「そうだ」
「反抗してみよう。」
始まりはたった一つの好奇心…出来心だった。
子供を親のトロフィーとしか思ってないその様にひたすら吐き気がした。自らがしたい事もさせず勉強ばかりさせる、勿論勉学というのはとても大事だ。だが子供のしたい事を無視して無理矢理させるのはどうかと僕は思う。
妹はひたすら抱え込むタイプだった、それこそ自分が分からなくなってしまうぐらいには。 親の言いなりになって優等生を演じる、それは果たして本当にいい事なんだろうか、自分のしたい事の一つや二つ出来ないのはあんまりじゃないかと僕は思う。
僕には一生出来ないと身を持って痛感する。
趣味の為なら一人でいい、家を爆破させたって構わない。そんな僕を彼女は一歩引いて冷めた視線でこちらを見ていた。
「…なんでお母さん達の言う事を聞かないの…?」
とわざわざ質問をしてくるくらいには僕の行動は彼女にとって理解が出来なかったのだろう。 その問いに僕は
「簡単な事だよ。他人に縛られて好きな事が出来ないくらいならこうやって歯向かう方がマシだって思ったんだ。」
こう答えた。今の彼女には何をしても心には響かない、何もかも無関心なのだ。だからこそこうやってありのままを話せる。
「…あっそ」
少し考えた素振りを見せて素っ気ない返事を寄越した。
「言う事を聞いておけば家から追い出されてガレージに閉じ込められる事もあんな高校に転校する事も無かったのにね、確か今はよくわからない人達と演劇をしてるんでしょ?勉強は出来るのに頭は悪いんだね、可哀想。」
ぴしゃり、どこかに雷が落ちる。
「…君は本当に人の神経を逆撫でるのが上手だね。それと僕はあの場所が気に入ってるんだ。例え彼処に居たから将来が君たちの言う“残念な事”になってしまっても僕は絶対に後悔はしない、もう覚悟はしてるんだ。第三者の君が横から口を挟まないでくれないかい?」
「なら第三者の貴方が勝手に私の部屋に入ってこないでよ。汚れる。」
「おっとそれは見逃してほしいな。生憎そこまで気にする余裕がなかったんだ。っと…?」
階段から何者かのバタバタと登ってくる足跡が聞こえる。時計を見ると夕食時だ。きっとまふゆをご飯に呼びに来たのだろう。
「……そろそろお母さんが呼びに来るからガレージに帰ったら?」
「……そうだね、今日のところはそうさせてもらおう。」
安全に窓から飛び降りガレージに戻った。
「う〜ん…それにしても彼女を笑顔にするのは大分難しそうだね。」
流石にアレを僕は相手したくないな、ショーならいくらでもしてやるし出来るけど彼女に響くかどうかは全くもって別問題だ。本当に困ったな。いずれセカイ中を笑顔にする為にもまずは家族という一番身近な人物を笑顔にしないと…そう思ってたんだけどねぇ…どうやら想像していたより彼女の状態は酷いのか話すらろくに聞いてくれやしなかった。流石に僕としても悲しいよ。
「とりあえず今は今月のナイトショーについて考えようかな」
遊園地全体を使ってのショー。一か八か要素が強く出るが何かはしないとこのままワンダーステージは解体され昔からのアトラクションは新しいアトラクションに変わってしまう。
えむくんの為にもそれは避けないとね。
今夜は寝られなさそうだね。不思議と演出案が止まらない、司くん達に心配されないようにしないとな。
