テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
20話 ふっくら、体調を崩す
昼前なのに
ふっくらは地面に沈んでいた
丸い体
短い脚
腹がふよっと広がり
目は三分の一しか開いていない
琶がそばに立つ
大きな体
長い首
重なった鱗
畳まれた翼は動かず
影だけが
ふっくらをしっかり包んでいる
ふっくらは
力なくつぶやく
「……きょうは……ムリ……」
声がひどく弱い
琶は
ふっくらの横に目線を合わせるように
少し首を下げた
ふっくらは
その視線に耐えられず
ごろんと体を横に倒す
「これは重症……
すっごい重症……
たぶん、あの……
古い呪いとかそういう……」
ふっくらの言葉は
腹から漏れていく
琶「(いや仮病感すごい)」
琶は動かない
そのまま
ふっくらの体をしばらく観察するように
じっと見つづける
鱗が
微かにきらりと光る
ふっくらは
見られすぎて落ち着かなくなる
「み、見るだけじゃ治らないよ……?」
そもそも具合悪いのか?
そのあとふっくらは
さらに寝る
そして
もっと寝る
丸い体が
だんだん地面と同化しはじめる
ふっくら
「これは……深刻……」
声が元気だ
琶は
静かに爪で地面をとん、と叩く
それだけで
空気がすこし震えた
ふっくらは
ぱちりと目を開ける
「……あれ?
なんか……治った……気がする……」
読者
(数時間寝ただけだよね?)
ふっくらは
勢いよく起き上がり
丸い体をぷるんと振るわせる
短い脚が
ぴょこんと立ち上がる
琶が
ほんの少しだけ
目を細めた
その“細め方”が
何かを見抜いているようで
ふっくらは
思わず視線をそらす
「えっと……
あの……
治ったっていうか……
その……偶然……?」
琶「(完全に仮病じゃんか)」
琶は
何も言わない
ただ
影だけがふっくらの足元を包む
ふっくらは
ごまかすように笑う
「ほらほら!
行こ行こ!
今日は元気いっぱいだし!」
琶「(さっきまで瀕死アピールしてたよな?)」
ふっくらは歩き出すが
丸い体の後ろ姿が
どこか申し訳なさそうに揺れていた
日常は続く
ふっくらの体調は戻り
戻った理由だけが
ふわっと闇に溶けていった
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!