生・メイ=ウタロウ。


 小柄で線の細い体。水色の瞳が、ぬるく優しく揺れている。




 「揺れたんでしょ?」

 「……はい」

 「深層生の“圧”、急に抜けると呼吸パターン壊れるから、焦らなくていいよ」




 メイは、ハヤリの手に、**“重り入りの共鳴カード”**を渡した。

 それは波の収束を一時的に助けるアイテムで、圧属性の生徒にとっての“人工重力”のようなものだった。




 「“揺れすぎる”って、自分が悪いんじゃなくて、環境が軽すぎるってこと。

  おまえが悪いんじゃない。

  深いとこに生まれたってだけ。おまえの“揺れ”は、本当はうつくしい波形なんだ」




 ハヤリは、小さくうなずいた。

 息をするように、カードを胸に当てて、海のリズムを思い出す。


 潮の底。塩素の深層。

 そこでは「揺れること」が、生きるということだった。



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