〔 25:00 〕
25時大人も眠れるこの時間。
『じゃあ今日も作業していこっか。』
『そうだね〜!そうそう、もうすぐMV終わりそうなんだよね!そっちの調整もどんな感じ?』
「別に…悪くはない」
最近は悪くはないとは思う。奏達と居ると不思議と心が安心…?する。多分…悪くない事なんだと思う。
『私も!今回の曲のイラストは特に問題ないかな〜』
『…まふゆ、今日は心に残る事、何かあった?』
「………別に、強いていえば夕食前に兄妹と話した。それだけ。」
『へぇ〜!そういえばまふゆ兄妹いるんだったっけ?どんな人なの〜?』
『瑞希、まふゆの事だからよくわかんない返答しか返されないわよ』
「…なんだか変な人。」
『へぇ、!!ねぇ他には他には?』
「どうしてそこまで興味を持つの…?」
『あ、えーとそれは、ほら、!奏の曲作りの役に立つかもしれないじゃん!』
「ふーん…なら話すよ。」
私は夕食前に話した会話を殆ど包み隠さず話した。奏の為になるなら。私が救われるなら、その為に。
『……なんか凄い人ね…』
『……う〜ん、ボクの昔馴染みにも似たような人が居るからちょっと相手にしたくないみたいな気持ちはわかるよ…うん、』
『へぇ…瑞希にもそんな人が知り合いに居るんだ…』
『世間って案外狭いしおんなじ人かもね』
『そうかもね〜』
『なにその曖昧な返事、』
『…ねえみんなちょっと聞いてほしいんだけど…』
数日後
ナイトショーは大成功だ。フェニックスワンダーランドの宣伝大使にもなってしまった、だが僕は無断でバイトをしている身だ、今回の事は大バズりしたのかテレビにも放映されている。
親にバレるのも時間の問題だ。
僕はセカイに今来ている、もし独り言を言っていたとしてもセカイなら安心して考え事が出来る。
「一度、面と向かって話すしかないのかな…。僕としては今は相手したくないんだけどなぁ…」
「あら…類くんじゃない…?どうしたの?こんな夜中にセカイに来るなんて」
ふと後から話しかけられた、眠れる子羊のルカさんだ、今日は寝ていないようだが。
「ルカさんこそどうしたんだい?今日は寝ていないようだけど」
「少し…眠れなくてね…辺りをうろつけば寝れるんじゃないかなって思ったのよ…」
「眠…れない…」
ルカさんが眠る時は誰かが幸せな時。そんなルカさんが眠れない、それが表す事、つまり誰かが幸せではないという事。誰が幸せじゃないなんて分かってる、分かりきってる。きっと僕の事だ。逃げ出すようにセカイに来てまでグダグダと親の事を考えている臆病者の僕。
「…あのね類くん、そんなに思い悩まなくてもいいと思うわ」
こちらをじっと見て少し考えてからルカさんはそう言った。
「類くんの親御さんなんて私会った事ないから好き勝手言えないけど…」
「きっと大丈夫よ」
座り込む僕に屈んで目線を合わせ、にこりと微笑み僕の頭を撫でた。
この人はどこまで分かってるんだろう、まるであなたは何も考えなくていい。私の言うとおりに動けば間違いないと言われているように錯覚する。勿論バーチャルシンガーという事もあるから想いの持ち主の事をよくわかっているとは思うが僕はあくまで想いが一致しただけ。なのにどうしてここまで…?
それに撫でられるなんて初めてだ、ぬいぐるみくん達に撫でてと言われ撫でるなんて事はしばしばだが人に撫でられる…とはなんて心地良い物なのだろう。
普通の人が親だったらこの感覚も幼い時にあったのだろうか?…いや考えないでおこう。
…
頭がふわふわしてくる、眠くなってきた。セカイでこのまま眠ってしまおうか?それもいいかもな。
「…あらぁ…類くん寝ちゃったわ」
「おやすみなさい、類くん。ふわぁ…なんだかつられて私まで少し眠たくなってきちゃった…」
「お…やすみ…」
…
「わっ!類くんとルカが一緒に寝てる〜!☆」
第一発見者はミクだった。オブジェに座り込み二人で寝ているところを発見した。
「こんな所で寝ると風邪引いちゃうよ〜」
「そうね、私毛布とか持ってくるわ」
そう言いメイコはサーカステントの方に走って取りに行った。
「それにしても随分幸せそうな顔だね!まるで安心みたいな…」
「ふふ…もう食べら…れない…わ…」
「凄くありがちな寝言だね…」
「いっ〜〜ぱいの美味しい物でも食べてるのかな〜?リンも食べたいなぁ〜!」
「も〜リンったら〜レンも食べた〜い!」
「みんな〜毛布…ではないけど持ってきたわよ」
そんなこんな雑談しているとメイコがサーカステントから帰ってきた。
「それ…カーテン?」
メイコが持ってきたのは千切れた舞台袖のカーテンだった、少し前にちょっとした演出の事故によって舞台袖のカーテンが巻き込まれビリっと破れてしまったのだ。幸い、怪我をしたぬいぐるみも人もいなかった。
「そうよ、生憎毛布が無くて仕方なくこれを持ってきたの。」
まあでもこれで風邪は引かないでしょ!と胸を張って鼻息を荒くして言った。
「それにしてもルカはともかく類くんがこんな所で寝るなんて珍しいね」
首を少し横に傾げクエスチョンマークを掲げた。
「疲れてたんじゃない〜?ほら、類くんよく無茶しちゃうから…」
「そうなのかな…?」
しばらく悩んでいるといつの間にかリンもメイコも少し遠くに居た、その先にはぬいぐるみ達が固まって何かあたふたしている。
「レーーーン!ぬいぐるみ達が呼んでるよ!早く行こーよ!」
「え?あっうん!今行くよ!」
続かないかもしれない
設定メモ
時系列ないとしょーまえカーネーション後
朝比奈類
性格は特に変わらない、が良くも悪くも原作より捻くれてるかもしれない。 ショーが大好きで、少し人との接し方がぶきっちょな頭の回る男の子。自分の好きな事は例え親が止めようとも辞めない、故にあの親とは不仲。 家には入れてくれずガレージで基本を過ごしている。名門校に元は通っていたが親からの嫌がらせと起こした問題のせいで神高へと編入した。幼なじみが居たが離れさせられた、が最近ネットで同一人物を発見しよく夜に通話していたり、同校というのもあり最近はもっと仲良くなってたりする。
フェニランに始めてきた際はまふゆと一緒に迷子になってるしなんなら誑かした張本人、親からはまふゆとあんまり仲良くしないで(意訳)と言われた。
「…予定が狂う。やめてくれないかな、それ」
「いやはや申し訳ないね、僕としても唯一の趣味を親のトロフィーになる為に捨てるのは避けたいからねぇ」
「理由になってないよ、あともう貴方と関わらないでってお母さんが」
「お望み通りに、今の君を相手したくないしね。」
「なにそれ、私がラスボスって事?類って頭は無駄に回るのに時々馬鹿だね。」
『まふゆ?まだ起きてるの?』
「…、!…今はそういう事でいいよ、それじゃあまたいつか会おう」
「…さよなら」
親を困らせる“悪い子”。
朝比奈まふゆ
類については無駄に頭が回る厄介な人、としか思ってない。どうしてお母さんの言う事を聞かないんだろう。双子というのもあるし優等生として仲良くしておきたいが生憎それを体が拒否するくらいにはまふゆにとって類はそれくらい厄介な人。彼と居るとボロが出るのであまり関わらないようにしている。このセカイも普通ににーごはあります。煽り代類でおなじみの人のせいで原作よりお母さん側にねじ曲がってるかも。
『ねえまふゆ、類と仲良くなるのは辞めて欲しいの。』
『あんな子と仲良くなったら素直で優しいまふゆはどんどん“悪い子”になっていって勉強が疎かにならないか心配なのよ。』
『勿論まふゆがそんな事する訳無いってお母さん自身もわかってるのよ。でもね、どうしても心配なの。』
『だから、お願い、姉弟にこんな事言うのもどうかなってお母さんも思うけど…』
『心配なの。』
『まふゆのことを一番に思ってるからこそのお願いよ。』
「お母さん…」
「うん、分かったよ。模試も近いしきちんと勉強しておかないといけないもんね」
『あぁ、よかった、やっぱりまふゆは悪い子なんかに誑かされない強い子ね。』
「ありがとうお母さん。それじゃあ模試の為に勉強してくるね。」
親の自慢の“いい子”
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